1983年。ジャーヴィス・コッカーのほか、ギター、ベース、ドラム、キーボードの5人で録音。アコースティックギター、アコースティック楽器による演奏がほとんど。ジャーヴィス・コッカーは声が低く、40代や50代の雰囲気がある。「ラヴ・ラヴ」はクラリネットを使った古風なジャズ風の曲。
1987年。ジャーヴィス・コッカー以外のメンバーが全員入れ替わっている。副題が付いており、副題に沿った歌詞になっている。「フェアグラウンド」「ビーイング・フォロウド・ホーム」は演劇的な曲で、試行錯誤がうかがえる。ジャーヴィス・コッカーのボーカルはザ・スミスのモリッシーを思わせるが、モリッシーほど修辞的ではない。10曲のうち3曲は5分を超える。
1992年。オープニング曲の「ラヴ・イズ・ブラインド」はゲイリー・グリッターの「ロックンロール・パート2」風のリズムで、ジャーヴィス・コッカーの低音ボーカルとともにグラムロックの雰囲気を作る。キーボード、エレクトロニクス中心のサウンドになり、特にアルバムの後半はクラブミュージックのような曲が増える。「ドント・ユー・ウォント・ミー・エニーモア」ではギターのラッセル・シニアによるバイオリンも目立つ。「マイ・レジェンダリー・ガールフレンド」はイギリスのセカンド・サマー・オブ・ラブの影響を受けたような曲。日本盤は1995年発売。
1993年。邦題「ザ・ギフト」。シングル盤3枚の収録曲を1枚に集約。「スペース」は実験的な曲。「O.U.」「ベイビーズ」「ラズマタズ」はキーボードを主体とするポップなロック。「スタイロロック」は語り口調のボーカル。「インサイド・スーザン:ア・ストーリー・イン・3・パーツ」は3部構成で12分ある。80年代から92年までは時流に関係なく独自の音楽をやってきたかのようなサウンドだ。この企画盤で日本デビュー。
1994年。邦題「彼のモノ・彼女のモノ」。ギターとキーボードがバランスよく活躍し、曲が大幅にポップになった。ジャーヴィス・コッカーのボーカルの表現力とポップな曲がうまくかみ合っている。前作まではジャケットも曲も近寄りがたく、ヒットしないのは当然の感があった。このアルバムでメンバーの姿を前面に出し、「リップグロス」「初体験はどんな感じ?」といった身近な歌詞で若年層の関心を引き寄せる。「彼女は淑女」「デイヴィッドの夏の出来事」は曲が長く、前作までの演劇的な雰囲気を残す。
1995年。邦題「コモン・ピープル」。ギターが1人増え6人編成。ギターをメロディー楽器のメインとし、ストリングスとシンセサイザーで補完する。オープニング曲の「ミス・シェイプス」から快活だ。ギター、キーボードはリズムやテンポを刻むことが多く、それがロックらしさを強調している。「アイ・スパイ」「ディスコ2000」はストリングスが使われ、サウンドの幅が広がっている。イギリスではこのころブリット・ポップの全盛期で、オアシス、ブラー、スウェードとともに重要なバンド、アルバムとなっている。「ミス・シェイプス」はレディオヘッドの「クリープ」やベックの「ルーザー」と同じように、自分が人間的に「出来損ない」であることを認め、90年代以降の若年層の共感を得ている。邦題になっている「コモン・ピープル」は富裕層が一般大衆層の生活に興味を示すという歌詞で、イギリスの階級社会を反映した曲だ。イギリスではこの2曲の存在によって、オアシスの「オアシス」やブラーの「パークライフ」よりもアルバムの評価が高くなっている。
1996年。シングル盤。
1996年。シングル盤。
1996年。「イット」から「セパレーションズ」までのベスト盤。2枚組。20曲のうち12曲はアルバム収録曲、8曲はシングル盤収録曲。シングル盤収録曲は「セパレーションズ」のころまでに発表されたシングル盤なので、「ザ・ギフト」に収録されたシングル盤3枚とは異なる。
1998年。ギターのラッセル・シニアが抜け5人編成。全曲が5人の共作となっている。ミドルテンポの内省的な曲が中心となり、ギターのディストーションが大きくなった。キーボードやシンセサイザーで空間を埋めず、音の数を少なくしている。パルプはデビュー以来、アルバムの1曲目がアルバムの全体的な傾向を代弁しており、このアルバムも「フィアー」が鋭利なギター、暗めの曲調で聞き手を印象づける。アルバムタイトル曲もこの路線。イギリスでは90年代半ばから顕著になった陰鬱さ。アルバムの後半はざらついたギターを維持しながらも曲調はややロック寄りになる。「ヘルプ・ジ・エイジド」「ア・リトル・ソウル」収録。
2001年。演奏は前作を引き継いでいるものの、メロディーは前向きさが戻っている。「ウィーズ」「ウィーズII(種の起源)」は「コモン・ピープル」の「ミス・シェイプス」にあたる自己規定の曲で、ジャーヴィス・コッカーの知性が表れている。ただ、同様の曲が90年代前半からあることを考えれば、2001年にあらためて歌われても新鮮味に欠ける。「ミニー・ティンパリー」は豪快なギターだ。「ウィッカーマン」はジャーヴィス・コッカーによる故郷での追憶とともに、ビートルズの「ノルウェーの森」を思わせる諦観がある。この曲から「バッド・カヴァー・ヴァージョン」「サンライズ」に至る精神的回復の過程をアルバムで展開したのは高く評価されていいだろうが、注目されずに終わっている。このアルバムで解散。
2002年。ベスト盤。「ラスト・デイ・オブ・ザ・マイナーズ・ストライキ」は新曲。「ディス・イズ・ハードコア」の曲調。