SYSTEM OF A DOWN

  • アメリカ、ロサンゼルス出身のヘビーロックバンド。4人編成。メンバーはアルメニア系住民。
  • アルメニア人由来を感じさせるメロディーを持つラウドロック、ヘビーロックとして2000年代前半にヒットした。

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SYSTEM OF A DOWN

1998年。ラウド・ロックを基本として、ヨーロッパの伝承音楽や民族音楽のメロディーを差し挟んでいる。メンバーはアルメニア移民だという。世界の主流ではないところから出てきたり、障害を負ったりしているバンドは聞き手の支持を得やすく、ビートルズはロンドンではなくリバプールから出てきたことがファンに親しみを持たせた。ロンドンやニューヨーク、ロサンゼルスというロックの一流都市から出てきたアーティストは、例えば、ストリートから出てきたとか、貧民街から出てきたことを強調する。それが弱ければ個人的な境遇の特殊性に方向を変え、アフリカ系であるとか、少数民族の血を引いているとか、不幸な生い立ちであるなどの要素を強調する。メンバーの出自の珍しさ、すなわち非主流であることを宣伝しているのがシアトルのニルヴァーナやブラジルのセパルトゥラで、境遇の不幸さを宣伝したのがKORNである。システム・オブ・ア・ダウンも、アルメニア人街から出てきたと言い、アルメニアの不幸な歴史を題材に曲を作っている。彼らにとって、アルメニアと関わっていくことはロックの世界で生きていく上で避けて通れない。このバンドのサウンドが、アルメニア由来なのか、それとは関係ない彼らの個性なのか分からないが、システム・オブ・ア・ダウンにしてもKORNにしても、生い立ちの不幸さを聞き手が確認する方法はなく、実際にCDから出てくる音だけが目の前に現れる。両方のバンドとも、音だけを頼りに聞けば、他のアーティストが思いつこうにも思いつかないようなメロディーが随所にあり、音楽以外の部分(出自や境遇)をわざわざ言わなくてもすばらしい曲を持っている。このバンドの評価の高さは、音楽が主であって、それ以外の部分は従であり、従の部分はなくても評価が成り立つ。世界的にヒットしているようなアーティストは、境遇に関係なく、音楽そのものがすばらしいことがほとんどだ。システム・オブ・ア・ダウンに関しては、やや哀愁を帯びている部分は、アメリカのラウド・ロックのバンドにしては特徴的である。ただ、手法はすぐに模倣される恐れがある。アルメニアという部分を他の外国に変えれば日本人にも可能だからである。

 
SUGAR

1999年。シングル盤。ライブを3曲収録。唯一の日本盤シングル。

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TOXICITY

2001年。邦題「毒性」。メロディアスな部分が増え、ボーカルが歌い上げることが多い。ギターサウンドだけを変えれば、ハードロックとしても聞ける。前作以上にダブル・ボーカルを駆使しており、「チョップ・スイ」では美しいピアノのストリングスを使う。「エリアルズ」のエンディングは民族音楽か。

 
STEAL THIS ALBUM!

2002年。「毒性」のアウトテイク集。最後の「ストリームライン」はすばらしい。

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MEZMERIZE

2005年。2枚で完結するアルバムの1枚目だという。システム・オブ・ア・ダウンのメンバーは、アルメニア系アメリカ人と言えば少数派だがアメリカ人と言えば多数派だ。このアルバムで主張していることは、よくある反ブッシュ体制なので、ポピュラー音楽の世界ではそれほど珍しさはない。しかし、現実としてWASPのアメリカ人ではなく国籍取得のためのヒスパニック系移民(アルメニア系アメリカ人と同じ少数派アメリカ人)が戦地で多数活動していることを考えると、その主張も説得力がある。リズムの転換が多い「B.Y.O.B.」はその転換がそのまま曲の覚えやすさにつながっている。メロディアスな曲が多く、印象深さと並立しているところは才能の違いを実感させる。ボーカルのうまさも従来通り。

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HYPNOTIZE

2005年。ハードでスピーディーな演奏を保ちながらメロディアスになった。ラウド・ロックのような厚いギターではなく、切れのある鋭い音を中心に使う。前作の「B.Y.O.B.」ほどの曲はないが、それぞれの曲は前作の路線と同じ。「アタック」収録。

 
ELECT THE DEAD/SERJ TANKIAN

2007年。システム・オブ・ア・ダウンのボーカル、サージ・タンキアンのソロアルバム。システム・オブ・ア・ダウンよりも暗く、ピアノやキーボードがその暗さを増幅させる。システム・オブ・ア・ダウンのボーカルなので、ハードな曲ではシステム・オブ・ア・ダウンに聞こえる部分もあり、聞き手はその中からサージ・タンキアンの個性を読み取ることになる。ピアノやアコースティック・ギターの弾き語りからヘビーメタルまで、緊張感と重量感の差が大きい。楽しいとか面白いとかとは異なる世界があり、長時間神経を張り続けながら聞くのは疲れるサウンドだが、50分以下に収めたのは賢明だ。

 
IMPERFECT HARMONIES/SERJ TANKIAN

2010年。オーケストラの音を大幅に取り入れ、映画音楽のような壮大なサウンドになっている。ドラム、ベースを使う曲が多い。メロディーはピアノかオーケストラを使い、ギターはほとんど使われない。テンポがそれほど速くはないので、オーケストラをエレキギターに変えたとしてもロックとして成り立つかどうかは分からない。「レフト・オブ・センター」は

 
HARAKIRI/SERJ TANKIAN

2012年。邦題「切腹」。ロックのサウンドに戻った。楽器の中心はエレキギターで、リズムはドラムかエレクトロニクス。エレクトロニクスの場合でも基本的なリズムはロックになっている。「フィギュア・イット・アウト」「アンエデュケイテッド・デモクラシー」はシステム・オブ・ア・ダウンの曲としても通用する。「デフニング・サイレンス」はエレクトロニクスと女性ボーカルを使う。ポピュラー音楽の音作りの流行からみれば、システム・オブ・ア・ダウンが活動を続けていたとしてもエレクトロニクスを使うことになっていたのかもしれない。