1979年。キーボードを含む5人編成。カナダ出身。シンセサイザーを中心とするサウンドで、リズムが軽い。オープニング曲のイントロはホット・バターの「ポップコーン」やクラフトワークのような弾むキーボードだ。コーラスは薄く、ボーカルもそれほど力強くないが、マグナムのボブ・カトレイに近いところがある。
1979年。キーボードが交代。曲にメリハリがつき、キーボードは一般的なアメリカン・プログレッシブ・ハードロックになっている。ポップな曲にしろプログレッシブ・ロックに近い曲にしろ、曲がメロディアス、ドラマチックになった。曲のよさは格段に向上している。
1980年。キーボードが交代。スティクスを技巧的にしたようなサウンドで、ボーカルはデニス・デヤングに似ている。オープニング曲は楽器のソロを聞かせる作り。曲は前作よりさらによくなった。
1981年。最後の曲は7分で、それ以外の曲は5分台以下。コンパクトになり、アダルト・オリエンテッド・ロックに近いハードロックになった。この年の前後はアメリカン・プログレッシブ・ハードロックのヒットが目立ち、アダルト・オリエンテッド・ロックも流行したので、このアルバムもヒット。全米29位。「オン・ザ・ルース」は26位、「ワインド・ヒム・アップ」は64位。
1981年。「ワールズ・アパート」のジャケット違い。
1982年。ライブ盤。「ア・ブリーフ・ケース」はドラム・ソロ。
1983年。メロディアスというよりはポップになった。エレキ・ドラムの使用頻度も高くなり、サウンドが軽くなっている。このアルバムを聞く限り、ハードロックでもアメリカン・プログレッシブ・ハードロックでもなく、一般的なロック。チャプター番号の付く曲が収録されない初めてのアルバムとなった。全米92位。「フライヤーの伝説」は79位。
1985年。前作の大幅なポップ化を踏襲しているが、曲のよさが加わった。ポップであっても曲がすばらしいとアルバムの質が上がる。名盤。「ミスビヘイビアー」はハードロックの名曲。全米87位。
1987年。ドラム、キーボードが抜け3人編成。「ヘッズ・オア・テイルズ」に近い作風。キーボードはバックで装飾として演奏され、メロディーを引っ張っていこうとするような演奏ではない。ギターの活躍があまりなく、バンドの体をなしていないことがサウンド上も明らか。
1989年。メンバーなドラムとキーボードがいないままだが、キーボードはボーカルとベースが弾いている。ギターがハードロック風によく弾くので、再び名作になっている。「ヘッズ・オア・テイルズ」以降はシンセ・ポップとハードロックが交互に出されている。これまでのサーガのアルバムで最もギターの量が多い。「ジャイアント」ではヘビーメタル並みのギターソロがある。
1993年。キーボードとドラムが加入し5人編成。サーガで初めてボーカルをメーンとしたサウンドになっている。ギターも前作ほどではないがハードロック並みの演奏をしている。ハードロックの中では個性が薄い。
1994年。女声ボーカルも入る完全なアダルト・オリエンテッド・ロック。ボーカルのソロ・アルバムかと思うほどだ。「プッシュ・イット」は日本盤未収録。ロック寄りの曲。
1994年。「スティール・アンブレラズ」のジャケット違い。日本盤は収録曲も1曲違う。
1994年。ベスト盤。
1995年。ニール・ハウとウィリアム・ストラウスの、いわゆるジェネレーションXについて書かれた本をもとにしたコンセプト盤。この2人は世代論についてアメリカを主導する人の1人で、この本は70年代から80年代の不況時代に青年期を過ごしたアメリカ人の心性について述べている。「ジェネレーション13」はジェネレーションXのことを指しており、13枚目のアルバムであることに掛けている。デビュー以来初めてオーケストラを本格的に使用し、パイプオルガンも使っている。インストも含め、25曲で68分はこれまでで最もボリュームが大きい。メンバーそれぞれに役割分担があり、オペラとも言える。物語性の強いハードロックのサウンドで、オーケストラが入るところはヨーロッパ的。今日的話題を物語の主題とするのはアメリカのアーティストの感性に近いだろう。
1997年。ハードロックの後にアダルト・オリエンテッド・ロックのような作風になるのはこれまでと同じで、今回も緊張感の薄いポップス。ダンス音楽のような曲もあり、ポップなアルバムは回を重ねるごとにロックから遠く離れていく。「タックスマン」はビートルズのカバー。
1998年。ライブ盤。
1999年。ハードロック。デビュー盤から「ワールズ・アパート」まであった「第1章」から「第8章」までの表示が復活し、「第9章」「第10章」「第13章」が出ている。曲によってはギターがヘビーメタル、デスメタルのようなサウンド。
2001年。前作と同路線。ハードロックとして質が高い。ジャケットも前作を踏襲し、全盛期に入った。
2003年。多くの人が取っているであろう聞き方の態度、すなわち音楽に演奏者や作曲者の個性を強く求める聞き方をすれば、個性が薄いと言える。しかし、このメンバーでできうる音楽としては相当質のいい音楽を作っており、ハードロック全体からしてもいい出来だ。
2003年。1978年に録音された未発表曲。このアルバムをそのまま正規のアルバムとして発表しても十分名盤になるほどすばらしい。デビュー当時と今ではほとんどよさが変わらない。
2004年。ドラムが交代。「フル・サークル」以降にあったやや人工的なビートの曲がなくなり、完全なハードロックになった。ドラマチックさも加わり、ハードロック化以降では最高作。最後の「ドント・メイク・ア・サウンド」はすばらしい。ジャケットは前作と関連がなく、シリーズが再開されていた章立ての曲もないが、サウンドは明らかに前作を受け継ぎ、内容もすばらしい。
2005年。ライブ盤。2枚組。デビュー以来アルバムに随時収録してきたチャプター番号付きの曲を、1から16まで順番に演奏したライブ。1から8までは1979年から81年までに発表、9から16までは99年から2003年までに発表されている。8まで収録された1枚目は80年前後、9以降を収録した2枚目は2000年前後の作曲で、20年の違いを感じることもできる。物語の概略はベースのジム・クリフトンがブックレットに載せており、
2006年。ドラムが交代。キーボードが主導する80年代型ハードロック。80年代にハードロックを聞いていた人向けの安心感のあるロックだ。ギターソロもあり、ボーカルは一般的な歌い方をする。2000年以降では最大のヒットとなっているが、それはよく言えば期待通りであり、音楽的変化や新しい試みのないサウンドだったからとも言える。
2007年。前作ほどメロディーがポップではなく、ミドルテンポに曲も多いため、ロックとしての躍動感は得られない。全曲をバンドが作曲したことになっているが、ギターやキーボード奏者が芸術志向を出し過ぎたことが要因ではないか。「コークンテリス」はインスト曲で、カナダの地名もしくは造語とみられる。ボーカルのマイケル・サドラーはこのアルバムで脱退することを事前に公表していた。
2009年。ボーカルがファイナル・フロンティアのロブ・モラッティに交代。ファイナル・フロンティアはロブ・モラッティの音域の広さ、つまり高音を生かした高揚感のある曲で人気を得た。ボーカルの交代はバンドにとって大きくステップするチャンスであったが、このアルバムでサーガはチャンスを生かせなかった。バンドが前任のボーカルのイメージのまま作曲し、ロブ・モラッティに合った曲を用意できなかったからだ。ボーカルに付け加えたコーラスには高い音域が含まれるが、メーンボーカルのメロディーは中音域が多い。聞き手はボーカルが交代したことの効果を見いだせず、長年聞き慣れたボーカルからの違和感だけが残る。オープニング曲からバンドアンサンブルを重視したかのような曲で、ボーカルを生かした曲が出てくるのは「アヴァロン」から。サーガのファンの多くはキーボード奏者やギターに演奏技術を求めていないのではないか。このアルバムのみで交代となったロブ・モラッティには気の毒だった。
2012年。ボーカルにマイケル・サドラーが復帰。「トラスト」以前のハードロックに戻り、ギターやキーボードがきらびやかだ。全曲をバンドとして作曲していることになっているが、メロディーもバンドアンサンブルもマイケル・サドラーが主導しているのではないか。ボーカルの表現力、コーラスの付け方、キーボードの音の選び方などがうまく絡み合っている。ギターが活躍して、ハードロックのハードさを失っていないところもよい。
2014年。ドラムが交代。ギターが前面で出て、キーボードが後退した。ボーカルのメロディーは抑揚が少なく、オルタナティブロックの影響を受けたハードロックを20年遅れで聞いているようだ。2000年以降はハードロックで統一しているアルバムと、別のサウンドを志向したアルバムが明確に分かれる。今回はギターが主導した挑戦的なアルバム。「ゴー・ウィズ・ザ・フロウ」「オン・マイ・ウェイ」は前作の路線。ライブ盤もついている。