フジロック(その他ロックフェスティバル)用テントの選び方(2019年改訂)

フジロックフェスティバルでキャンプをするには、テントが必要です。テントや寝袋等は参加者が自ら用意し、持ち込み、設営することが基本です。(2016年ごろから、事前申し込み制で会場であらかじめ設営されてるテントを借りることが出来るようになっています)宿泊に関するあらゆる装備は、参加者が好きな物を使えます。サマーソニックでは近年、あらかじめ設営されたテントでキャンプできるようになっていますが、例外的です。(2018年の幕張はキャンプ自体がありませんでした)

アウトドア用品店に行くと、テントが何種類も並んでいます。3人以上用のテントを買う場合、数万円の出費になります。1人用でも質を重視すれば万円単位になります。何を基準にどう選べばいいのでしょう。

テントには、大きく分けてオートキャンプ用と登山用があります。ロックフェスティバルの場合、テントや寝袋など、荷物の持ち運びは(人力で背負って運ぶ登山に比べ)短距離で平坦であることが多いので、コンパクトさ、軽さを追求した登山用よりも居住性を重視したオートキャンプ用が適しています。メーカーで言うと、コールマンやスノーピーク、キャプテン・スタッグはオートキャンプ用、モンベル、ダンロップは登山用が多いとされています。

人数+アルファを選ぶ

次に大きさの決め方です。一緒に寝る人数に応じて1人用から5、6人用までサイズが分かれています。ここは注意が必要です。3人なら3人用を選んでしまうところですが、「○人用」とはテント内に荷物を置かない状態の人数です。

テントはもともと登山用として発達し、コンパクトな大きさで最大何人が寝られるかを重視してきました。したがって、荷物は存在しない前提で、極力人間の数だけを基準にしてきました。では、荷物はどこに置くのかというと、テントの外ということになりますが、雨ざらしでもいい荷物はほとんどないので実際にはテントの中に置く人がほとんどです。

登山の場合、一緒に寝泊まりするのは知人です。別のグループと同じ場所でテントを張るとしても、少人数です。荷物を無造作に置いても盗まれる心配はそれほどありません。しかし、ロックフェスティバルの場合、隣のテントの人は赤の他人です。信用するしないは別にして、荷物を外に置いておく人はいません。

通常は手荷物や着替えなどを室内に置くので、1、2人分多めのサイズを選ぶとちょうどいいでしょう。ただし、大きなテントでも大人4人、子ども2人の6人用が限度です。大きすぎると設営に時間がかかり、重量も大きくなります。むしろ、それだけ大きなテントを張れる場所、かつ平坦な場所を見つけるのがひと苦労で、フジロックフェスティバルだと坂を相当登らないと建てられなくなります。人数が多いならテントを複数用意し、4人用を2、3人で使い、近い場所に2、3張り建てる方が賢明です。

アウトドア専門店で扱っている大手メーカーのテントなら、耐水圧などの細かい数値を気にしなくてもいいでしょう。ただし、テントを固定する張り綱はきちんと張る方がいいでしょう。風雨をしのぐ性能は、綱を張った状態で最も発揮します。

フジロックフェスティバルのキャンプサイトでは、コールマン製のテントが多く、恐らく過半数を占めます。次いでスノーピーク、ダンロップなどです。なぜコールマンが多いかというと、取り扱っている店が多いので入手しやすく、ロックフェスティバル程度なら性能も過不足ないからです。一般の人がイメージするキャンプ、すなわち、カタログに載っている写真のような「晴天の山の中」では、十分な性能を持っています。

コールマンに比べてスノーピークやダンロップ、小川テントが少ないのは、扱う店が少ないこと、コールマンより若干高価なこと、居住性が(コールマンに比べて)感じにくいからです。

テントの居住性と耐久性

フジロックフェスティバルのキャンプをやってみて、結構重要になってくるのが居住性と耐久性です。

居住性とは、テント自体の高さ、すなわちテントの中で立って着替えができるかどうか、移動が楽かどうかです。当然、高い方が着替えも移動もしやすいのですが、それは、風に弱いということでもあります。風をまともに受ける面が大きくなるからです。スノーピークやダンロップは、強い風に耐えられるよう、テントの高さをやや抑えています。

通常、テントはペグによって地面に固定されているので、風でテントが飛ばされるということはありません。しかし、ペグで固定している分、風をまともに受けると、テントのポールが曲がります。標高1000メートルの山中(フジロックフェスティバルの会場=新潟県湯沢町の苗場スキー場)では、ポールが曲がるほどの強風は珍しくなく、2005年はそうした日がありました。ポールが曲がると元に戻すことは簡単ではありませんが、テントが使えなくなるということはありません。程度によっては翌年以降も使い続けることは可能です。風対策で高さを抑えているようなテントは、強度の高い材質のポールを使っているので曲がりにくくなっています。

家族で行くキャンプなら、風が強そうな日にはキャンプそのものを中止することができますが、フジロックフェスティバルの場合、日程変更は不可能なので、相当の風でも決行されます。実際、風の強いときに大きく揺れるテントの中にいるのは不安で、寝られない人もたくさんいるでしょう。ただ、ポールの破損やテントの揺れは、体験してみないと分からない面があります。アウトドア用品店によると、最初にコールマンを買った人の何割かが、数年後にスノーピークに移行するといいます。

長く使い続ける(将来フジロックフェスティバルに参加し続ける)つもりならば、最初から質のいいテントを選ぶことを勧めます。学生の方は、就職して資金面に余裕が出てきたときに買い換えるといいでしょう。

設営の練習をして、雨が降る前に終わらせよう

テントを買ったら、一度設営してみることをすすめます。慣れた人なら5分で張れますが、初めてだとマニュアルを見ながらでも数十分かかります。設営する時間が晴れているとは限りません。雨の中で何十分もかかってテントを設営するのはそれだけで大きく疲れます。女性は複数で設営することを勧めます。事前に経験しておくと要領が分かり、現地でくつろげる時間も長くなります。宿泊してみれば夜の冷え込みや朝の蒸し暑さ、傾斜がある場所の居心地の悪さなどが体感できます。