2010年。軽快なギターとリズムのロック。ドラムはゲスト参加。ドラムマシーンも使っている。メロディーを主導しているのはギターで、シンセサイザーはバンドサウンドを補助するような使われ方だ。10曲すべてが2、3分台になっており、変わった構成の曲をやろうという意識はなさそうだ。メロディーはどれも前向きで、内省的な曲がないのは若さゆえか。「ドゥ・ユー・ウォント・イット・オール」「アイ・キャン・トーク」などは覚えやすい。北アイルランドの出身であってもアイルランド風のメロディーは特に出てこないので、イギリスのロックバンドとする方が適切だろう。「シガレッツ・イン・ザ・シアター」「アンダーカヴァー・マーティン」「ホワット・ユー・ノウ」は前のめりのテンポ。
2011年。ライブ盤。8曲収録。8曲は「ツーリスト・ヒストリー」収録曲で、「コスチューム・パーティー」も日本盤ではボーナストラックに収録されている。最初の「イントロ」は歓声とメンバーのあいさつで、曲ではない。アルバムを1枚しか出していないのでアルバム収録曲を再現する程度にとどまっているが、演奏が安定しており、今後のライブでの編曲が期待できる。「グッド・イブニング」のあいさつで始まり「グッド・ナイト」のあいさつで終わるところも好感が持てる。日本のみの発売。
2012年。曲のアレンジに幅が出てきた。「ハンドシェイク」スリープ・アローン」「セトル」は、若者がさまざまな他者との接触を重ねていく上で経験する葛藤や後悔の感情を、余韻のあるメロディーに込めている。「ウェイク・アップ」「サムデイ」などは、前作に近いサウンドであっても、前進しようという力強さがある。ボンベイ・バイシクル・クラブ、あるいはロック化したフリート・フォクシーズを思わせる。
2013年。EP盤。8曲収録。このうち5曲はタイトル曲とそのリミックスとライブ。
2016年。ギターの不協和音が多くなり、ギターソロのような演奏も含まれる。ロックらしくなったというよりも、70、80年代ロックの廃れたスタイルを無邪気に取り入れたという印象だ。「バッド・デシジョンズ」「フィーバー」「サージェリー」「ジュ・ヴィアン・ドゥ・ラ」はファルセットを使い、曲も80年代風ファンクに近い。「ラベンダー」はエレクトロの雰囲気を残す。ドラムのいない2010年代のバンドが、80年代風のファンク、ロックに対して憧憬を抱きながら自らのサウンドに取り入れたアルバム。80年代風ファンク、ロックとはプリンスのことになるだろう。