1984年。ランDMCはランとDMCのMC2人、DJのジャム・マスター・ジェイによるヒップホップ・グループ。ヒップホップの知名度を大きく引き上げた重要なグループ。「ロック・ボックス」以外は、ドラム(リズムマシーン)のみ、もしくは打楽器的に使われるキーボードとリズムだけで曲を構成し。ラップが乗っていく。「ロック・ボックス」だけは流麗なエレキギターが終始使われ、ロックにラップをかぶせたような曲だ。ギターを弾いているのはブロンディのバック・ミュージシャンだという。「イッツ・ライク・ダット」「サッカー・M.C.'S」収録。
1985年。ほとんどの曲にメロディーと呼べる演奏がつき、前作より覚えやすくなった。「ルーツ・ラップ・レゲエ」はもちろんボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの「ルーツ・ロック・レゲエ」を意識したタイトルで、サビの部分ではリズムがレゲエになる。歌詞の中には「酒は飲まない、コカインは吸わない、レゲエは不思議な音楽じゃない、コカインは脳を傷めるよ」というフレーズがあり、今では考えられない啓蒙的な詞だ。
1986年。エアロスミスのスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーが参加した「ウォーク・ディス・ウェイ」がヒットし、一般のロックファンにも認知されたアルバム。前作からさらにロック度が増し、リズム・マシーンよりもドラムとギターの量が多い。「イッツ・トリッキー」はザ・ナックの「マイ・シャローナ」を引用。「レイジング・ヘル」はプロデューサーのリック・ルービンがギターを弾いている。「マイ・アディダス」はファッション・ブランドのアディダスを歌っており、この曲によってアディダスはランDMCと広告契約することになった。音楽アーティストとファッション・ブランドが提携するのはランDMCが先駆け。
1988年。これまでより迫力のある歌い方で、サウンド全体がパワフルになっている。アフリカ系アメリカ人によるハードロックがヒップホップだという指摘はそれほど間違っているとも思わない。日本盤の帯に書かれているジャンル名はロックになっている。「パパ・クレイジー」はピアノとサックスのソロが入る。
1990年。ラップのバックには何らかの音が響いているサウンドとなり、全体的ににぎやかだ。このころヒップホップのアーティストが急激に増え、サウンドが多彩になっている。アーティストの個性も重視されるようになり、ハードコア・ヒップホップが流行するようになった。そうした状況の変化で、ラン・DMCの唯一性が相対的に下がったように感じる。「ワッツ・イット・オール・アバウト」はストーン・ローゼズの「フールズ・ゴールド」をサンプリングしている。16曲で54分とCDサイズになった。
1991年。ベスト盤。
1993年。15曲のうち11曲はジャーメイン・デュプリやQ・ティップ、EMPD、ボム・スクワッドなど有名プロデューサーが制作にかかわっている。アディダスのジャージをやめ、黒ずくめのジャケット、ブーツで硬派のイメージを出しているが、ランDMCのアルバムの中では印象が薄くなっている。
2001年。アルバムタイトル曲の「クラウン・ロイヤル」以外全曲にゲスト・アーティストが参加している。オープニング曲の「イッツ・オーヴァー」は映画「ゴッドファーザー3」の教会音楽を使用している。「クラウン・ロイヤル」は映画「エクソダス」のメーン・テーマを引用。「デム・ガール」はリンプビズキットのフレッド・ダーストが参加し、タイトルを何度も繰り返す覚えやすい曲。ラウドロックを取り入れた曲がアルバムの中盤に集まっている。「テイク・ザ・マネー・アンド・ラン」はスティーヴ・ミラー・バンドの「フライ・ライク・アン・イーグル」を引用。
2002年。
2002年。ベスト盤。