テラ・ノヴァはオランダのロックバンド。ボーカルのフレッド・ヘンドリクス、キーボードのロン・ヘンドリクスを中心とする。一貫して爽快なサウンド。デビュー盤の日本盤は爽快でない曲がカットされている。2000年代前半はアクイラとして活動していた。90年代は日本のレコード会社と契約し、2、3枚目のアルバムは実質的に日本のみの発売。2000年以降も日本中心の発売で、英米で発売されたことはない。
1996年。オランダの5人組。ポップさと爽快さを兼ね備えたサウンド。イメージに合うように日本ではジャケットが変更されている。曲のほとんどの部分でキーボードとギターの音が鳴っているため、音が厚い。明るめのハードロック。「ヘイ・ベイブ」収録。日本のレコード会社がオリジナル・アルバムから3曲をカットしているので、日本盤は純粋にアーティストの意思を表しているとは言えない。
1996年。シングル盤。6曲のうち未発表3曲、未発表バージョン1曲。未発表曲はアルバムから外された3曲。
1997年。80年代以降のジャーニー、キーボード導入期のヴァン・ヘイレンに似るところもある。オルガンの音が多い。分厚いコーラス。2作続けてジャケットを変えている。
1999年。1曲目の間奏はエイジアを意識したか。日本向けだという「アイ・ウィル・ビー・ゼア」はヴァレンシアを想起させる。アルバム・タイトル曲はホーン・セクションが入る。80年代ハードロックを中心に、様々なジャンルから影響を受けていることが分かる。日本のみの発売。
1999年。シングル盤。「ターン・ミー・ルーズ」「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」はアコースティックバージョン。
2001年。テラ・ノヴァの4人のうち3人が在籍するバンド。キーボードを含む5人編成。コーラスは低音部が無くなったのでテラ・ノヴァ時代より控えめ。はじけるようなメロディーは若干薄れてリラックスした曲が多い。ドラムの音とギターがアコースティックに聞こえるのでハードロックからロック、ポップスになったという印象を持たれやすいだろう。
2002年。シングル盤。アルバム未収録曲3曲収録。「ラジオ・アクティヴ」はビートが効いたロックン・ロール。「ホーム」はパーカッションとアコースティック・ギター中心のゆったりした曲。「アイ・スティル・ビリーヴ」はアコースティック・ギターを使うがサウンドは軽めのロック。
2004年。ボーカルのフレッド・ヘンドリクス、キーボードのロン・ヘンドリクス、ドラムの3人が正式メンバー。ギター2人とベースはゲスト・ミュージシャンの扱い。ポップさは以前からあるが、ポップである方に大きくシフトして、デビュー当時のドラマチックさが控えめになっている。前作よりハード。
2005年。デビュー当時からいるボーカルとキーボード、ギターの3人で再結成。爽快さはデビュー当時並みで、特にキーボードはストリングスの使い方がすばらしい。これだけでテラ・ノヴァが新しいポップさを身につけたという印象を持たせる。アメリカの同系統のバンドに比べ、ロックンロールがほとんどないことと、ボーカルに黒人風の歌い回しがないのが特徴。ファイナル・フロンティアにも言える。オープニング曲から3曲目までタイトルが「ロング・リヴ・ロックン・ロール」「ロック・ボトム」「ホールド・ザ・ライン」となっているが、カバーではない。
2006年。ベスト盤。新曲5曲収録。5曲のうち1曲がオープニング曲になり、残りの4曲は最後に配置されている。オープニング曲の「アイ・ワナ・ノウ」はハードな曲。ギターはこれまでで最もハードだ。それ以外はこれまでの路線。
2007年。女性2人をボーカルとし、テラ・ノヴァのギター、ベース、キーボードとヴェンジェンスのドラムが参加するバンド。ベースのフレッド・ヘンドリクスはテラ・ノヴァ時代はボーカル兼ギターだった。フレッド・ヘンドリクスが全曲を作曲、プロデュースもしている。ボーカルはどちらかがソロを取るのではなく、2人同時に歌うことが多い。コーラスは多声で厚い。「トゥ・ザ・トップ」など、ボーカルを入れ替えるとそのままテラ・ノヴァになる。「ザ・ロンゲスト・ナイト」はアップテンポでいい曲。
2010年。ドラムが加入し4人編成。最初の3曲がすばらしい。明るい曲がほとんどで、聞いていて陰鬱になることはまったくない。コーラスの使い方もよい。デビュー時と変わらないメロディーとサウンドだ。
2015年。ノイズのない1980年代アメリカのイメージを再現するようなサウンドは、社会があたかも白人だけしかいないような不遜な思考を象徴しているとして、90年代以降は忌避の対象となる。しかし、そのようなサウンドを好む人が消えてなくなるわけではなく、ハードロックにおいてはフロンティア・レーベルに集まるようなバンドが彼らの要望に応えている。テラ・ノヴァもその一つになるだろう。キーボードが出てこないギター主体の曲もあるが、多くはシンセサイザーをキーボードとして、前向きなメロディーを演奏する。爽快さも以前と変わらない。
2018年。曲調やメロディーは以前と変わらないものの、録音の機材の問題というより資金の問題で音質が低くなっている。ギターではそれが顕著に出る。ギターの音の太さやオルガン使用の頻度をみると、ポップスではなくハードロックをやろうとしていることが分かる。ハードロックからロックンロールに寄せれば英米でも認められる余地はあるが、日本人が要求するイメージを、ジャケットも含めて捨てる必要がある。