THE WHO

  • イギリスのロックバンド。4人編成。いわゆる「モッズ」の代表的バンド。
  • ロジャー・ダルトリー(ボーカル)、ピート・タウンゼンド(ギター)、ジョン・エントウィッスル(ベース、故人)、キース・ムーン(ドラム、故人)。
  • 標準的生き方から落後するほどではないが、体制批判に意識的である都市部の白人男性が好んだ。
  • イギリスではモッズのバンドが定期的に出ており、70年代後半はザ・ジャム(ポール・ウェラー)、90年代はブラーが有名。
  • 音楽的ルーツにアフリカ系ガールズグループ(ヴァンデラスなど)、ソウルがあるが、ローリング・ストーンズほどブルースに傾倒していない。
  • イギリスのロックバンドのライブ・パフォーマンスに与えた影響は大きく、マイク回しやギターの風車弾きはザ・フーが始めている。
  • 鏡付きスタジオを建設してライブ・パフォーマンスを試行錯誤、練習し、ザ・フーがライブに出ているときには他のバンドにスタジオを貸していたという。
  • 「トミー」はロックオペラの傑作とされている。「四重人格」も有名。
  • キース・ムーンの死亡によりバンド活動は事実上終わっている。

1
MY GENERATION

1965年。ザ・フーがデビューするころにはビートルズもローリング・ストーンズも人気バンドとなっていて、彼らと若者の精神的連帯感は薄れつつあった。「マイ・ジェネレーション」や「キッズ・アー・オールライト」といった曲は、アウトローになりきれない若者の共感を得た。ビートルズとローリング・ストーンズはどちらもロックであるが、どちらかと言えば親しみやすいビートルズと、どちらかと言えば不良のイメージがあるローリング・ストーンズの間を、ザ・フーが埋めた。スーツ姿でありながら(一見普通でありながら)、日常の行動はローリング・ストーンズ・ファンと変わらないというのがモッズの端的な特徴であり、イギリスのロックの一スタイルとして定着していく。「アイム・ア・マン」はボ・ディドリー、「アイ・ドント・マインド」「プリーズ・プリーズ・プリーズ」はジェイムズ・ブラウンのカバー。ボーナストラックに「アイ・キャント・エクスプレイン」収録。

2
A QUICK ONE

1966年。前作はデビュー盤らしい荒々しさがあった。このアルバムはまとまりがあり、アレンジもよい。「クイック・ワン」は9分を超え、ザ・フーによる最初のロック・オペラだという。マーサ&ヴァンデラスの「恋はヒートウェーブ」をカバー。ボーナストラックでジャン&ディーンの「バケット・T」、リージェンツ(ビーチ・ボーイズ)の「バーバラ・アン」をカバー。「マイ・ジェネレーション/希望と栄光の国」はエルガーの「威風堂々」を使用。「ハッピー・ジャック」収録。

3
THE WHO SELL OUT

1967年。オープニングの「アルメニアの空」以外はすべてメンバーの作曲。ほとんどの曲の間にラジオのジングルのような曲が入っており、アルバム全体が統一された体系の中にある。「恋のマジック・アイ」収録。「山の魔王の宮殿にて」収録。

MAGIC BUS

1968年。未発表曲集。

4
TOMMY

1969年。一般的に世界で最初のロックオペラとされている。最初から最後まで物語が一つにまとまっている。しかし、まじめに聞こうとすると、ある程度想像力が必要なので軽い気持ちでは聞けない。「ピンボールの魔術師」収録。「序曲」と「シー・ミー・フィール・ミー」のメロディーは随所に出てくる。

LIVE AT LEEDS

1970年。ライブ盤。ロック全体の中でも評価が高い。

5
THE WHO’S NEXT

1971年。シンセサイザーを本格的に導入。スティービー・ワンダーとともに、ARP(アープ)シンセサイザーを使う代表的なアーティストとなった。「ソング・イズ・オーバー」のピアノはニッキー・ホプキンス。「ババ・オライリー」「無法の世界」収録。ボーナストラックの曲はマウンテンのレスリー・ウェストやアル・クーパーが参加。

MEATY BEATY BIG AND BOUNCY

1971年。未発表曲集。

6
QUADROPHENIA

1973年。邦題「四重人格」。プログレッシブ・ロック全盛期の中で発売された。再び物語の解釈を迫られる内容。ピート・タウンセンドが全曲作曲。

7
ODDS AND SODS

1974年。未発表曲集。アンダー・マイ・サム」はローリング・ストーンズのカバー。「マリー・アンヌ」は初期のザ・バーズのような曲。

TOMMY ORIGINAL SOUNDTRACK

1975年。「トミー」の映画版のサウンドトラック。

8
THE WHO BY NUMBERS

1975年。アコースティック・ギターやウクレレが使われ、シンガーソングライター・ブームやウエストコースト・ロックなどに影響されたのかとさえ思わせる。ピアノはニッキー・ホプキンス。全体的に減衰音の楽器が多いので音がシンプルに聞こえ、それにともなってハードさよりもメロディーが強調される。

9
WHO ARE YOU

1978年。前作とは異なり、キーボードを大幅に導入した。「ギター・アンド・ペン」はピート・タウンセンドとアージェントのロッド・アージェントが2人でキーボードを弾いている。

THE KIDS ARE ALRIGHT

1978年。ドキュメンタリー映画のサウンドトラック。

QUADROPHENIA ORIGINAL SOUNDTRACK

1979年。映画のサウンドトラック。

10
FACE DANCES

1981年。ドラムのキース・ムーンが死亡し、元フェイセズのケニー・ジョーンズが加入。キーボードを適度に使い、ポップなロックになっている。「フーズ・ネクスト」に近いか。「ユー・ベター・ユー・ベット」はすばらしい。「デイリー・レコーズ」は久しぶりにビーチ・ボーイズ風のサウンド。

11
IT’S HARD

1982年。ザ・フーでなければできないサウンドが薄れつつある。キーボードは、わざわざその音を使っている、というのではなく、あくまでハーモニーの範囲内で使われ、ポリシーのようなものが感じられない。最後のスタジオ盤は前作でもよかった。「I've known no war」を、この曲だけ邦題をつけて「戦争は知らない」と訳したのはなかなかのセンス。

RARITIES 1966-1972 VOL.1

1983年。未発表曲集。

RARITIES 1966-1972 VOL.2

1983年。未発表曲集の続編。

 
WHO’S LAST

1984年。解散コンサートのライブ。代表曲のメドレー。「フェイス・ダンシズ」と「イッツ・ハード」からの曲はない。

 
THE SINGLES

1984年。シングル集。

WHO’S MISSING

1985年。未発表曲集。

TWO’S MISSING

1987年。未発表曲集の続編。

WHO’S BETTER WHO’S BEST

1988年。ベスト盤。

JOIN TOGETHER

1990年。ライブ盤。3枚組。89年の結成25周年ライブ。

30 YEARS OF MAXIMUM R&B

1994年。ボックスセット。

LIVE AT THE ISLE OF WIGHT FESTIVAL 1970

1996年。邦題「ワイト島ライブ1970」。1970年のワイト島フェスティバルのライブ。

BBC SESSIONS

2000年。1965年から67年に録音されたセッション。

THE ULTIMATE COLLECTION

2002年。ベスト盤。

LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL

2003年。3枚組ライブ盤。2枚は2000年、1枚は2002年の公演。

THEN AND NOW

2004年。ベスト盤。初来日公演に合わせて発売。

12
ENDLESSWIRE

2006年。スタジオ盤としては24年ぶり。19曲のうち、後半の10曲が「ワイヤー&グラス~ミニ・オペラ」となっている。ボーカルのロジャー・ダルトリーは音程が安定しないが、バックの演奏はかつてのザ・フーの面影を残している。特にピート・タウンゼンドのギターは変わっていない。ドラムはビートルズのリンギ・スターの息子であるザック・スターキー。このアルバムでは1曲しか演奏していない。それ以外の曲はピート・タウンゼンドとゲスト・ミュージシャンが演奏している。事実上ピート・タウンゼンドのソロ・アルバムで、たまたまボーカルがザ・フーのロジャー・ダルトリーという雰囲気だ。ギターだけの弾き語りから、キーボードやストリングスまで入ったロックまで多彩。やや刺激に欠ける。「マイク・ポストのテーマ」のマイク・ポストはアメリカの映画・テレビドラマ音楽の作曲家の名前だが、それらしき音楽は挿入されているかどうか不明。