STONE TEMPLE PILOTS

ストーン・テンプル・パイロッツはアメリカのオルタナティブロックバンド。4人編成。ボーカルのスコット・ウェイランド、ベースのロバート・ディレオ、ギターのディーン・ディレオ兄弟が中心。1992年、グランジ・ブームの中でデビュー。「コア」「パープル」がグランジの特徴をよく表したアルバムとして大ヒットした。90年代後半は一般的なロックに近くなる。2003年に解散し、2008年に再結成。スコット・ウェイランドはヴェルヴェット・リヴォルヴァーのボーカルも務めた。スコット・ウェイランドはデビュー当初から薬物乱用でバンドに停滞をもたらし、2015年に死去。

1
CORE

1992年。グランジがアメリカで絶頂期を迎えたころにデビューした。同時期にデビューしたアーティストと同じように、第2次ベビーブーム世代からの支持を得て大ヒットの恩恵を受けたが、ニルヴァーナやパール・ジャム等と比較された。スコット・ウェイランドのボーカルはパール・ジャムのエディー・ヴェダーの声に近く、グランジの雰囲気に適している。押し出すように歌う部分はニルヴァーナのカート・コバーンに似ている。ギターは全体的にざらついており、ギターを目立たせるような曲はあまりない。80年代のヘビーメタル、ハードロックと違うのは、「デッド・アンド・ブロアテッド」「シン」「クリープ」「ホェア・ザ・リヴァー・ゴーズ」のように、90年代前半のアメリカの若い男性の精神状態を代弁したような曲が多いことだ。「プラシ」「セックス・タイプ・シング」収録。全米3位、700万枚。

2
PURPLE

1994年。ロックの範囲内で音楽の幅を広げた。定型的な構成を意図的に避けたような曲調と、「インターステイト・ラヴ・ソング」は70年代アメリカンロックの90年代版。「シルヴァーガン・スーパーマン」の後半のギターなどは、ロックのバンドであることを忘れさせるようなメロディーだ。「ラウンジ・フライ」はドラムがいい。隠し曲は50年代のジャズ風ポップスで、パロディーに近い。ジャケットの左下は「紫」と書かれている。日本盤ボーナストラックの「アンディー・ウォーホール」はデヴィッド・ボウイのカバー。全米1位、600万枚。

3
TINY MUSIC...SONGS FROM THE VATICAN GIFT SHOP

1996年。邦題「ヴァチカン」。グランジを通過し、グランジから離れようとしたロック。荒さを残した90年代のロックという意味ではオルタナティブロックと言える。オープニング曲の「プレス・プレイ」は1分強のインスト曲。スコット・ウェイランドのボーカルは「コア」「パープル」よりもやや高めの声になった。メロディーの流れは一般的だ。抑揚の少ないロックではない。ギターやベースだけは「コア」の雰囲気を残し、ざらつきと酸味を感じさせる。「タンブル・イン・ザ・ラフ」収録。全米4位、200万枚。

4
NO.4

1999年。前作とは変わり、ハードで重量感のあるロックとなった。「ヴァチカン」のような曲も含まれている。曲調が変わったというよりも広がったと言った方が適切だ。オープニング曲の「ダウン」から「プルーノ」までの3曲はこれまでで最も厚く強さのある曲。「チャーチ・オン・チューズデイ」「サワー・ガール」は「ヴァチカン」の雰囲気を受け継いでいる。「ノー・ウェイ・アウト」はラップを入れずに歌うニューメタルのような曲。「セックス&ヴァイオレンス」はハードなロックンロール。「グライド」「アイ・ガット・ユー」「アトランタ」は60、70年代のロックを再評価するような流れ。特に「アトランタ」はストリングスを入れ、スコット・ウェイランドが朗々と歌う名バラード。全米6位。

5
SHANGRI-LA DEE DA

2001年。オープニング曲の「ダム・ラヴ」、3曲目の「コーマ」、4曲目の「ハリウッド・ビッチ」がハードなロックなので、アルバム全体がそうなのかと思わせるが、「ワンダフル」以降はメロディアスな曲が続く。「No.4」と「ヴァチカン」を合わせたようなアルバムだが、2000年代に入って、新しい音楽性を提示したのかもしれない。「デイズ・オブ・ザ・ウィーク」と「ワンダフル」以降は、ストーン・テンプル・パイロッツのポップで多様な側面を提示している。全米9位。

THANK YOU

2003年。ベスト盤。解散に伴って発売された。

6
STONE TEMPLE PILOTS

2010年。2008年に再結成。90年代のグランジ、オルタナティブロックから離れ、90年代末以降のロックンロール再興も取り込んだ曲調になっている。このアルバムが明らかにしているのは、曲によって歌い方を変えていくスコット・ウェイランドのうまさだろう。「ヒッコリー・ディカトミー」は70年代スワンプロック風。「シナモン」はギターポップ。「ハックルベリー・クランブル」はハードなザ・ストロークス風。「ファースト・キッス・オン・マーズ」はデヴィッド・ボウイを意識した曲か。全米2位。

HIGH RISE

2013年。EP盤。5曲収録。ボーカルはリンキン・パークのチェスター・ベニントン。有名バンドのボーカルが有名バンドの新しいボーカルになるのはリスクがかなり大きい。双方のバンドのイメージを超える出来が要求されるからだ。このEPでそこまで達しているかといえば、微妙、あるいは達していないというべきか。「セイム・オン・ジ・インサイド」「トゥモロー」はリンキン・パーク風。

7
STONE TEMPLE PILOTS

2018年。ボーカルのスコット・ウェイランドが2015年に死去し、チェスター・ベニントンも2017年に死去。新しいボーカルが加入。スコット・ウェイランド風の安定した歌唱力だ。ボーカルが代わったことを機にバンドの音を変えてもよかったが、大きな挑戦はしなかった。ボーカルが変わってバンドが再出発するときのアルバムはいつもそうだが、オープニング曲はアップテンポで勢いがある。アルバム全体としてはロックンロール寄りのハードロック。ボーカルはうまいが、曲によってはもう少し表現力がほしいところだ。全米24位。

8
PERDIDA

2020年。アコースティックギター中心のアルバム。アルバムタイトルもスペイン語。タイトル曲はストリングスも使う。カバー曲はなく、10曲全てが新曲。アコースティックギターのミドルテンポが並ぶアルバムは、他のアルバムと同じようには比較できない。ストーン・テンプル・パイロッツに求められるのは、やはりロックを基調としたアルバムだろう。

 
TALK SHOW/TALK SHOW

1997年。ストーン・テンプル・パイロッツのスコット・ウェイランドを除く3人が結成したバンド。「ヴァチカン」から「NO.4」の路線。ボーカルはスコット・ウェイランドに近いが、スコット・ウェイランドほどの華はない。