フジロックで3日間テント宿泊をしようとすると、現地に持ち運ぶ荷物がかなり多くなります。3人以上で行く場合は手分けして持っていけますが、おひとりさま、またはおふたりさまの場合、持って行ける荷物の量には限りがあります。何を持っていくのか、持っていくとすればどんな物を選ぶのかについて考察してみます。
フジロックに持っていく荷物を一覧化したサイトは多数ありますが、それに従って細かい物まで揃える必要はありません。フジロックは野宿を禁止しているので、キャンプサイトで寝るための道具、具体的にはテント一式と寝袋と着替えと雨具等を持っていけば何とか過ごせます。何かを忘れても、キャンプサイトにあるキャンプよろず相談所で相談したり、駐車場の売店で買って間に合わせたりすることもできます。
ただ、初参加のときには、初めて故に不安がつきまといます。キャンプ自体が多少の不便に耐えうる人向けの宿泊手段なので、快適に、安心して過ごしたいならホテル宿泊をした方がいいでしょう。
フジロックに初めて参加すると、大抵の人はフジロックそのものの楽しさがとても大きくなり、キャンプでの不便の印象はかなり小さくなります。しかし、不便や不快が少ないにこしたことはなく、できれば不便さを自分の持ち物で解決できるのが理想でしょう。
自分で持っていく荷物の選択、購入の基準について、1回目の参加前と、2回目以降に分けて考えてみましょう。
直近のフジロックに初めて参加するため、キャンプに必要なものを買いたいけれども、来年以降は参加するかどうか分からない。アウトドア用品店でたくさんの商品を目の前にして、1回限りで間に合う普及品を買うか、数年使えるような高性能品を買うか。初めて参加する人は大抵迷います。
最近のアウトドア用品店はフジロックを目的にキャンプ用品を揃える人がたくさんいることを知っています。近年はフジロック以外でもキャンプができるフェスティバルが増えています。アウトドア用品メーカーも新しい消費者層の出現を商機と捉えており、フェスティバルに積極的に出展しています。キャンプ初心者であっても、アウトドア用品店で「フジロックでキャンプをする」と言えば、店員が必要十分な装備を一式揃えてくれます。大都市のアウトドア専門店なら店員がフジロックやその他フェスティバル経験者というのも珍しくないので、自分で選ばずに店員に相談するのも一案です。
しかし、そんな店員がどこにでもいるわけではありませんし、地方にはアウトドア用品店自体があまりありません。その場合は、自分で感覚的に商品を選ぶか、ネットで判断することになります。
どの製品にも、一般的な利用には十分な性能を持つ普及品と、特殊な状況にも対応できるような高機能品があります。通常、高機能な製品は一般的な利用を十分にカバーします。だから高い製品を買っておけばよい、というアドバイスはよくありますが、その一言で済ませるのは不親切です。一般的な利用の範囲内に収まるかもしれないにも関わらず、高くて性能のよい製品を買うことについては、購入者がその金銭的高さに納得できる理由が必要です。
例えば、価格差が大きく、テント宿泊においてどうしても用意しなければならないものに、テントそのものがあります。フジロックのキャンプ泊に適したオートキャンプ向けテントでも、雨露をしのげる程度のものから、テント内で着替えができたり、テーブルで食事ができたり、雨風に強かったりするものまで様々です。チケット代、交通費がかかっている上に、テントやテント内マット、その他諸々にまで費用をかけたくないという気分は理解できます。しかし、テントに関しては、オートキャンプ用の平均的なテント、もしくはそれ以上のレベルのものを選んでおいた方がよい理由が存在します。それは防災用品として、地震時の避難用に使えることです。地震で自宅が一時的にでも居住できない状態になった場合、あるいは余震で危険な場合、建物を避けてテント泊することはかなり安全な過ごし方です。このとき、質の高いテントがあるということは大きな利点です。寝るためだけのスペースしかないテントや、風雨に弱いテントでは、避難生活が苦しくなります。体育館や公民館に避難したとしてもすぐにプライバシーが気になり始めます。今や国内のどこにいても地震は避けられません。高度な耐震マンションに住んでいる人は別の考え方をすればよいでしょうが、そうでない場合、自然災害時の自らの対応能力を考えてテントを選んでいけば、高額でも買う意味を見いだせます。ランタンやいすも同様に考えていけばよいでしょう。フジロックで使い終わったあと、防災用品としてひとまとめにしておけば、そのまま次のフジロックの準備ができてしまいます。
ここからは2回目参加以降の揃え方です。
フジロックに初めて参加してみて、来年以降も行くことになると感じたら、まず、必要と感じたもの、必要でないと感じたもの、今持っているもので十分なもの、品質が不十分で買い換えたいもの、をなんとなく分類していきます。若い男性の1人参加なら体力でカバーしてもかまいませんが、女性や家族がフル参加するなら体力や体調に関わるので、品質は吟味した方がいいかもしれません。
買い換える、あるいは新たに買いたいと思った物が出てきたら、1回くらい我慢できるものとできないもの等の優先順位をつけ、それに従って3、4年程度で揃え、それ以降は徐々にグレードアップして置き換えていきます。5年もたてばひととおりの物が揃うので、それ以降は買い換えたいと思ったものだけを交換していきます。ゴアテックスの靴や雨具でも品質が長期間維持されることを期待してはいけません。当然経年劣化し、メーカーも数年で買い換えることを前提として製造しています。当面必要な品質が保証されていれば、デザインで選んでも構いません。
防災用品の備蓄では、耐用年数や品質保持期限が迫っているものを毎年少しずつ新品に入れ替えていく方式をローリング・ストックと呼びますが、アウトドア用品も、それに近い方法で入れ替えていけばいいでしょう。気に入ったものはリピーターになればいいでしょうが、同一の形で何年も販売される商品は少数です。
毎年春になると、各メーカーから新製品が多数登場します。春休みからゴールデンウイークにかけて、旧製品の安売りがあります。夏のボーナス前になると、ロックフェスティバル参加者向けのアウトドア用品紹介冊子「フェスティバル・エコー」が無料で発行されます。
最近は防災対策で自治体がアウトドア用品を大量備蓄するようになっており、メーカーもその需要を見越して商品を開発しています。平時の快適性重視だったコールマンも、有事に対応した高額製品を新たに投入してきました。自治体の備蓄に採用されたことを売り文句している商品もあります。
1日に3万人から4万人が集まるフジロックでは、参加者からファッション性や快適性を切り離すことは不可能ですが、機能性や非常用との両立はあってもいいのではと考えます。