1983年。この年にメタリカが「キル・エム・オール」を出し、サンフランシスコを中心とするスラッシュメタルに先鞭をつける。翌年にヘアメタルの代表であるボン・ジョヴィがデビューしてビジュアル路線のハードロックが主流になっていく。サヴァタージはデビュー時も今も音は変わらないが、イギリスでは正統とされるヘビーメタルがアメリカでは傍流だった。アルバムタイトル曲は今でも名曲。
1984年。キーボードを導入しているが、とってつけたような使い方で必然性がない。そういうことは本質的なことではなく、アルバム自体は前作よりも向上している。
1985年。曲の幅に広がりが出てきた。「ハード・フォー・ラブ」「イン・ザ・ドリーム」はこれまでなかったような曲。このアルバムから「ザ・ウェイク・オブ・マゼラン」まで大手レコード会社のアトランティックから出た。
1986年。ベースが交代。バッドフィンガーの「デイ・アフター・デイ」、フリーの「ウィッシング・ウェル」のカバーが入っている。ほぼ全曲にキーボードを使っている。相対的にギター主導のヘビーメタルが減ったために、作風が変わったという印象を持たれるが、ポップ化とは無縁。ジャケットはユーライア・ヒープやプリティ・メイズも使っている米軍硫黄島上陸の戦時写真がモチーフ。
1987年。「プレリュード・トゥ・マッドネス」で、ホルストの組曲「惑星」の「火星」、グリーグの「山の魔王の宮殿にて」を使用している。他人が作った名曲をカバーするという点ではクラシックもロックも変わりはないが、クラシックだと悪いようには解釈されない傾向がある。アーティストによっては何度もクラシックのフレーズを使い、それがあたかも個性であるかのように言われる人がいるが、基本的に他人の名曲を拝借することは、創造の怠慢という意味でアーティストとして自殺行為と言うべきだ。キーボードの使用はほとんどなくなり、初期のサウンドに回帰した。歌詞、ジャケットがヨーロッパ志向を示し、アメリカの潮流と決別した点に意義がある。
1989年。ギター兼キーボードのメンバーが1人増え、5人編成になった。タイトル曲がヒット。ラジオで何度も流れるようになり、バンドの認知度が急激に上昇した。確かに「ガター・バレー」から「ホエン・ザ・クラウズ・アー・ゴーン」に至る流れは緊張感に満ちている。
1991年。ニューヨークの麻薬ディーラーを主人公にしたロック・オペラ。物語の筋書き上、後半は重苦しい曲が並ぶ。アルバム全体が一つの流れを持っているので、シングル・カットは向かない。ミートローフやピンク・フロイドのように、コンセプト的なテーマを持ちながらシングル・ヒットも出せればそれが一番いいのかもしれないが、バンドとプロデューサーのポール・オニールは、ポピュラリティーの獲得とは別方向の芸術的な完成度を優先するベクトルを持っているようだ。
1993年。ボーカルのジョン・オリヴァが脱退し、ザッカリー・スティーブンスが加入。ジョン・オリヴァはキーボードで参加している。耳あたりはよくなった。音は前作の路線を踏襲。
1994年。ギターのクリス・オリヴァが事故で亡くなり、テスタメントのアレックス・スコルニックが加入。「ナッシング・ゴーイング・オン」ではアレックス・スコルニックでないとできないような曲。技術があると表現力に幅が出る。前年に発表されたスティーブン・スピルバーグの映画「シンドラーのリスト」に触発されたのか、「チャンス」は杉原千畝について歌っている。コーラスの使い方は新機軸を打ち出し、曲の構成も練られている。
1995年。ギターとドラムが脱退。キーボード・プレイヤーとしてジョン・オリヴァが復帰し、ギターがアル・ピトレリとクリス・キャファリーの2人になって6人編成となった。1曲目はインストで始まる。マグナ・カルタ・レーベルのバンドのようだ。「モーツァルト・アンド・マッドネス」はモーツァルトの交響曲第25番、いわゆる「小ト短調」、それに続くアルバム・タイトル曲ではベートーベンの交響曲第9番の「歓喜の歌」を使用している。「ワン・チャイルド」ではすばらしいコーラス・ワーク。1990年のユーゴ内戦をテーマにしたロック・オペラ。傑作。
1995年。ライブ盤。日本のみの発売。
1996年。ライブ盤。
1997年。ベスト盤。
1998年。初めてバンド・ロゴが変わった。音がシンフォニックになっていく。ジェントル・ジャイアントのようなコーラスが随所に出てくるようになった。
1998年。ベスト盤。日本のみの発売。
1998年。ライブ盤。日本のみの発売。
2001年。ボーカルのザッカリー・スティーブンスとギターのアル・ピトレリが脱退、ジョン・オリヴァがボーカルになり、4人編成に戻った。前作に比べてさらに荘厳さが加わり、もはやドリーム・シアターと比肩しうるレベルまできているが、ドリーム・シアターとは異なるサウンドを保持しているところに存在価値がある。速さに頼らないのも好感が持てる。このアルバムで解散。