THIN LIZZY

  • アイルランドのハードロックバンド。3~5人編成。ボーカル兼ベースのフィル・ライノットを中心とする。
  • 「ナイトライフ」からギターが2人になり、ギターハーモニーがサウンドの核となっていく。
  • メンバー交代多数。「ブラック・ローズ」はゲイリー・ムーア、「サンダー・アンド・ライトニング」はジョン・サイクスが参加している。
  • フィル・ライノットは1986年死去。
  • 代表作は「監獄」「ブラック・ローズ」、代表曲は「ヤツらは町へ」「ウィスキー・イン・ザ・ジャー」「コールド・スウェット」「甘い言葉に気をつけろ」。

1
THIN LIZZY

1971年。ベース兼ボーカル、ギター、ドラムの3人編成。ベース兼ボーカルはフィル・ライノット。「リターン・オブ・ザ・ファーマーズ・サン」のように、全盛期の曲調を思わせる曲もある。ブリティッシュ・ロックだが、個性がなさすぎてつらいところだ。同時代の他のバンドを見渡しても、差別化を図ろうとするバンドに比べてかなり見劣りすると言わざるを得ない。

2
SHADES OF A BLUE ORPHANAGE

1972年。邦題「ブルー・オーファン」。キーボードが加入し4人編成。メンバーを増やした意味があるのかないのか分からない。アコースティックな曲が多く、A面冒頭とB面最後は長い曲。当時隆盛していたプログレッシブ・ロックに影響された面もあるかもしれない。このアルバムが発売される前に「ウィスキー・イン・ザ・ジャー」のシングルが発売され、これが解散するまでバンド史上最大のヒットとなっている。

3
VAGABONDS OF THE WESTERN WORLD

1973年。邦題「西洋無頼」。キーボードが抜けて再び3人編成に戻った。ロック・サイドに大きくシフトして進むべき方向を確定した。「ザ・ロッカー」収録。

4
NIGHT LIFE

1974年。ギターが抜け、新たにリード・ギターが2人加入した。プロデューサーのおかげで適切なところに適切なキーボードやストリングスが入っている。ブライアン・ロバートソンとスコット・ゴーハムのツイン・リードギターはB面で立て続けに登場。「それでも君を」のギターはゲイリー・ムーア。バンドの転換点となったアルバム。

5
FIGHTING

1975年。ベース兼ボーカルのフィル・ライノットがプロデュースして、全編がツイン・リードギターを導入したハード・ロックとなった。ディープ・パープルが完全に失速していたので、レッド・ツェッペリン、ブラック・サバスに次ぐハード・ロック・バンドになった。「ロザリー」「帰らぬおまえはワイルド・ワン」「自殺」収録。

6
JAILBREAK

1976年。邦題「脱獄」。イギリスでヒットし、ハードロックのみならず一般のロックでも有名になった。「ヤツらは町へ」は多くのバンドがカバーするようになったヒット曲。イギリス英語で「エメラルド」はアイルランドのことをさす。「ランニング・バック」もいい曲。全米18位。

7
JOHNNY THE FOX

1976年。邦題「サギ師ジョニー」。もともとフィル・ライノットの書く詩は、アイルランドにまつわるものが多かった。このアルバムは、取り立てて有名な曲やヒット曲がないので、歌詞に焦点が当たりやすい。歌詞はずっと変わらずにアイルランドをテーマとしている。注目すべきは歌詞よりもジャケットだ。かなりのスペースで三方を囲む紋様は明らかにケルト文化のもので、これまでジャケットにあまり気を遣わなかったバンドが初めて「アイルランドに対する愛国心」を視覚に訴えている。「虐殺」収録。

8
BAD REPUTATION

1977年。邦題「悪名」。ブライアン・ロバートソンはけがのためレコーディングに参加できなかったが後に重ね録りして発売。女性コーラスやサックスを取り入れてバラエティに富んでいる。ハードさは薄くなっている。

 
LIVE AND DANGEROUS

1978年。初のライブ盤。2枚組。CDでは1枚。MCがほとんどなく、曲と歓声が淡々と進んでいく。結果的にバンドの歴史の前半を総括するタイミング良く出たライブだった。

9
BLACK ROSE:A ROCK LEGEND

1979年。ブライアン・ロバートソンが脱退し、ゲイリー・ムーアが加入。ツイン・リードギターの美しさと曲の質の高さが並立した傑作。「ブラック・ローズ」のギターソロはアイルランド民謡の「トス・ザ・フェザーズ」を使用。「アリバイ」収録。

10
CHINATOWN

1980年。ゲイリー・ムーアが脱退しスノーウィー・ホワイトが加入。キーボードが入り、ギターもツイン・リードではなく普通のプレイが増えている。ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビー・メタルではなくニュー・ウェイブに影響を受けたのか、全体に音が洗練されてきれいだ。ウルトラヴォックスのミッジ・ユーロ参加。キーボードを弾いているのはダーレン・ワートン。「ジェノサイド」収録。

11
RENEGADE

1981年。邦題「反逆者」。キーボードを大幅に導入。「チャイナタウン」以降、勢いが失速するのは相対的に個性が薄くなったから。

12
THUNDER AND LIGHTNING

1983年。ギターのスノーウィー・ホワイトが脱退し、タイガース・オブ・パンタンのジョン・サイクスが加入。キーボードのダーレン・ワートンも正式にメンバーになって5人編成になった。名盤とされているが、なぜ名盤かと言えば、ロックのアルバムとして曲がいいのと、全体的に緊張感があるからだ。ツイン・リードギターの美しいハーモニーという全盛期の個性を前面に押し出しているからではない。「脱獄」や「ブラック・ローズ」とは違う方向で支持がある。「コールド・スウェット」収録。

LIFE/LIVE

1983年。邦題「ラスト・ライヴ」。ライブ盤。

 
DEDICATION

1991年。邦題「デディケイション~フィルに捧ぐ」。ベスト盤。「デディケイション」は未発表曲。「アリバイ」はバージョン違い。

 
BBC RADIO ONE LIVE CONCERT

1992年。ライブ盤。83年のライブ。ギターはジョンサイクスとスコット・ゴーハム。ダーレン・ワートンもキーボードのメンバー。

GREAT BOX

1991年。4枚組ベスト盤。

 
THE PEEL SESSIONS

1994年。1972年から1977年までの未発表バージョン集。イギリスのラジオ番組用のスタジオ・セッション。

WILD ONE

1996年。ベスト盤。