TOOL

アメリカのロック、ヘビーロック、ヘビーメタルバンド。4人編成。ボーカルのメイナード・キーナンを中心とする。ヘビーメタルにオルタナティブ・ロックの暗い諦観とサウンド上の頻繁な変化を取り入れ、プログレッシブ・ヘビーメタルとは異なるオルタナティブメタルの代表的バンドとなった。「ラタララス」はドリーム・シアターの「メトロポリス2」などとともにプログレッシブロック全体でも高く評価されている。

 
OPIATE

1992年。EP盤。4人編成。アメリカ・ロサンゼルス出身。ボーカルのメイナード・キーナンを中心とする。6曲のうち2曲はライブ。80年代末から注目され始めた暗めの技巧的なヘビーメタルで、ベースがギターと同じ程度に目立つ。多重録音やキーボードなどの装飾が少なく、生々しさを残している。自覚しているかどうかにかかわらず、80年代の大衆向けロックに対する否定的反応という意味ではグランジと同じだ。日本盤は2001年発売。

1
UNDERTOW

1993年。邦題「檄流」。前作のイメージをそのままアルバムでも再現している。グランジが表現していた若年世代の疎外感を、トゥールも表現している。各曲の歌詞は、既に進んでしまってどうにもならない自らの不遇や、厳しい境遇に意図せず入ってしまった周囲の状況を描く。80年代末から90年代前半に社会に出たアメリカの第2次ベビーブーム世代、特に郊外の白人は、80年代に過ごした享楽的で楽観的な社会と90年代前半の不透明な先行きの間で内省と冷笑的態度に至るが、このアルバムとグランジの一連のアルバムは、音楽性に多少の違いはあっても、共通性がある。このアルバムで日本デビュー。

2
AENIMA

1996年。ベースが交代。曲が長くなり、曲に変化が多くなった。ギターは70年代のブラック・サバス風になった。プログレッシブロックの影響を隠さないプログレッシブ・ヘビーメタルとは異なり、主にサイケデリックロックからのブラック・サバスの影響を受けたオルタナティブロックになっている。90年代以降のロックにとって、60、70年代のプログレッシブロックは知性の権威を借りたエリート主義であり嫌悪の対象だが、サイケデリックロックは定型から自覚的に外れることで不規則非定型な人間を肯定するため、オルタナティブロックを中心とするロックの基軸となった。ヘビーメタルを基調とした演奏でこの基軸を取り入れれば、オルタナティブ・ヘビーメタルあるいはオルタナティブメタルであり、トゥールがそのジャンルの先駆者と言ってもいいだろう。15曲のうち6曲は1分以下から4分の間奏曲。全米2位。

3
LATERALUS

2001年。「アニマ」の曲調を継続しながら、ブラック・サバス風ギターを大きく減らし、独自のヘビーメタルとして確立した。このアルバムでも1分程度の間奏が複数あるものの、実質的には8曲で、6分から11分と長くなっている。2000年前後にオルタナティブメタルが最盛期を迎え、これがその代表的なアルバムとなった。90年代のヘビーメタルがグランジやラウドロック化せずにこうなっていればと思わせるサウンド。技巧的な「スキズム」や「ラタララス」に限らず、曲の展開は複雑だ。「ティックス・アンド・リーチズ」はボーカルが絶叫する。全米1位。

4
10,000DAYS

2006年。前作に比べ、ヘビーメタルの要素が減った。代わって増えたのはハードではない演奏の部分だ。「ヴァイケリアス」「ジャンビ」は「ラタララス」の曲調を継承するが、「ウィングス・フォー・マリー(Pt1)」「10,000デイズ(ウィングスPt2)」はドラムが出てこない部分が長い。アンサンブルというより即興に任されることも多い。「ロスト・キーズ(ブレイム・ホフマン)」は長い間奏曲。7分の「インテンション」はロックそのものから離れようとしている。

5
FEAR INOCULUM

2019年。7曲のうち6曲が10分以上。ヘビーメタル由来のエレキギターが音の主軸だが、曲のテンポは。ほとんどの曲はイントロが静かに始まり、徐々に盛り上げていく。10分以上の曲をそれぞれ分割すれば、ハードな曲が複数入ったアルバムになり、評価も変わっただろう。前作から13年がたち、音楽的な主導権はドラムが持っていると感じさせる。「チョコレート・チップ・トリップ」はシンセサイザーとドラムソロの曲。