TRIVIUM

トリヴィアムはアメリカのスラッシュメタル、メタルコアのバンド。4人編成。「アセンダンシー」がイギリスでヒットし、「ザ・クルセイド」で世界的にヒットするようになった。「ザ・シン・アンド・ザ・センテンス」から「イン・ザ・コート・オブ・ザ・ドラゴン」にかけて再び質の高いアルバムを出している。

1
EMBER TO INFERNO

2003年。ボーカル兼ギターを含む3人編成。アメリカ出身。ギターは2人いないと再現できないようなサウンドになっている。いわゆるメタルコアのようなサウンド。各楽器はハードコアのような高速演奏をせず、ヘビーメタルに近いサウンドをやっている。最初と最後の曲はイントロとエンディングとしての扱いで、実質は10曲。7分の曲もある。メタルコアの中ではメロディアス。メロディック・デスメタルのようなギターソロはない。

2
ASCENDANCY

2005年。ギターが加入、ベースが交代。ボーカルは通常の歌い方と絶叫型を使い分ける。ハードな部分では絶叫型になることが多い。ギターが2人になったので、ギター2本を前提とした演奏になっている。前作よりもハードで、一般的なヘビーメタルと変わらないようなギターソロも増えた。ギターの切れが鋭く、メロディーが多彩だ。すばらしい。

3
THE CRUSADE

2006年。メタリカに似た声のボーカルで、多少絶叫が入る。サウンドもメタルコア一辺倒ではなく一般的なヘビーメタルのスタイルであることが多い。「トゥ・ザ・ラッツ」などはメタルコアだが、それ以外の曲は回転の速いヘビーメタルで、90年代から活動するオーソドックスなヘビーメタルバンドよりはるかに曲がいい。「アンセム(ウィ・アー・ザ・ファイアー)」収録。

4
SHOGUN

2008年。邦題「将軍」。洋楽ロックではなく、ヘビーメタルのファンがメタリカに望むサウンドをトリヴィアムが一部再現していると言える。オープニング曲の「斬り捨て御免」はサビでも「斬り捨て御免」と歌う。通常のボーカルで歌われる部分では、ギターも流麗なメロディーを演奏しているが、デス声、咆哮型の声の部分では細かく刻むことが多い。声と演奏がリンクすることで、メロディアスな部分はよりメロディアスに、攻撃的な部分はより攻撃的に聞こえる。最後の「将軍」は11分超。ブックレットにある絵のひとつはゴヤの「我が子を食うサトゥルヌス」。「ヒー・フー・スポーンド・ザ・フューリーズ」の関連か。11曲で66分。

5
IN WAVES

2011年。ドラムが交代。1曲目はアルバムタイトル曲のイントロなので、2曲目が実質的なオープニング曲。メタルコアやメロディック・デスメタルの要素を多く取り込んで、サウンドのベースはヘビーメタルを維持している。前作の路線。

6
VENGEANCE FALLS

2013年。2000年代のメタルコアとメロディックデスメタルをそのまま再現する。デビュー当時はメタルコアが入ったヘビーメタルが新しかったかもしれないが、それを10年後も維持していれば、最初のやり方を変えることができないと見られても仕方がない。メンバーは若いが、若いからこそ許されるさまざまな挑戦を選択せず、ヘビーメタルのアーティストにありがちな保守志向に傾いている。

7
SILENCE IN THE SNOW

2015年。ドラムが交代。イントロのインスト曲はエンペラーのイーサーンが作曲。2曲目以降はヘビーメタルとなっている。メタルコア、スラッシュメタルの要素が少なくなったのがポイントで、デス声や潰したような声を使っていない。ボーカルのメロディーを追いやすく、ヘビーメタル系の音楽の先端ではなくなったが、逆に広い支持を得らえる可能性も含んでいる。

8
THE SIN AND THE SENTENCE

2017年。ドラムが交代。「ビヨンド・オブリヴィオン」「ビトレイヤー」「ザ・レチェッドネス・インサイド」「スロウン・イントゥ・ザ・ファイア」などでメタルコアのドラムとボーカルを復活させた。前作にはメタルコアの要素がなかったため、ハードな曲調に戻ったこと自体が好意的に評価されるだろう。曲が長くなりがちな近年のヘビーメタルで、概ね5分台で1曲にまとめる能力も認められていい。「ピラーズ・オブ・サーペンツ’17」は「エンバー・トゥ・インフェルノ」の日本盤ボーナストラックだった曲を、再録音して再び日本盤のボーナストラックにしている。

9
WHAT THE DEAD MEN SAY

2020年。前作に続く路線。アルバムタイトル曲と「ベンディング・ジ・アーク・トゥ・フィア」は加工音が聞こえる。メタルコア、メロディック・デスメタル、ヘビーメタルのメロディーをバランスよくまとめている。ボーカルにしろギターのリフやソロにしろ、メロディーのアイデアが豊富で、80年代後半のメタリカがメタルコアもやっているような印象だ。

10
IN THE COURT OF THE DRAGON

2021年。前作に「IX」というイントロがあったが、このアルバムでは「X」というイントロのインスト曲があり、エンペラーのイーサーンが作曲している。アルバムのレベルが上がった「ザ・シン・アンド・ザ・センテンス」以降では背景音を多めに入れている。アルバムタイトル曲、「ザ・シャドウ・オブ・ジ・アパトワー」「フォール・イントゥ・ユア・ハンズ」はシンセサイザーが入り出した90年代のアイアン・メイデンを上回る。ベースも目立ち、アルバムの方向性がアイアン・メイデンのアップデートだったのではないかと思わせる。