1983年。4人編成。ノルウェー出身。アメリカのロックン・ロール、ハードロックに近く、ボーカルも男っぽい。歌詞はノルウェー語。1曲目は「ハーレイ・ダヴィッドソン」で「時速100キロでハイウェイをぶっ飛ばしたい」と歌い、2曲目の「USA」で「古くて錆びついたトロンヘイムの街は飽き飽きだ・・・USAはゴキゲンな国さ」と歌う典型的アメリカ指向。イギリスのハードロックが減速し、アメリカン・ロックがかっこいい時代でもあった。
1984年。ボーカルがトニー・ハーネルに交代し、ベースも入れ替わった。トニー・ハーネルは高音を駆使するが、曲は前作から大きく変わったというわけではない。トニー・ハーネルが歌っていることによるイメージに左右されなければ、このアルバムが過渡期の作品であることは容易に分かる。5曲は前任ボーカルが作曲に関わっている。キーボードを導入、コーラスはほどほど。
1987年。ポップなメロディーを、突き抜けるようなハイトーンのボーカルが歌い、キーボードとコーラスが装飾する。ハイトーンであるということは、歌える音域が広いということであり、それは作曲する際のメロディーの作り方に大きく関わってくる。旋律がある音程から次の音程へ流れていくとき、その音程の差が大きいと聞き手に緊張感を与えるが、これが曲のインパクトや感動に直接つながる。全盛期を過ぎたアーティストの曲が、以前と比べて派手さやきらびやかさ、爽快さが失われてマイルドな弛緩したメロディーになっていくのは、加齢によって自分の喉が老化し、音域が狭くなるからである。トニー・ハーネルのみが全曲で作曲に関わっており、トニー・ハーネルがTNTであるとも言える。「エヴリワンズ・ア・スター」「10,000ラヴァーズ」「見わたす限り」「リッスン・トゥ・ユア・ハート」収録。
1989年。邦題「インテュイション~直感」。前作の延長線上。キーボードを多用し、ボーカルは歌い上げる。ややファンタジック。「トゥナイト・アイム・フォーリング」「フォーエヴァー・シャイン・オン」収録。代表作。
1992年。ロックン・ロール風のリズムが多くなり、キーボードの使用が縮小。ボーカルは歌い上げるというよりは力で歌いきるという感じだ。コーラスのキーもだいぶ下がったため、印象としてかなりアメリカ寄りになった。メロディーのポップさはあまり変わらないが、演奏のスタイルが変わった。
1992年。ライブ盤。大手レコード会社での最後の発売。
1996年。ベスト盤。
1997年。間違いなく時流の影響を受けている。特にギターの音はラウド・ロックの影響が見られる。ボーカルはハイトーンを使わずに歌う。ノルウェーのバンドというイメージはすでに前作で薄れていたが、このアルバムで完全に消えたと言える。「デイジー・ジェーン」収録。「北欧伝説再び」という日本盤帯の文は厳しい。日本盤には「イントゥイション」のころの未発表曲が音質の低いデモ・バージョンで入っているが、そうでもしないと販売促進できないというレコード会社の判断が見える。
1999年。前半は「リアライズド・ファンタジー」、後半は「ファイアフライ」の路線。「ホール・ユー・アー・イン」は「アウェイク」のころのドリーム・シアターがやっていそうな音で、ボーカルもジェイムズ・ラブリエに似ている。少なくともハイトーンを意識的に押し殺したというような印象はなく、試行錯誤しながら「リアライズド・ファンタジー」に戻ったということか。トニー・ハーネルはこの後2002年までウェストワールドで活動。
2003年。メロディアスな曲が並ぶ。トニー・ハーネルは20年近く歌ってまだこの声かというボーカル。87年に作曲されたという「デスティニー」はさすがに「テル・ノー・テイルズ」路線で爽快。
2004年。「テル・ノー・テイルズ」や「インテュイション」のころのような、突き抜けるハイトーンはあまりない。曲調も全体的に「リアライズド・ファンタジー」の路線で、ロニー・ル・テクロのギターだけが80年代後半を思い出させる。コーラスも華麗というほどではなく、まったく普通だ。前評判の割にはインパクトが弱い。
2005年。ベースが抜け3人編成。前作の路線。ボーカルが通常使う音の高さが80年代より低くなっているのは変わらない。「ファイアフライ」以降はその路線がずっと踏襲されており、80年代のイメージを求めるのは酷である。「ブラック・バタフライ」はレッド・ツェッペリンの「移民の歌」を思い出す。「トゥー・レイト」収録。
2007年。ボーカルが交代し、シャイのトニー・ミルズが加入。ベースも加入し4人編成となった。トニー・ミルズはトニー・ハーネル並みに高い声が出るボーカルであるが、このアルバムは「ファイアフライ」の路線で作曲された曲が多いので、シャイや80年代のTNTのようなサウンドはほとんどない。ギターの音の太さを気にしなければ「ゴールデン・オポチュニティ」「ワイルド・ライフ」などは80年代路線と言えなくもない。「ジューン」は50、60年代ポップス風。「マイルストーン・リヴァー」は全編を打ち込みにした方がよかった。最後の「レッツ・パーティー・ミルズ」はなくてもよい。「ナウ・ウィア・トーキン」のギターはロニー・ル・テクロのうまさを感じる。
2008年。前作に続き「ファイアフライ」の路線。11曲すべてにギターのロニー・ル・テクロがかかわっている。ギターが前面に出ているわけではなく、ハードロックではない曲も入っているが、ロニー・ル・テクロのソロアルバムであっても違和感はない。曲はバラエティに富んでおり、もはやノルウェー出身という説明に意味がなくなっている。トニー・ミルズのボーカルは高音をあまり駆使しない。最初から最後までハードロックというわけではないアルバムは、ハードロックとして発売しなくてもいいのではないか。
1988年。TNTのドラム、ディーゼル・ダールがTNTを脱退して結成したバンド。4人編成。ボーカルは女性。「ミッドナイト・ダイナマイト」ほか、いずれの曲もトニー・ハーネルが歌っているかのように聞こえる。コーラスも厚く、80年代のアメリカのハードロックそのものだ。「キャント・ゲット・イナフ」はバッド・カンパニーのカバー。
1989年。ボーカルが男性に交代。
1992年。ボーカルが交代したので「ハウ・バウト・ディス」のボーカルを差し替え、「ドラムス・オブ・ウォー」から「ドラムス・オブ・ウォー」と「ストレンジャー・イン・パラダイス」を再収録した。メロディアスなハードロックで、ボーカルは男っぽい。覚えやすいメロディーでヒット性も高いが、80年代アメリカのハードロックは売れなくなっていたので、時期に恵まれなかった。「ホット・サマー」はいい曲。ラジオでは「ドラムス・オブ・ウォー」がよくかかった。