RÄFVEN

  • レーヴェンは2009年のフジロックフェスティバルで注目されるようになったスウェーデンの民謡バンド。8人編成。
  • アイルランドとは接点がないのでバグパイプやイーリアンパイプは使わず、アコーディオン、バイオリン、サックス、トロンボーンがメロディーを担う。
  • 中東欧のクレズマー音楽、フィンランドやロシアのスラブ系音楽、北欧に渡ったポルカなどを基盤とし、性急なダンス音楽や陽気な曲、情緒的な曲をインストで演奏する。スタジオ録音は民謡の再現演奏ではなく、メンバーによるオリジナル曲を演奏する。

LIVE!

2007年。ライブ盤。フィンランドのイエテボリでのライブ。12曲のうち7曲は民謡、5曲はメンバーの作曲。民謡はフィンランドの伝統音楽であるフンパを基本としており、もともとテンポの速いダンス音楽なので、演奏すると観客の反応がいい。メンバーが作った曲はフンパやポルカではないことが多く、テンポも緩やかだ。12曲収録。日本では「ネクスト・タイム・ウィ・テイク・ユア・インストゥルメンツ」との2枚組で2009年に発売。

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NEXT TIME WE TAKE YOUR INSTRUMENTS!

2008年。13曲全てをメンバーが作曲している。アコーディオンやバイオリンがあれば東欧の民謡風に聞こえるのは、その組み合わせがジプシー音楽を強く喚起させるからだろう。メロディーには「ポーリシュカ・ポーレ」のようなロシア民謡やユダヤ民謡も含まれている。クレズマー音楽に特有のクラリネットはサックスが代役をする。ライブ盤とは異なり、むしろゆっくりしたテンポが多い。「フランツ・マードラム」はシューベルトの「軍隊行進曲」を短く挟み込んでいる。ほとんどの曲がインスト曲。日本盤は2009年発売。

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WELCOME TO FOXSHIRE

2009年。邦題「ようこそ不思議なキツネの村へ」。仮想の村として「キツネの村」を設定し、アルバムの最初と最後に同一曲の国歌を入れている。間に挟まれた13曲のうち3曲は歌詞がある。「バーバ・ヤーガ」はムソルグスキーの「展覧会の絵」で有名な東欧の民話をもとにしており、歌詞も民話に沿っている。「ステラス・サング」は動物の鳴き声の模写が入る。このアルバムで日本デビュー。

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SVENSK KULTUR

2011年。邦題「スウェーデンの物語」。オープニング曲から連続3曲でアップテンポが続き、高揚感も続く。4曲目の「ブレヴォーム」からダンス向きのテンポとアップテンポの曲が交互に出てくる。ボーカルが付いた曲はなくなり、全てインスト曲になった。アルバムの後半はミドルテンポも出てくる。アルバムを重ね、これまでとは異なる方向の曲がほとんどないことに物足りなさを感じるが、文化の多様性を示し、維持していくことが民族音楽系アーティストの主な使命であることを考えると、変わらないことを賞賛すべきか。ただ、多文化主義や文化相対主義は文化の現状保存や原点回帰を目指すことではなく、他の文化との対話と並立を重視するため、別のポピュラー音楽への接近はあってもいいだろう。

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BRING BACK THE DINOS

2015年。邦題「よみがえれ!キツネザウルス!」。スタジオ録音としては初めて明確な変化が現れ、民謡以外の要素が入ってきた。オープニング曲のイントロはポピュラー音楽に近い。ドラムのビートが強化され、ベースはエレキベースを使う。デス声のボーカルが入った「ベイラム」はレーヴェンの曲で最も大きな挑戦だろう。アンサンブルの整合感もポピュラー音楽に近くなり、「カラテクラッベン」は民謡由来ではないという印象を持つ。2曲目はイントロに男女の会話がつく。「バルチック・ビーチ」は男性のせりふ、10曲目は女性のせりふのサンプリングを使う。最後の曲も「カラテクラッベン」は空手クラブのことか。

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15

2018年。11曲のうち「ラ・ミネ・プロア・ク・パニ」「オイ!」はボーカルがあり、9曲はインスト曲。ダンスを想定していない曲もある。レーヴェンはスピーカーで聞くよりも、目の前の演奏を聞くべきバンドだろう。デジタル媒体を含め、録音して整えられた曲は、商品見本としてもあまり参考にならない。オープニング曲はロックバンドのようなイントロだ。「15」というタイトルは結成15年を表すという。