1980年。ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4人編成。ギター中心のバンドというくらいにギターが活躍する。短いフレーズを刻み続けるリズムギターとソロを弾くリードギターが同時に聞こえる。バラードはなく、ギターの短いフレーズを推進力として曲が進む。ボーカルの音域は狭く、メロディーに大きな抑揚はない。むしろギターのソロの方が冗舌にメロディーを奏でる。
1981年。ボーカルが交代し、ギターが加入、5人編成。ギターはロブ・ウェイアーとジョン・サイクスとなった。2人ともリードギターとなっている。ボーカルは70年代のハードロックのように力強く歌い上げる。「ミラー」は初のバラード。「ストーリー・ソー・ファー」はポップなハードロックで、曲が多彩になっている。ボーカルの音域が広くなり、メロディーに幅が出たことが大きい。他の曲はギターで押す前作のような曲。このアルバムが代表作。
1981年。ボーカルの歌唱力を前面に出し、一般性のある音楽に近づいている。オープニング曲の「ドゥ・イット・グッド」はAC/DCのようなイントロで始まる。ややロックンロール風の曲が増えたか。「ランニング・アウト・オブ・タイム」「レイズド・オン・ロック」はデビュー以来のスピーディーな曲。
1982年。邦題「危険なパラダイス」。ギターのジョン・サイクスが抜け、ギター兼キーボードが加入。オープニング曲からキーボードが使われ、コーラスも入るヘアメタル風の曲になっている。「ロンリー・アット・ザ・トップ」「パリス・バイ・エアー」「危険なパラダイス」もヘアメタル風。ドラムはエレキドラムを使った80年代特有の乾いた音。82年ということを考えると、アメリカのヘアメタルの流行を先取りしたアルバムとも言えるが、前作までとのサウンドの差が大きく開きすぎた。「メイキング・トラックス」はゲイリー・グリッターの「ロックンロール・パート2」のような曲。「ラヴ・ポーションNo.9」はサーチャーズの「恋の特効薬」のカバー。このアルバムで解散。
1985年。ボーカルとドラムが残り、ギター2人とベースを加えて再結成。「危険なパラダイス」を踏襲したサウンド。キーボード奏者がゲストで2人参加し、ほとんどの曲にキーボードが使われる。「ウェイティング」のコーラスは爽快だ。アルバムタイトル曲はギターが左右から交互に聞こえるアップテンポの曲で、ヘビーメタルへの未練が残っている。ヘアメタルやグラムメタルに特有のロックンロールやバラードがないのも音楽上の主張のひとつであろうが、そこも中途半端さが残っている。
1986年。初期のスタジオ・ライブ。
1987年。ギター1人、ベースが抜け3人編成。キーボードは前作と同じ2人がゲスト参加している。ギターが1人になったことでキーボードのがメロディーを主導することが多くなった。前作にはなかったミドルテンポの曲があり、女性名をタイトルにした「マリア」はバラードと解釈していいだろう。「ドリーム・チケット」「オープンン・トゥ・セダクション」はギターを大幅に減らせばポップなロックとしてヒットの余地がある。総じてギターが速弾きを挿入しすぎだ。このアルバムで2度目の解散。
2001年。1981年のライブ。ジョン・デヴァリルとジョン・サイクスによる録音。
2001年。ライブ盤。正式メンバーはボーカルのジェス・コックスとギターのロブ・ウェイアーの2人だけ。
2001年。「バーニング・イン・ザ・シェイド」とは全員が異なるメンバーで再結成。ボーカル、ギター2人、ベース、ドラムの5人編成。ギターのロブ・ウェイアーは結成時のメンバーで、全曲を作曲している。ギターを大きく目立たせ、ロックンロール風の曲を主体にしている。「キープ・ザ・ロック・アライヴ」「ストリート・ファイター」「ジャンプ・イン・ユア・シューズ」はAC/DC風。
2002年。「ミスティカル」を録音したときのデモ。
2003年。ライブ盤。「恋の特効薬」はサーチャーズの、「狂い猫」はテッド・ニュージェントのカバー。
2004年。ボーカルが交代。10曲のうち4曲は過去の曲の再録音、6曲は新曲。
2008年。ボーカルが交代。ギターを中心とするハードロック、ヘビーメタルとなり、ロックンロール風の曲も交える。キーボードの利用はわずか。1980年代前半のアルバムを聴いている人からみれば、80年代後半よりは許容できるのかもしれないが、音楽的にはギターが2人いる同時代のヘビーメタルと変わらない。このアルバムは「ザ・レック・エイジ」以来の日本盤発売になっている。それは、ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタルを取り巻くアーティスト、聞き手、売り手が、多数の支持への欲求と商業的成功を切り離して考えることができないことを意味している。一般の洋楽ファンに比べてヘビーメタルのファンが商業性に過剰な忌避感を持ち、男性的権威に親和的であることは、ヘビーメタル、ハードロックのアーティスト側にさまざまな影響を与えている。