1978年。邦題「氷牙」。キーボードを含む5人編成。ボーカルはデニス・フレデリクセン。ハードロックを基本とし、シンセサイザーを中心とするキーボードとキーの高いコーラス、ハイトーン・ボーカルを合わせた。メロディーはポップで、ボーカルもストーリーズのイアン・ロイドやフォリナーのルー・グラムのようなニュアンスがある。ニュアンスがあるだけで本格的なソウル風のボーカルではないため、声の高さもあってジャーニーのスティーヴ・ペリーのような聞きやすさがある。「ホールド・アウト」から「ビッグ・ボーイ」へのメドレーはすばらしく、そのあと「ギブ・ミー・ユア・マネー、ハニー」のポップな曲へ移るA面はアメリカン・プログレッシブ・ハードロックの傑作。デニス・フレデリクセンはファーギー・フレデリクセンとしてTOTOに加入。日本盤は1979年発売。
1980年。ボーカルが交代。ボーカルの声が低くなり、キーボードも一般的な音に変わった。シンセサイザーが担っていたプログレッシブ・ロックの雰囲気が薄くなり、パーカッションやピアノが少ないアダルト・オリエンテッド・ロックになっている。コーラスは残っている。演奏の質は前作と変わらず高いが、個性が薄くなりすぎた。このアルバムで解散。キーボードのパトリック・レオナードは80年代後半にマドンナの「ライク・ア・プレイヤー」「ラ・イスラ・ボニータ」などのプロデューサーとなった。
2002年。サバイバーのキーボード奏者、ジム・ピートリックのバンドのボーカルだったジョー・ヴァナを中心とするバンド。TOTOのファーギー・フレデリクセンと2人でボーカルをとる。ベースはTOTOのデイヴィッド・ハンゲイト、キーボードはジム・ピートリックのバンドのメンバーで、プロデューサーもジム・ピートリック。全ての曲にジム・ピートリックが作曲で関わっており、「ユー・スティル・ショック・ミー」「ブラインデッド・バイ・エモーション」は1990年に作曲されているため、バンドのメンバーは関わっていない。オープニング曲はジム・ピートリックとサバイバーのフランキー・サリヴァンの作曲。ボーナストラックまで含めてファーギー・フレデリクセンとジョー・ヴァナが交互にボーカルを取り、同一の曲で両者が歌っているのは「キャント・ストップ・ラヴ」のみ。サウンドはメロディアスなロックで、特に突出したものはない。ジョー・ヴァナのボーカルはファーギー・フレデリクセンよりやや低めの声。
2011年。ジョー・ヴァナ単独のボーカルとなり、11曲のうち9曲をトミー・デナンダーと共作している。ギターはジョー・ヴァナの息子。1990年代後半から目立ってきたプロジェクト型の録音で、曲ごとに演奏者が変わる。トミー・デナンダーはギター、キーボードでも参加している。1曲が5分程度あり、編曲にある程度の工夫がみられる。80年代のメロディアスなロックを理想とし、そこからほとんど逸脱しないサウンドには一定の支持者があるが、それ以上の広がりは期待できない。
2006年。トリリオンの「クリアー・アプローチ」でボーカルをとっていたトム・グリフィンのアルバム。楽器の演奏者は固定されていない。キーボードとギターを中心とするハードロック。アダルト・オリエンテッド・ロックにはならず、北欧の若いハードロック・バンドと同じ質を保つ。「シェイピング・フェイト・アンド・デスティニー」「メイク・イット・オールライト」はいい曲。
2007年。トミー・デナンダーとTOTOのファーギー・フレデリクセンのグループ。ドラム以外の楽器はトミー・デナンダーが演奏している。メンバーが固定されると曲の多彩さが失われる。キーボードやギターの音も無意識のうちにある程度決まってしまうこともあるだろう。レディオアクティヴとして出しても問題はなかったのではないか。曲が特段に落ちるわけではない。北欧のハードロックやプログレッシブ・ヘビーメタルによくあることだが、ロックン・ロールや単純なヘビーメタルがないと、アルバム全体が締まらなくなる。