1975年。邦題「銀嶺の覇者」。ロニー・ジェイムス・ディオがボーカルをやっていたバンド、エルフに、ギターのリッチー・ブラックモアが加わった。ロニー・ジェイムス・ディオの歌唱力以外は特に注目すべき演奏はない。「黒い羊」はクオターマスの、「スティル・アイム・サッド」はヤードバーズのカバー。「16世紀のグリーンスリーーヴス」はエレクトリック・ライト・オーケストラのチェロ奏者が参加。解散するまで、ディープ・パープルと比較にならないくらい売れなかった。「銀嶺の覇者」収録。全米30位、全英11位。
1976年。邦題「虹を翔る覇者」。ボーカルとギター以外のメンバーを入れ替えた。ドラムはコージー・パウエル。大幅にハードになった。音も派手だ。内容も充実していると言えるが、イギリスや日本では売れたものの、アメリカでは前作より売れなかった。「スターゲイザー」「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」収録。全米48位、全英11位。
1977年。ライブ盤。「キル・ザ・キング」はこのライブ盤が初出。「ミストリーテッド」はディープ・パープル時代の曲。「スティル・アイム・サッド」はドラム・ソロなし。全米65位、全英7位。
1978年。邦題「バビロンの城門」。ベースとキーボードが交代。キーボードはデイビッド・ストーン。「ロング・リヴ・ロックン・ロール」で始まり「バビロンの城門」でA面が終わる。B面はライブ盤の1曲目だった「キル・ザ・キング」のスタジオ・バージョンで始まる。どの曲にしろそれぞれのプレイが大げさに聞こえるが、英でパンク、米でディスコが流行し、この時代に伝統的なハードロックをやるバンドは少なかった。特にイギリスではパンクが流行し、ハードロックの状況は芳しくなかった。人気の点でもUFOには勝っていたがシン・リジーには負けており、バンドの居場所が中途半端だった。全米89位、全英7位。
1979年。ボーカルがグラハム・ボネットに交代。ベースもロジャー・グローバーに、キーボードもドン・エイリーに交代。A面、B面の冒頭はポップなロックだが「アイズ・オブ・ザ・ワールド」や「ロスト・イン・ハリウッド」はハード。グラハム・ボネットはロニー・ジェイムス・ディオとは違う領域ですばらしいボーカルだ。作品の充実度は屈指。イギリスでは最も長期にわたってヒットした。「アイズ・オブ・ザ・ワールド」の冒頭はホルストの惑星から「火星」を使用。全米66位、全英6位。
1980年。邦題「治療不可」。ボーカルがジョー・リン・ターナーに交代、ドラムもコージー・パウエルが脱退している。ジョー・リン・ターナーはフォリナーのルー・グラムやカンサスのスティーブ・ウォルシュのような大陸的響きがある。イギリスではこれが最大のヒット。シングルも「アイ・サレンダー」がヒットしたが、これはアージェントのラス・バラッド作曲。アルバム・タイトル曲はベートーベンの交響曲第9番「合唱付き」の「歓喜の歌」を使用。全米50位、全英3位。
1982年。邦題「闇からの一撃」。キーボードはデイブ・ローゼンサル。アメリカでは「ストーン・コールド」がバンド史上最高の40位で、アルバムも最大のヒットとなった。サウンド指向は完全にアメリカだが、「デス・アリー・ダイバー」や「アイズ・オブ・ファイアー」はイギリスや日本で評価が高かった。全編にわたってギター・ソロにリッチー・ブラックモア特有の臭さが漂う。全米30位、全英5位。
1983年。邦題「ストリート・オブ・ドリームス」。ドラムがチャック・バーギに交代。アメリカ指向ポップ路線はこれが最高作。特にキーボードのデイブ・ローゼンサルとドラムのチャック・バーギの貢献度は大きい。端的に言えば、これまでのキーボードとドラムはプレイで主張しすぎだった。それはアーティストの個性の強さからくるので、主張しすぎることが一概に悪いということではない。しかし、もはやこの時代のレインボウは、個性のぶつかり合いによる緊張感よりも、曲そのもののメロディーやポップスとしての調和をメーンに据えているため、職人気質のプレイヤーの方が高い評価になる。日本盤タイトル曲と、イントロのオルガンが印象的な「キャント・レット・ユー・ゴー」が人気。「デスペレート・ハート」収録。全米34位、全英11位。
1984年。78年から84年までのライブと、シングルB面曲や未発表のスタジオ録音を含むベスト盤的作品。発売時期によって収録曲数が違う。全米87位、全英31位。
1990年。ライブ盤。「スティル・アイム・サッド」の途中にコージー・パウエルのドラム・ソロが入っていることが売り。
1995年。邦題「孤高のストレンジャー」。以前のバンドとメンバーのつながりは一切なく、新バンドと言ってよい。ボーカルのドゥギー・ホワイトはジョー・リン・ターナー・タイプ。解散から10年以上経っても、他人の有名曲を一部だけ頂くという癖は消えることがない。今回はグリーグの「山の魔王の宮殿にて」を使用。ヤードバーズの「スティル・アイム・サッド」もまたやっている。過去のスタジオ盤はイギリスで全作品が11位以内のヒットを記録しているが、このアルバムは英米ともにチャートに入った形跡はなく、レインボウは完全に過去のバンドとなった。「力強い」という評価が一般的だが、ロックが力強いのは当たり前で、それ以上の何かを見いだしにくい作品だ。