THROBBING GRISTLE

  • 男性3人、女性1人の4人編成。イギリス出身。一般的なバンド演奏ではなく、環境音、特に産業化社会の中の音を利用する前衛的な音楽を創作する。
  • 芸術志向の若者が70年代後半のイギリスで前衛音楽をやっていたところ、パンク、ニューウェーブとしてメディアに取り込まれた。
  • 手法としては20世紀後半の電子音響音楽、アクースマティック音楽に近い。

1
THE SECOND ANNUAL REPORT

1977年。邦題「セカンド・アニュアル・リポート(第二活動報告書)」。パンク、ニューウェーブの時期にデビューし、ニューウェーブの音楽的幅を広げた代表的アルバム。音楽と称する音響実験のようなサウンド。ニューウェーブが許す実験性なくしては出てこなかっただろう。アルバムの構成も変則的で、「スラグ・ベイト」のスタジオ録音とライブ2曲、「マゴット・デス」のスタジオ録音とライブ3曲がA面を構成しているものの、「マゴット・デス」のライブ1曲は1分未満のMCだけだ。B面は映画のサウンドトラックとして作られた即興的な音楽。20分ある。

2
D.O.A

1978年。邦題「D.O.A(最終報告書)」。規則的なリズムを持つ曲が増えた。ドイツのエレクトロ音楽を思わせるサウンド。クラフトワークの「2」に近く、リズムのあるシンセサイザー中心の曲は「ラルフ&フローリアン」を思わせる。一般的なポピュラー音楽から継承しているのはリズム感くらいで、全体として多分に音響音楽風だ。「ヴァリー・オブ・ザ・シャドウ・オブ・デス」「ホームタイム」は会話と電子音を組み合わせた電子環境音楽風の曲。「ヒット・バイ・ア・ロック」「ブラッド・オン・ザ・フロア」にはボーカルメロディーがあり、「ブラッド・オン・ザ・フロア」はフリートウッド・マックの影響とみられる。

3
20 JAZZ FUNK GREATS

1979年。全曲がスタジオ録音となりライブ録音はない。スタジオ録音だけになったためか聴きやすくなり、「タニス」「コンヴェンシング・ピープル」「ホット・オン・ザ・ヒールズ・オブ・ラヴ」「ウォークアバウト」「シックス・シックス、シックスティーズ」は明確に楽器演奏の意思が見える。「ビーチー・ヘッド」「ホワット・ア・デイ」はこれまでの音響音楽に近い。全盛期の3枚のスタジオ盤では最も一般性がある。ジャケットはパロディーが効いている。

HEATHEN EARTH

1980年。ライブ盤。アナログ盤と最初のCDに曲名はついていない。CDの再発盤からタイトルがついている。多くの曲が7分前後でまとめられており、これまでのアルバム収録曲とは関係なく即興的な曲を演奏している。4人全員で演奏する形態ではなく、主導者1人が自由に創作している。「セカンド・アニュアル・リポート(第二活動報告書)」「D.O.A(最終報告書)」に収録されているライブよりはやや聞きやすい。

GREATEST HITS

1980年。ベスト盤。このアルバムで活動停止。

4
JOURNEY THROUGH THE BODY

1982年。電子音楽のアクースマティック音楽。

5
IN THE SHADOW OF THE SUN

1984年。偶然性を取り入れ、現代音楽に近づく。

CD1

1986年。1979年に録音された電子音響音楽。

6
TG NOW

2004年。

7
PART TWO:THE ENDLESS NOT

2007年。

8
THE THIRD MIND MOVEMENTS

2009年。

DESERTSHORE/THE FINAL REPORT/X-TG

2012年。2枚組。スロッビング・グリッスルのメンバー4人のうち3人で録音したアルバム。「デザートショア」はニコのアルバムを全曲カバー。ほとんどの音がエレクトロニクスで構成されるので、不穏さが前面に出ている。低音がよく効いており、不穏さが増幅されている。「ファイナル・リポート」は「セカンド・アニュアル・リポート(第二活動報告書)」「D.O.A(最終報告書)」の路線だが、音として意識的に挿入したノイズではない実際の雑音がほとんどない。ノイズには秩序の外の異議申し立てという意味があり、そこに不協和音の社会的意味があった。制御されたノイズは、体制に取り込まれた第三者と同じだ。