1993年。US3はイギリスのDJ、ジェフ・ウィルキンソンとエンジニアのメル・シンプソンによるヒップホップ・グループ。ブルーノート・レーベルのジャズをサンプリングする。サンプリングの元の曲がブルーノートのジャズに限定されているだけで、曲の作り方は通常のヒップホップと同じだ。パーカッションやトランペット、サックス、ピアノなどを加え、ラップが乗る。オープニング曲の「カンタループ(フリップ・ファンタジア)」はハービー・ハンコックの「カンタロープ・アイランド」をサンプリングし、イントロにアート・ブレイキー・クインテットの「バードランドの夜」のMCを入れている。「SOOKY2(スーキー・スーキー)」はパーカッションが中心のような曲。
1996年。ジェフ・ウィルキンソン1人のプロジェクトとなり、主に知名度の低い曲をサンプリングしている。「コート・アップ・イン・ア・ストラッグル」はホレス・シルヴァーの「サヨナラ・ブルース」をサンプリングしており、この曲がアルバムの中で最も有名。ラップを担当するアーティストは前作と異なる。「ブロードウェイ&52nd」というタイトルはニューヨークのジャズのライブハウス、バードランドのことで、アルバムのイントロで再びMCが使われている。
1999年。「ハンド・オン・ザ・トーチ」の4曲と「ブロードウェイ&52nd」の2曲に加えて、リミックス4曲を収録した企画盤。
2001年。邦題「オーディナリー・デイ」。このアルバムからブルーノートを離れている。ラップではない女性ボーカルを多用し、明らかにサウンドの傾向を変えている。サンプリングしている曲はブルーノートではないようだ。ジャケットの内部が社会的告発になっており、これまでのジャズ・ヒップホップのイメージとは異なる。女性ボーカルはソウルともジャズ・ボーカルとも言える。「シュガー・シュガー」はメロトロン、ミニムーグを使用する。
2003年。自主制作に近い形での発売。前作に続き女性ボーカルを使う。サンプリングはなく、全曲がジェフ・ウィルキンソンらの作曲。女性ボーカルでサンプリングを使わないとなると、ヒップホップ・ソウルに近くなるが、サウンドがジャズ風なので他のグループとの区別は容易につく。日本のみで発売。
2005年。ラップの男性2人がボーカルをとり、DJによるスクラッチも入るようになった。「オーディナリー・デイ」「クエスチョンズ」とは異なり、ヒップホップに近づいた作風となっている。サンプリングは使わず、ジェフ・ウィルキンソンらが作曲している。演奏はジャズ風。「キック・ディス」はラテン音楽風。「ホワッツ・ゴーイン・オン・イン・ザ・ワールド・トゥデイ?」はマーヴィン・ゲイを思わせるタイトルだが、そのようなメロディーやサウンドはない。
2007年。女性ボーカルと男性のラップを併用。女性ボーカルは2声コーラスになることもあり、出てくるときは本格的に歌う。古風なシンセサイザーの音が増え、中古楽器の終着点としてのヒップホップ、ダンス音楽がこのアルバムでも聞ける。「ABC(リッスン・アップ)」は単語をアルファベット順に並べて歌詞を作っている。和歌で言う折り句のような技術。