1973年。邦題「戦慄の王女」。4人編成。「炎のロックン・ロール」収録。親しみやすい音とは言えないが個性は強い。10曲のうち5曲はフレディー・マーキュリー、4曲はブライアン・メイが作曲は。「モダン・タイムス・ロックン・ロール」はドラムのロジャー・テイラーが作曲している。フレディー・マーキュリーの曲はやや長めでドラマチックだ。曲をひとつの物語として構成する力はこのアルバムからでもうかがい知れる。「サン・アンド・ドーター」はブラック・サバスの影響が感じられる。一部はギターのブライアン・メイがボーカルを取る。コーラスはまだ派手ではない。全米83位、全英24位。
1974年。1曲目から4曲目までブライアン・メイ作曲。5曲目ロジャー・テイラー作曲。ここまでA面。B面はフレディー・マーキュリー作曲。一般にA面はホワイト・サイド、B面はブラック・サイドと呼ばれる。B面の「オウガ・バトル」から「フェアリー・フェラーの神技」「ネバーモア」の流れは傑出との評価が多い。最後の「輝ける7つの海」は「戦慄の王女」に収録されていた曲にボーカルがついた3分弱の曲。全米49位、全英5位。
1974年。一般のロック・ファンにもアピールできる曲を揃えた。「キラー・クイーン」「ストーン・コールド・クレイジー」収録。オープニングの「ブライトン・ロック」もいい。ブライアン・メイが作曲しているためギターソロが目立つが、津軽じょんがらギターと呼ばれていることを知れば、確かにそう聞こえてくる。「ストーン・コールド・クレイジー」は4人で共作した初めての曲。「リロイ・ブラウン」についてはジム・クロウチの「リロイ・ブラウンは悪いやつ」も聞いた方がよい。全米12位、全英2位。「キラー・クイーン」は全米12位。
1975年。邦題「オペラ座の夜」。英国でヒットし、国民的バンドになっていく。「ボヘミアン・ラプソディー」が圧倒的に有名で、「マイ・ベスト・フレンド」もヒット曲として知られるが、「予言者の唄」も、曲の構成、メロディーともすばらしい。このアルバムが高い評価を受ける背景には、過去の音楽ジャンルへの敬意が感じられる曲が揃っていること、比較参照される過去の音楽作品としてビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が挙げられたこと、がある。ロイ・トーマス・ベイカーがプロデュースしたのはここまで。全米4位、全英1位。「ボヘミアン・ラプソディー」は全米9位、「マイ・ベスト・フレンド」は16位。「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」収録。
1976年。邦題「華麗なるレース」。「タイ・ユア・マザー・ダウン」「愛にすべてを」収録。ブライアン・メイは1人でツイン・リード・ギターをこなしている。ベースのジョン・ディーコンが作曲した「ユー・アンド・アイ」とドラムのロジャー・テイラーが作曲した「さまよい」はフレディー・マーキュリーの曲にあるような近寄りがたさがなく、楽に聞きやすい。「ホワイト・マン」は珍しく社会的な曲。「手をとりあって」は日本語で歌う部分があり、日本向け。ブライアン・メイが作曲している。前作を踏襲しているジャケットは4人の生まれた月の星座を合わせたもの。全米5位、全英1位。「愛にすべてを」は全米13位、「タイ・ユア・マザー・ダウン」は49位。
1977年。邦題「世界に捧ぐ」。オープニングから「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「伝説のチャンピオン」の連打。急激なサウンドの変化。前作まであった「ノー・シンセサイザーズ」というコメントはない。「ゲット・ダウン・メイク・ラヴ」にはシンセサイザーが使われているのだろう。メンバー4人がバンドとして演奏することにこだわりはないらしく、「秘めたる炎」はベース、ボーカルをドラムのロジャー・テイラーが担っている。フレディー・マーキュリーが歌わない曲が3曲ある。3分台が8曲あるなかで「イッツ・レイト」は6分半ある。全米3位、全英4位。「伝説のチャンピオン」は全米4位。全米74位。「永遠の翼」収録。
1978年。「ジャズ」というタイトルがついているが、音は完全にロック。ハードロックに近い。「バイシクル・レース」「ドント・ストップ・ミー・ナウ」収録。「ファン・イット」のドラムはエレキ・ドラムで、時代を考えるとディスコの影響を受けたとも考えられる。「モア・オブ・ザット・ジャズ」は途中でアルバム収録曲のダイジェストを挿入している。全米6位、全英2位。「バイシクル・レース」は全米24位、「ドント・ストップ・ミー・ナウ」は86位。
1979年。クイーン初のライブ盤。歓声が大きい。テンポが速いロック化した「ウィ・ウィル・ロック・ユー」で始まる。「デス・オン・トゥ・レッグス」のMCでビープ音が入る。12分ある「ブライトン・ロック」は10分近くがギターソロとドラムソロ。2枚目の「ウィ・ウィル・ロック・ユー」は通常バージョン。全米16位、全英3位。
1980年。バンドの中核をなす楽器がギターからベースに移っている。コンテンポラリーな音と従来の音が混在。「プレイ・ザ・ゲーム」のシンセサイザーはスティクスの「パラダイス・シアター」のような音。「自殺志願」はストラングラーズの「ピーチズ」を思い出す。「地獄へ道づれ」「愛という名の欲望」収録。全米1位、全英1位。「愛という名の欲望」は全米1位、「プレイ・ザ・ゲーム」は42位、「地獄へ道づれ」は1位、「夜の天使」は44位。
1980年。映画「フラッシュ・ゴードン」のテーマ。クイーンの作品として楽しめるような内容ではない。18曲のうちボーカルがあるのは最初の「フラッシュのテーマ」と「フラッシュ・トゥ・ザ・レスキュー」「デイルとミン皇帝の結婚」、最後の「ザ・ヒーロー」の4曲だけだ。全米23位、全英10位。「フラッシュのテーマ」は全米42位。
1981年。クイーン初のベスト盤。未発表音源はない。全米14位、全英1位。
1982年。メンバー全員がシンセサイザーを使っている。前作のエレクトロポップ路線をさらに進めており、楽器の中心はベースになっている。「ステイング・パワー」はホーンセクションとベース中心。バンドサウンドとなるのは「ライフ・イズ・リアル(レノンに捧ぐ)」やブライアン・メイが作曲した「ダンサー」「プット・アウト・ザ・ファイア」「ラス・パラブラス・デ・アモール(愛の言葉)」最後の「アンダー・プレッシャー」など。「アンダー・プレッシャー」はクイーンとデビッド・ボウイの共作かつ共演で、曲の出来は屈指だ。社会の空気を織り込んだ傑作とされている。全米22位、全英4位。「アンダー・プレッシャー」は全米29位、全英1位、「ボディ・ランゲージ」は11位、「コーリング・オール・ガールズ」は60位。
1984年。前作とは変わり、ロック色を取り戻した。シンセサイザーが抑制されているというよりは、バンドサウンドにうまく溶け込んでいる。ドラムのロジャー・テイラーによる「ラジオ・ガガ」は大ヒット。全米23位、全英2位。「ラジオ・ガガ」は全米16位、「ブレイク・フリー」は45位、「永遠の誓い」は72位。
1986年。ハードロック。かなりハードな曲もあって、ホット・スペースからの揺り戻しが大きく出た。エレキドラムが減り、フレディー・マーキュリーは朗々と歌う。オープニング曲の「One Vision・ひとつだけの世界」はAC/DCのような曲。「心の絆」「ギミ・ザ・プライズ」「プリンシス・オブ・ザ・ユニヴァース」はハードロックの歌い方だ。「喜びへの道」は「ホット・スペース」の路線。全米46位、全英1位。「One Vision・ひとつだけの世界」は全米61位、「カインド・オブ・マジック」は42位。
1986年。2枚目のライブ盤。代表曲の歓声が大きい。ヒット曲が多く、1枚では物足りないと感じさせるほどだ。ロジャー・テイラーがボーカルで貢献している。「ボヘミアン・ラプソディー」は途中のコーラスをカットしている。全英3位。
1989年。ロックとポップがちょうどいい具合に融合しているアルバムはこれが最後。「カインド・オブ・マジック」のハードロック路線を引き継ぎ、ロジャー・テイラーやジョン・ディーコンが作曲した曲でもギターソロがつく。全米24位、全英1位。「アイ・ウォント・イット・オール」は全米50位。
1991年。「イニュエンドウ」でイエスのギター、スティーブ・ハウが参加。明るい曲は少ない。重厚。何かにプレッシャーをかけられて曲を作ると、ポップで明るい曲は出てこないということを音で示すことになった。最後の「ショウ・マスト・ゴー・オンは神々しい。全米30位、全英1位。
1991年。「ホット・スペース」から「イニュエンドウ」までのベスト。「アイ・ウォント・イット・オール」は短縮されている。全米11位、全英1位。
1992年。全米4位、200万枚。
1992年。3枚目のライブ盤。全米53位、全英2位。「愛にすべてを」は全米30位。
1993年。ライブ盤。6曲収録。このうち5曲がライブ。「愛にすべてを」はワム!のジョージ・マイケルとクイーンが協演したフレディー・マーキュリーの追悼ライブを収録する。「キラー」「パパ・ウォズ・ア・ローリング・ストーン」はジョージ・マイケルが単独で歌い、「パパ・ウォズ・ア・ローリング・ストーン」のイントロからシールの「キラー」、テンプテーションズの「パパ・ウォズ・ア・ローリング・ストーン」に流れる。「輝ける日々」はジョージ・マイケルとリサ・スタンフィールドのデュエットによるクイーンのカバー。ホリー・コールの「コーリング・ユー」はジョージ・マイケルがソロで歌う。「ディア・フレンズ」はクイーンのスタジオ録音で、「シアー・ハート・アタック」収録曲と同じ。
1994年。邦題「女王凱旋!」。ライブ盤。1973年のライブ。イギリスのBBCでのスタジオライブなので、スタジオ録音に近い音響効果がある。デビュー盤から「ザ・ナイト・カムズ・ダウン」「ジーザス」を除く8曲を収録。
1995年。ボーカルのフレディー・マーキュリーは91年に亡くなるが、他界する直前に録音した5曲と、過去のシングルやソロ作品の再録音などで構成した最後のスタジオ盤。過去の曲の再録音では、フレディー・マーキュリーのボーカルを残し、バックの演奏を差し替えている。「アイ・ワズ・ボーン・トゥ・ラブ・ユー」もボーカルは84、85年頃の録音。サウンドは全体的にポップスで、「アイ・ワズ・ボーン・トゥ・ラブ・ユー」だけがハードなロックだ。「マザー・ラヴ」の最後はライブの掛け合いを入れている。「イッツ・ア・ビューティフル・デイ(リプライズ)」は最後に「輝ける7つの海」が挿入される。全米58位、全英1位。
2005年。シングル盤。「手をとりあって」はブライアン・メイがミックスを新たに行った新バージョン。
2005年。フリー、バッド・カンパニーのボーカル、ポール・ロジャースとクイーンのギターのブライアン・メイ、ドラムのロジャー・テイラーがクイーン+ポール・ロジャースとしてバンドを結成した。ベース、ギター、キーボードはゲスト・ミュージシャンが参加し、クイーンのベースのジョン・ディーコンは参加していない。ポール・ロジャースはクイーンがデビューする前からすでに優れたボーカルとの評価を得ており、安定した実力を発揮している。どこを聞いても声に力がある。「ボヘミアン・ラプソディ」は途中のコーラス部分をフレディー・マーキュリーが歌うスタジオ盤で流している。フリーの「オール・ライト・ナウ」「ウィッシング・ウェル」、バッド・カンパニーの「キャント・ゲット・イナフ」など、ポール・ロジャースのヒット曲も歌っている。実質的に25曲収録され、ヒット曲はおおむねある。選曲されていないのは「キラー・クイーン」「バイシクル・レース」「アイ・ワズ・ボーン・トゥ・ラブ・ユー」「ドント・ストップ・ミー・ナウ」「フラッシュのテーマ」「アンダー・プレッシャー」など。
1992年。邦題「バック・トゥ・ザ・ライト~光にむかって~」。ブライアン・メイのソロアルバム。ブライアン・メイはボーカルとギターを担当。クイーンからはベースのジョン・ディーコンが参加している。有名アーティストではベースにニール・マーレイ、ドラムにコージー・パウエル、キーボードにドン・エイリーが参加。ブライアン・メイのボーカルはそれほどうまくない。コーラスはつくがクイーンほどは凝らない。「華麗なる復活」はコージー・パウエルと共作しており、ドラムがギター以上に目立つ。「ドリヴィン・バイ・ユー」はスペンサー・デイヴィス・グループの「ギミ・サム・ラヴィン」を思わせる。「ローリン・オーヴァー」はスモール・フェイセズのカバーで、ボーカルはマンフレッド・マンズ・アース・バンドのクリス・トンプソン。
1993年。邦題「華麗なる復活」。ブライアン・メイの来日に合わせて発売された企画盤。2曲は「バック・トゥ・ザ・ライト~光にむかって~」収録曲、2曲はライブ・バージョン。このほか、「タイ・ユア・マザー・ダウン」はクイーンのカバーで、ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュが参加。コージー・パウエルが参加している曲は以上の5曲。最後の3曲はブライアン・メイが1983年にエドワード・ヴァン・ヘイレンらと録音した曲で、ロッド・スチュワートのベース、REOスピードワゴンのドラム、アリス・クーパーのキーボードが参加している。「ブルース・ブレーカー」は13分近くあるインストのブルース。
1998年。ブルース、1960年代のモッズ、クイーンのようなロックなど、ブライアン・メイの音楽的関心を反映している。「オン・マイ・ウェイ・アップ」は前作と同様、ブリティッシュ・ソウルの影響がある。後半にカバーを3曲固めている。このアルバムを録音途中にコージー・パウエルが死亡している。