2001年。カンサスのベース、ビリー・グリアーのバンド。ボーカルはビリー・グリアー、ギターはシティ・ボーイ、スティールハウス・レーンのマイク・スラマーが中心。「エブリ・タイム・イット・レインズ」と「ノー・マンズ・ランド」はギターがデキシー・ドレッグス、ディープ・パープルのスティーブ・モーズとリチャード・ウィリアムス、ドラムがフィル・イハート、キーボードがスティーブ・ウォルシュと、カンサスのメンバーで録音されている。「エブリ・タイム・イット・レインズ」はスティーブ・モーズとビリー・グリアー、「ノー・マンズ・ランド」はスティーブ・ウォルシュ、スティーブ・モーズ、フィル・イハートの作曲で、カンサスの曲をカンサスのメンバーが演奏している。他の曲はマイク・スラマーとビリー・グリアーの共作で、スティーブ・ウォルシュ、キーボードのデイビッド・マニオン、マーク・スピロが1曲ずつ。サウンドは80年代中期のハードロックに近く、大きくは売れないがヒット性の高い曲が多い。若さによる勢いというよりは、ベテランによる抑えどころを心得た曲だ。スティーブ・ウォルシュをマイルドにしたようなビリー・グリアーのボーカルがすばらしい。カンサスのギター、ケリー・リブグレンがカンサス脱退後に出した「アート・オブ・ザ・ステイト」にも似ている。
2004年。前作よりハードで、特にオープニング曲の「ザ・サン・ウィル・ライズ」はすばらしい。「ラン」はデフ・レパードの「シュガー・オン・ミー」を思い出す。コーラスが厚く、美しく録音されているのはプロデューサーがシティ・ボーイ出身のマイク・スラマーだからだろう。日本盤ボーナストラックの「ラブ・トレイン」はオージェイズのカバーではない。
2014年。カンサスのバイオリン奏者、デイヴィッド・ラグズデイルが参加し、メロディー楽器がギター、キーボード、バイオリンとなっている。ビリー・グリアーのボーカルはカンサスのスティーヴ・ウォルシュに似ており、バイオリンが使われていればカンサスに聞こえる。スティーヴ・ウォルシュがよく使っていたオルガンも多用される。カンサスと違うのはマイク・スラマーの嗜好でストリングス系のシンセサイザーが多いこと、コーラスが多いこと、リズムに若干のエレクトロニクスが聞こえることだ。全体としてメロディアスなハードロックで、それ以上の広がりを持たないサウンドだ。
1995年。カンサスのボーカル兼バイオリンのロビー・スタインハートと、ストームブリンガーのギター、リック・ムーンのバンド。ボーカルとドラムもストームブリンガーのメンバー。キーボードを含む6人編成。専任ボーカルはジェネシス、カンサス、イエス、ビートルズに、ドラムはラッシュのニール・パートとレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナム、バディ・リッチに影響を受けており、カンサスとよく似た嗜好を持つメンバーで編成されたようだ。オープニング曲のイントロはカンサスの「モノリスの謎」の「故郷への追想」と一部同じバイオリン・フレーズを使っている。7曲のうち6曲はリック・ムーン作曲、最後の1曲はキーボードと専任ボーカルの作曲で、全曲がストームブリンガーのメンバーによる作曲。したがって、カンサスの「ダウン・ザ・ロード」のようなハードなロックン・ロールはなく、メロディアスなハードロックがほとんど。わざわざこのアルバムを入手するような人にとっては意外なサウンドだと思われる。特に最後の曲はキーボード中心で、ロビー・スタインハートはボーカルもとらないので完全にアメリカン・プログレッシブ・ハードロックだ。
1999年。ロビー・スタインハートとリック・ムーン以外はメンバーが替わっている。作曲は全曲リック・ムーン。前作とは違い、ソウルやロックン・ロールを基本としたロック。ロック寄りのソウルと言っても違和感はあまりない。「エクスプレスウェイ・トゥ・ユア・ハート」はソウル・サバイバーズのカバー。ソウルなのでキーボードはオルガンの音、ホーン・セクションも入る。歴史的には有名な作曲チーム、ギャンブル&ハーフによる初のヒット曲で1967年に全米4位。「ライト・マイ・ファイア」はドアーズの「ハートに火をつけて」のカバーではない。レコーディング・メンバーが異なり、収録曲も違うボーナスCDがついている。「トゥー・ホット・トゥ・ハンドル」は唯一のロビー・スタインハート作曲作品。UFOの「燃えたぎるギター」やティナ・ターナーのカバーではない。「ロザリナ」のバイオリンのフレーズはチャイコフスキーの大序曲「1812年」のメロディーと同じ。