ソイルワークはスウェーデンのヘビーメタルバンド。キーボード奏者を含む6人編成。コーラスは厚め。メロディック・デスメタルのギターを太く、厚くしたサウンド。「ナチュラル・ボーン・ケイオス」で飛躍し、「フィガー・ナンバー・ファイヴ」がヒットした。
1998年。ギター2人、キーボードを含む6人編成。スウェーデン出身。メロディック・デスメタルで、キーボードは目立たない。ボーカルは典型的なデス声ではなく、単語の発音が聞き取れる程度にハードコア風だ。曲は多くが前のめりのハードな曲。キーボードは背景音として使われ、ソロをとるようなことはない。ギターソロは80年代風。この時期にデビューするバンドとしては、やや個性が小さいのではないか。日本盤のボーナストラックはディープ・パープルの「紫の炎」をカバーしている。再発盤はジャケットが異なる。
2000年。ギターの1人とドラムが交代。ドラムが替わったことの効果か、テンポが高速になり、畳み掛ける曲が多い。ただ、リズムはまだ単調だ。ボーカルは叫ぶように歌う。サウンド全体が厚くなり、演奏の安定感も増している。ダーク・トランキュリティやイン・フレイムスと同じ道をたどっている。
2001年。ギターのメロディーが明確になり、キーボードがほとんどの曲で使われるようになったので音が厚くなった。サビではメンバーがコーラスをとり、曲によってはボーカルとは別のメロディーを歌う。サウンド全体の迫力が大きく増加している。低音の厚みが増したのは大きい。ヨーロッパでは大手レコード会社のニュークリア・ブラストから発売されるようになり、知名度が上がった。
2002年。オープニング曲の「フォロー・ザ・ホロウ」は絶叫型ボーカル、メロディアスなコーラス、低音デス声の3種のボーカルを使い分け、これまでのサウンドから脱却したことを示す。「アズ・ウィ・スピーク」はキーボードが主旋律をとる。キーボードの音が多くなっているが、全体としてはラウドロックの激しさを備えている。ギターはメロディアスで、従来のメロディック・デスメタルを古い過去のジャンルにしてしまう威力がある。他のメロディック・デスメタルバンドを追い越し、別のレベルに達した。この変化はストラッピング・ヤング・ラッドのデヴィン・タウンゼンドがプロデューサーを務めたことが大きい。
2003年。前作よりもメロディーを強調。サビになると明瞭なメロディーのコーラスになる形が多くの曲で踏襲される。これでギターとボーカルを普通にすればハードロックになる。そうした曲の間にハードコアの要素が強い曲を挟む。「ディパーチャー・プラン」は初の本格的なミドルテンポで、絶叫やデス声のボーカルは出てこない。プロデューサーはデヴィン・タウンゼンドではなくバンドだが、サウンドは「ナチュラル・ボーン・ケイオス」を継承している。
2003年。デビュー盤と企画盤の2枚組。
2005年。ドラムが交代。前作と同路線。サビの部分が一層メロディアス。滑らかに音階を移動するシンセサイザーが2000年代的なサウンドを担い、ギターが明滅的で矩形波的な従来型のロックのサウンドを担う。ソイルワークの個性はこれまでのヘビーメタルと明確に異なるシンセサイザーの使い方にある。ヘビーメタル、ハードロックのレーベルよりも、もっと広い層にアピールできるレーベルに移った方がよいのではないか。
2007年。ギターの1人が交代。厚いサウンドのヘビーメタルとしては代表的なバンドの地位を築いた。ボーカルやギターは破壊力を持っているが、曲は最初から最後まで突進するわけではない。攻撃的ではない部分を作ったことによって曲にメリハリが出てきている。「ザ・ピッツバーグ・シンドローム」はハード。11曲のうち4分を超えるのは3曲だけ。ハードさによる聞き手の緊張感が3分台で終わるので、だれずに余韻が残る。シンセサイザーは「ア・プレデターズ・ポートレイト」以前の使い方に近く、背景音中心になった。
2010年。ギター2人とも交代し、1人は前作で脱退したメンバーが復帰している。「スウォーン・トゥ・ア・グレイト・ディヴァイン」のようなハードコア強調の路線。オープニング曲の「レイト・フォー・ザ・キル、アーリー・フォー・ザ・スローター」はスレイヤーのような曲だ。10曲のうち6曲目まではハードで高速の曲が多く、7曲目以降は構成を考えた曲が多い。曲によってはアコースティックギターなどの部分をつけ加えている。4分以下の曲が1曲だけとなり、ハードに突進する以上の編曲能力が出ている。ストラッピング・ヤング・ラッドや最近のイン・フレイムスのようなサウンドには、新しいジャンル名をつける必要があるが、適切な名前はまだないようだ。
2013年。2枚組。ギターが1人交代。古風なサウンドとなり、ギター2人によるヘビーメタルに若干のキーボードが加わる。「アンチドーツ・イン・パッシング」はキーボードがメロディーを主導する。ドラムが高速で進みながらボーカルが一般的なロックのメロディーを歌うのは、20年前のドイツのヘビーメタルと同じだ。バンドサウンドのハードさを緩めればアモルフィスやオーペスに近くなる。2枚組にしたことの大きな意味は特になく、曲を絞らなかっただけのようだ。20曲で85分。
2014年。EP盤。5曲収録。
2015年。ライブ盤。
2015年。ボーカルがメロディアスになり、演奏はハードになっている。メロディーのついたボーカルとハードな演奏が曲の中で両立しているのは「ナチュラル・ボーン・ケイオス」から「スタッビング・ザ・ドラマ」までのアルバムに近く、このアルバムでは演奏面をよりハードにしている。アモルフィスやオーペスを、轟音にしたようなサウンド。全体としては他のヘビーメタルのバンドと同じように、音の出し方や音階の遷移は矩形的であり、従来の音楽的ルールの中で運用されている。楽器の使い方も同様だ。したがって、ハードさもヘビーメタルの範囲で演奏している。ここにとどまっているうちは、音楽的発展も人気も限られる。次のアルバム以降はヘビーメタル的ハードさに依存しないサウンドが必要だ。
2019年。邦題「現実/ヴァルケヒエッテン」。ドラムが交代、ベースが抜け5人編成。オープニング曲がアルバムタイトル曲となっており、アルバム全体のイントロとなっている。明るさのない憂いのあるメロディーを維持しながら、咆哮型、デス声、高速リズム、高速なギターの刻みを織り交ぜる。ソイルワーク、アモルフィス、オーペスといったバンドのサウンドは成熟に近くなっているので、次作以降は何か新しい挑戦があってもよい。