THE RED HOT CHILI PEPPERS

ファンクを取り入れたミクスチャーロックの代表的バンド。アメリカ出身。全盛時のメンバーはアンソニー・キーディス(ボーカル)、ジョン・フルシアンテ(ギター)、フリー(ベース)、チャド・スミス(ドラム)。「母乳」でメジャーデビューし、次作の「ブラッド・シュガー・セックス・マジック」で大きく飛躍した。ギターのジョン・フルシアンテが一時脱退したが、復帰作の「カリフォルニケイション」がヒットして世界的なバンドになった。代表曲は「ギヴ・イット・アウェイ」「バイ・ザ・ウェイ」「カリフォルニケイション」など。ジョン・フルシアンテはソロアルバム多数。

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THE RED HOT CHILI PEPPERS

1984年。4人編成。アメリカ・カリフォルニア出身。ファンク、ソウルを中心にロックの編成で演奏し、ボーカルはラップを大きく取り入れている。ビースティー・ボーイズのデビューが1986年であることを考えると、ラップの導入はとても早い。パンクを通過した白人によるファンク・ロック。ベースが活躍する。「ホワイ・ドント・ユー・ラヴ・ミー」はハンク・ウィリアムズのカバー。

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FREAKY STYLEY

1985年。ギターが交代。ジョージ・クリントンがプロデューサーとなり、ホーン・セクション、キーボード、コーラスが入った。サウンドはファンク・ロック。しかし、そのこと自体に新しさはなく、バンドの個性は確立されていない。「ハリウッド」はミーターズ、「イフ・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ステイ」はスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「一緒にいたいなら」のカバー。

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THE UPLIFT MOFO PARTY PLAN

1987年。ベースとホーン・セクションがバンド・サウンドの中核であった前作とは異なり、メロディー楽器がギターとなった。したがって、ファンクよりもロックの要素が強くなり、ここで後のバンドの個性が決定された。「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」はボブ・ディランのカバー。全米148位。

 
THE ABBEY ROAD E.P.

1988年。1曲目の「ファイア」はジミ・ヘンドリクスのカバーで、「母乳」収録曲。あとの4曲はデビュー盤から「ジ・アップリフト・モフォ・パーティ・プラン」までの曲。ジャケットはビートルズの「アビー・ロード」のパロディ。日本盤は1994年発売。

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MOTHER'S MILK

1989年。邦題「母乳」。ギターが死亡し、ドラムが交代。ジョン・フルシアンテがギターで加入。太いギターの音とハードな演奏でロックの度合いが増し、一般性を獲得した。「ノーバディ・ウィアード・ライク・ミー」「ノック・ミー・ダウン」はメロトロンが使われているようなサウンドがあるが、ブックレットに表記なし。日本では、このアルバムがヒットして現在の人気を確立している。アメリカでは次作で人気獲得。「パンク・ロック・クラシック」のエンディングはガンズ・アンド・ローゼズの「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」のフレーズを演奏している。「ハイヤー・グラウンド」はスティービー・ワンダー、「ファイア」はジミ・ヘンドリクスのカバー。全米52位。

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BLOOD SUGAR SEX MAGIC

1991年。当時の日本で言うクロスオーバー、アメリカで言うミクスチャー・ロックの先駆的なアルバム。オープニング曲はラップで歌われる。白人のロック・バンドによるラップは、ビースティー・ボーイズ、アンスラックスを経てレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、フェイス・ノー・モアで一般化した。2年後にデビューするレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがヒットしたのは、アメリカで多数を占める白人のロック・ファンに、ラップへの抵抗がなくなっていたからである。ミクスチャー・ロック、ラウド・ロックへの影響は大きい。スピーディーな曲はなく、ニルヴァーナの「ネヴァーマインド」と同様にハードロック・ヘビーメタル時代の終焉を感じさせる。「サー・サイコ・セクシー」は8分もあり、最後はメロトロンまで出てくるのでプログレッシブ・ロックとのかかわりを探そうとしてしまう。「ギヴ・イット・アウェイ」収録。未発表曲集との2枚組もある。全米3位、700万枚。

 
GIVE IT AWAY

1992年。シングル盤。6曲のうち4曲は「ギヴ・イット・アウェイ」で、アルバム・バージョン、シングル・ミックス、12インチ・ミックス、ラスタ・ミックスを収録。故人でレゲエの大御所、ボブ・マーリーを称える曲なのでラスタ・ミックスが収録されている。「サーチ&デストロイ」「ソウル・トゥ・スクイーズ」はアルバム未収録曲。

 
SOUL TO SQUEEZE

1994年。シングル盤。7曲入り。「イフ・ユー・ハフ・トゥ・アスク」は4バージョン収録。「ノーバディ・ウィアード・ライク・ミー」はライブ、「ギヴ・イット・アウェイ」はエディット・バージョン。

 
OUT IN L.A.

1994年。「母乳」までのアルバムから、バージョン違い4曲、ライブ3曲、デモバージョン6曲、未発表曲6曲を収録した企画盤。未発表曲はお遊びの曲が多い。

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ONE HOT MINUTE

1995年。ジョン・フルシアンテが抜け、ジェーンズ・アディクションのデイヴ・ナヴァロが加入。前作と同様にミドルテンポが多い。通常のロックのようなディストーションがかかったギターが減り、ボーカルも声を張り上げて歌うよりは、シンガーソング・ライターのように内省的である。暗さや無気力感、諦観など、時代の雰囲気を反映した曲が多い。「レッチリの電撃ワープ」収録。全米4位、200万枚。

 
WARPED/MY FRIENDS

1995年。邦題「レッチリの電撃ワープ/マイ・フレンズ」。シングル盤。3曲ともアルバム収録曲。

AEROPLANE

1996年。シングル盤。

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CALIFORNICATION

1999年。ジョン・フルシアンテが復帰。「ゲット・オン・トップ」「セイヴィアー」「ライト・オン・タイム」はミクスチャー・ロックと呼べるが、他の12曲はボーカルやメロディーを聞かせる曲になっており、「ワン・ホット・ミニット」のような雰囲気がある。シングルになった5曲はいずれもメロディアスなロック。「ブラッド・シュガー・セックス・マジック」と「ワン・ホット・ミニット」はアナログ盤LPで2枚分の分量があったが、今回は60分以内に収まっている。ジャケットの色のコントラストが強力だ。全米3位、400万枚。

 
SCAR TISSUE

1999年。シングル盤。「インストルメンタル#1」はアルバム未収録。インスト。

 
AROUND THE WORLD

1999年。シングル盤。アルバム未収録曲3曲収録。

 
OTHERSIDE

1999年。シングル盤。アルバム未収録曲3曲収録。4曲ともいい曲。

 
CALIFORNICATION

2000年。シングル盤。ライブ3曲収録。「エンド・オブ・ショウ・ブリスベン」と「エンド・オブ・ショウ・ステイト・カレッジ」は長く、8、9分ある。

ROAD TRIPPIN'

2000年。シングル盤。ライブ3曲収録。

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BY THE WAY

2002年。ファンク・ロックやラップが入る曲は皆無となり、メロディアスな曲が16曲並ぶ。オープニング曲でシングルにもなっているアルバム・タイトル曲が全体の雰囲気を象徴している。過去のアルバムに比べて最も落ち着いており、ストリングスやコーラスが目立って増えた。70年代の豪快なロックン・ロール、80年代のきらびやかなハードロックに代わり、90年代後半から2000年代の標準的なアメリカン・ロックを形成したアルバムのひとつといえる。「キャブロン」収録。

 
BY THE WAY

2002年。シングル盤。アルバム未収録曲3曲収録。「ティーンエイジャー・イン・ラブ」はディオン&ザ・ベルモンツのカバー。ドゥー・ワップ。

BY THE WAY

2002年。DVDシングル盤。「バイ・ザ・ウェイ」のビデオクリップと演奏ビデオ、14分弱の制作シーンを収録。DVD映像のみのシングル盤が日本盤で出るロックバンドは少ないだろう。

 
THE ZEPHYR SONG

2002年。邦題「ザ・ゼファー・ソングc/wボディ・オブ・ウォーター、サムワン」。シングル盤。アルバム未収録曲2曲収録。

 
THE ZEPHYR SONG

2002年。邦題「ザ・ゼファー・ソングc/wアウト・オブ・レンジ、リヴァーズ・オブ・アヴァロン」。シングル盤。アルバム未収録曲2曲収録。3曲ともすばらしい。

 
CAN'T STOP

2003年。シングル盤。「イフ・ユー・ハフ・トゥ・アスク」「クライストチャーチ・ファイアワークス・ミュージック」のライブ収録。

 
CAN'T STOP

2003年。シングル盤。「ライト・オン・タイム」「ナッシング・トゥ・ルーズ」のライブ収録。「ナッシング・トゥ・ルーズ」は13分。

GREATEST HITS

2003年。新曲2曲を収録。

 
FORTUNE FADED

2003年。シングル盤。アルバム未収録曲の「エスキモー」「バンカー・ヒル」もいい曲。

 
LIVE IN HYDE PARK

2004年。ライブ盤。2枚組26曲(イントロとドラムソロを除くと24曲)で123分。新曲が2曲あり、「レヴァレイジ・オブ・スペース」はフリーのベースが活躍するかっこいい曲。演奏でもなくMCでもない歓声だけの部分もそのまま収録してある。「アイ・フィール・ラヴ」はドナ・サマー、「ブランディ」はルッキング・グラスのカバーで、いずれも70年代後半のヒット曲。2枚目の最後に「ギヴ・イット・アウェイ」が入っており、ジョン・フルシアンテのギターソロを含めて13分ある。

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STADIUM ARCADIUM

2006年。2枚組で、それぞれ「ジュピター」「マーズ」と名付けている。何らかのテーマを持たせたり、サウンドを変えたりはしていない。「バイ・ザ・ウェイ」の路線で、「テル・ミー・ベイビー」「ストーム・イン・ア・ティーカップ」などの跳ねるようなボーカルがファンクやラップの復活を思わせる。サビのメロディーは覚えやすい。抑え気味のサウンドが年を経たかっこよさにつながっている。「ダニー・カリフォルニア」「スノー((ヘイ・オー))」「ハンプ・デ・バンプ」「トーチャー・ミー」「ストリップ・マイ・マインド」「エスペシャリー・イン・ミシガン」「デセクレイション・スマイル」「ソー・マッチ・アイ」収録。

 
DANI CALIFORNIA

2006年。シングル盤。アルバム未収録曲2曲収録。

 
TELL ME BABY

2006年。シングル盤。アルバム未収録曲は「ステイディアム・アーケイディアム」収録曲に近い雰囲気。ライブはギターを中心とするインスト。

 
SNOW((HEY OH))

2006年。シングル盤。邦題は「スノー」。アルバムでの邦題は「スノー((ヘイ・オー))」なのでシングルでは省略されている。アルバム未収録曲2曲収録。「ファニー・フェイス」はレゲエ調。

 
AROUND THE WORLD

2010年。シングル盤。収録曲は99年に発売されたシングル盤と同じ。ジャケットはやや異なる。

 
THE ADVENTURES OF RAIN DANCE MAGGIE

2011年。シングル盤。

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I'M WITH YOU

2011年。ギターが交代。サウンドが変わることはなく、ベースがメロディー楽器とリズム楽器を同時にこなす。ギターは個性をあまり出していない。サビに至るまでのサウンドは跳ねるようなリズムで、サビに入るとメロディーが前面に出てくる。「カリフォルニケイション」以降の安定した路線を踏襲している。

 
MONARCHY OF ROSES

2011年。シングル盤。アルバムと同じ曲を1曲収録。

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THE GETAWAY

2016年。バンドアンサンブルらしさを十分に感じさせながら、スタジオ録音らしい編集も加えている。アンソニー・キーディスのバウンドした歌い方と、ギターより目立つフリーのベースが、メロディアスなオルタナティブロックと組み合わさることで、ファンクとオルタナティブロック両方のよさを抽出している。曲のイントロはギター、ベース、ドラムによる切れ味のよい明滅が何度も使われ、これがバンドサウンドらしさを強調する。「ゴー・ロボット」はシンセサイザーをうまく利用。「シック・ラヴ」はエルトン・ジョンとバーニー・トーピンが作曲に参加し、エルトン・ジョンはピアノも弾いている。「ザ・ハンター」はフリーがピアノを弾き、コーラスと弦楽四重奏が加わる。最後の「ドリームス・オブ・サムライ」はコーラス隊が参加する6分超のサイケデリックな曲。このアルバムは「母乳」以来前作までプロデューサーだったリック・ルービンが参加せず、デンジャー・マウスがプロデュースしている。この点はサウンドを大きく変えるタイミングでもあったが、比較的おとなしい変化、というよりもデンジャー・マウスが遠慮しすぎの感がある。

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UNLIMITED LOVE

2022年。ギターにジョン・フルシアンテが復帰。リック・ルービンもプロデューサーに復帰している。オープニング曲の「ブラック・サマー」は「カリフォルニケイション」の雰囲気。その後は何らかの特徴を持つ曲が続いていく。前作のエルトン・ジョンとのような共作はなく、「ザ・ハンター」のような凝った曲もなく、リック・ルービンとバンドとで制作することでいったん元に戻したかのような作風だ。17曲で73分、日本盤はボーナストラックを含めると18曲で76分ある。「ゼア・アー・ザ・ウェイズ」収録。「アクアティック・マウス・ダンス」はダンスホール風のホーンセクションが入る。ボーナストラックの「ナーヴ・フリップ」は90年代後半のヘビーロック風。

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RETURN OF THE DREAM CANTEEN

2022年。「アンリミテッド・ラヴ」と同時期に録音された曲を収録。「アンリミテッド・ラヴ」に比べ、ジョン・フルシアンテの活躍が目立つ。「エディ」はエディ・ヴァン・ヘイレンのことを歌っている。曲の後半はジョン・フルシアンテがギターを弾きまくるが、エディ・ヴァン・ヘイレンとは異なり、自由で隔絶した非音階的な弾き方をしている。「アフターライフ」「カッパーベリー」も同様。随所にキーボード、シンセサイザーが使われており、基本的なバンド演奏の一体性を損なわない形で挿入される。これらが曲の変化を生み、曲が多くてもアルバムの質を高く維持している。ジョン・フルシアンテが復帰したことの効果は、「アンリミテッド・ラヴ」よりもこのアルバムの方が高い。「ティパ・マイ・タング」「ザ・ドラマー」収録。