1996年。オープニング曲の「スクエアプッシャー・テーマ」がこのプロジェクトの基本になることを宣言している。一般的なテクノの曲にドラムン・ベースの曲を挟んでいる。アシッド・ハウスの影響を受けたメロディー、音色だ。ベースが目立つ曲はフュージョンの影響だという。日本盤は1997年発売。
1997年。実験的に作ったような曲やリズムだけがテクノになっているフュージョン、ブランドXのようなフュージョン・プログレッシブ・ロックなど幅が広い。ベースを楽器で演奏していることが曲に躍動感や人間性を与えている。「ビープ・ストリート」はいいメロディー。90年代の代表作。このアルバムで日本デビュー。
1997年。「ハード・ノーマル・ダディ」の未収録曲を集めた企画盤。7曲収録。リミックスした曲も含まれる。
1997年。1995、96年に発売されたEP2枚の9曲と未発表曲3曲を収録した企画盤。EP収録曲はビートの減衰音をメロディーとして使う曲もある。
1998年。ビートの音が実際のドラムの音に近くなった。キーボード、ベース、ドラムによるフュージョンやエレクトリック・ジャズのようなサウンドが聞ける。凝ったビートは減っている。各曲が短くなり、集中力を要求する曲はなくなった。15曲で48分。
1999年。「ミュージック・イズ・ロッテド・ワン・ノート」発売後の新曲を収録した企画盤。7曲収録。打楽器中心の「スプラスク」「ゴング・アシッド」、ベースを2本使う「トゥー・ベース・ヒット」が異色。
1999年。EP盤。「ソング:アワ・アンダーウォーター・トーチ」は16、17世紀の教会音楽風。
1999年。リミックスを除く16曲のうち、1分以下が4曲、1分台も3曲ある。1分以下の曲は曲の断片。「トゥモロウ・ワールド」はデビュー当時のサウンド。「マインド・ラバーズ」はハードなビートだ。
2001年。これまでで最もハードで攻撃的なサウンド。リズム、ビートがめまぐるしく変わる。テクノやドラムンベースというよりは、エレクトロニクスの実験音楽だ。
2002年。2枚組。1枚目はスタジオ録音、2枚目はライブ盤。スタジオ録音は曲がリズム、メロディーで成立しており、前作のような聞き手を寄せ付けない実験性は少ない。「ラヴ・ウィル・テアー・アス・アパート」はジョイ・ディヴィジョンのカバー。ライブ盤は日本でのライブ。
2003年。最初の3曲と最後の3曲は実際の楽器を演奏しているようなサウンドで、曲調も穏やか。間に挟まれた曲はエレクトロニクスを駆使したハードな曲が多い。ライブのようなギターソロ、ベースソロが3曲ある。「サークルウェーヴ」はジャズトリオのライブのような曲。これまでのスクエアプッシャーが1枚にすべて入っているようなアルバム。2000年代の代表作。
2006年。メロディーを中心に置いたアルバム。3曲目までは古風なバンドサウンド、4曲目はテクノのビート、5~8曲目は実験的な曲。「ウェルカム・トゥ・ヨーロッパ」は70年代のエレクトロ音楽、プログレッシブ・ロックを意識したようなキーボードの音だ。最後の曲は11分弱のアンビエント音楽。
2008年。全曲がバンドサウンドを模したような曲で、ギター、ベース、ドラム、キーボードの役割分担が明確だ。これまでのスクエアプッシャーのサウンドとは傾向が異なる。唯一ボーカルがある「ア・リアル・ウーマン」はラモーンズの「電撃バップ」に似た曲。
2010年。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードの5人編成を前提としたバンドのサウンド。多くの曲にボーカルが入り、前作よりも聞きやすい曲調が増えている。ドラムはエレクトロニクスで代用しているが、ベース、ギターは実際に弾いているようだ。1人ですべてを演奏していることや、人工的な音色を多用していることを別にすれば、曲自体は一般的なロック、ポップスと言える。
2012年。エレクトロニクスを全編にわたって展開する。エレクトロニクスによる音楽的表現を再び追求した。オープニング曲の「4001」がこのアルバムを音の傾向を端的に表している。エレクトロニクスとシンセサイザーでほとんどの音を組み立てているが、「エナジー・ウィザード」「ダーク・ステアリング」などはリズム、ベース、メロディーを組み合わせて疑似的にバンド編成にしている。「エクスタティック・ショック」「ザ・メタラージスト」「ドラックス2」は攻撃的。
2012年。EPが付いたスペシャル・エディション盤。EPは3曲収録。「エンジェル・インテジャー」は80年代風のポップさがある。「40.96a」は前衛的な曲のライブ。
2015年。意図的に改変した単語のタイトルを各曲に付けている。各曲のタイトルの表記も1文字だけデザインを変えている。一般的な単語から来るイメージをその曲に当てはめながら聞くことを拒否している。1、3曲目はもともとある曲を加工したような音。「ユーファビュルム」の曲調を継承している曲もある。全体として「ユーファビュルム」のように攻撃的ではあるものの、驚きの要素は少ない。
2017年。スクエアプッシャーの過去の曲をバンド演奏で再現する。歓声も聞こえるのでライブ録音しているとみられる。ギター、ベース、ドラム、キーボードの編成で、スクエアプッシャーはベースを弾いている。11曲のうち「フィード・ミー・ウィアード・シングス」から3曲、「ハード・ノーマル・ダディ」から2曲あり、90年代の曲が8曲を占める。原曲と比較しなくても、フュージョンとしてそのまま聞ける。ベース、ドラムは技巧的だ。エレクトロ音楽の表現可能性に比べると、バンド編成による技巧的フュージョンサウンドはあくまでもサイドプロジェクトとして見ざるを得ないが、今後どう展開していくかは注目すべきだろう。11曲で65分だが2枚組になっており、1枚目は30分、2枚目は35分。