1992年。キーボード奏者を含む5人編成。ギター、シンセサイザーによる持続音を長くとり、その持続音よりはメロディー志向のあるギター、キーボードによってボーカルメロディーを支える。ボーカルは歌うというよりもつぶやきながらメロディーをつけているような歌い方で、曲や歌よりも雰囲気を効かせることに重点がある。12曲が曲順に4分割されているが、分割されたひとかたまりの数曲に何か共通点があるわけではなく、2つめと3つめが抑制的なサウンドになっている。「スマイルズ」から「シンフォニー・スペース」までの「ユー・ノー・イッツ・トゥルー」はオープニング曲としては静かな曲。「イフ・アイ・ワー・ウィズ・ハー・ナウ」はホーン・セクション、「アイ・ウォント・ユー」はギターが目立つ。
1995年。ギター、ベースが抜け3人編成。オープニング曲から音の強弱が明確になり、楽器の輪郭も分かりやすい。弦楽四重奏団が参加し、「オール・オブ・マイ・ティアーズ」「ボーン・ネヴァー・アスクト」などで活躍する。楽器の音やメロディーが分かるようになっても、曲の流れは予測しにくいため一般性を獲得するまでには至らない。「ジーズ・ブルーズ」「エレクトリック・メインライン」「ピュア・フェイズ」はミニマルミュージック。
1997年。邦題「宇宙遊泳」。ギターやキーボードによる持続音が本当に浮遊しているような感覚を生み出し、アルバムタイトルがサウンドを的確に表している。2曲目の「カム・トゥギャザー」からはホーンセクションと女性コーラスを使う。「ブロークン・ハート」では弦楽器とホーンセクションがオーケストラの役割を担う。「神なき信仰」はハードなサイケデリックロック、「涼風」はゴスペル合唱隊が最も活躍する。必要に応じて弦楽器、金管楽器、合唱隊を使いながら、全体として浮遊感を感じさせ続ける。「コップ・シュート・コップ」は17分の長大なサイケデリックロック。
1998年。ライブ盤。2枚組。ホーン・セクション4人、弦楽器4人、合唱隊11人が参加。1枚目の中盤の3曲と2枚目全体が「宇宙遊泳」の曲となっている。ゴスペル合唱隊が出てくるのは2枚目。ジェイソン・ピアースがスピリチュアライズドを結成する前に在籍したバンド、スペースメン3の「ウォーキング・ウィズ・ジーザス」もやっている。「オー・ハッピー・デイ」はゴスペルで有名な曲。
2001年。ジェイソン・ピアースのほかギター2人、ベース、ドラム、パーカッション、キーボード、サックスの8人がメンバーとなっている。弦楽器、ホーンセクション、ゴスペル合唱隊が参加するのは前作と変わらないが、曲の輪郭がはっきりしており、ボーカルも明瞭に歌われる。合唱隊が出てこない曲はソウルにはならないサウンドだ。全体としては弦楽器とホーンセクションを多用するブリットポップとなっている。「アウト・オブ・サイト」「アイ・ディドゥント・ミーン・トゥ・ハート・ユー」はオーケストラと協演しているような壮大な曲。「ストップ・ユア・クライング」は合唱隊が参加した曲ではドラマティック。
2002年。7曲入りEP。「オン・ファイアー」「ドゥ・イット・オール・オーヴァー・アゲイン/カム・トゥゲザー」はセッションの括弧書きがあるがライブかどうかは不明。「アメイジング・グレイス(ピース・オン・アース)」はアメリカ国歌と「アメイジング・グレイス」をホーンセクションで重ねた曲。ボーカルは出てこないが歌詞は掲載されている。「ロック・アンド・ロール」「ゴーイング・ダウン・スロウ」もボーカルはないが歌詞は掲載されている。
2003年。楽器編成としてギター1人とサックスが抜け6人編成。弦楽器の量は少なくなり、大仰、流麗な編曲は少なくなっている。オープニング曲から歪みがかったギターによるロックの曲が続く。8人参加している管楽器奏者が活躍するのはフリージャズ風の「ザ・パワー・アンド・ザ・グローリー」だけだ。「ロード・レット・イット・レイン・オン・ミー」はこれまでで最もソウル、ゴスペルに近い。
2008年。18曲のうち、イントロや間奏になっている曲が6曲あるため、実質12曲。前作と同じバンド編成で弦楽器も管楽器も合唱隊も参加し、ジェイソン・ピアースがバンドとゲスト参加の区別なくサウンドの一要素として指揮しているようだ。このアルバムの意味づけとしてジェイソン・ピアースが病気になったことがよく言及されるが、病気になったからこそ生まれたサウンドと解釈しても、その結果を高く評価することはできない。
2012年。ジェイソン・ピアースのソロアルバムのようなサウンド。弦楽器と女性コーラスは編曲の幅を持たせるために使われており、編曲のため以上の役割を持っていない。「ヘッディン・フォー・ザ・トップ・ナウ」はサイケデリックロック特有の不協和音を持つが、それ以外の曲はロック系のシンガー・ソングライターのアルバムのように、ゆっくりと曲が進む。最後の「ソー・ロング・ユー・プリティ・シング」は後半に高揚する。「アメイジング・グレイス」以降はサウンド上の革新性が小さい。