POST MALONE

ポスト・マローンはヒップホップ、R&Bのアーティスト。1995年生まれ、アメリカ出身。

1
STONEY

2016年。ポスト・マローンはヒップホップのアーティストとしてラップもできるが、このアルバムでは全てのボーカル部分をR&Bのように歌う。ゲストにラップ歌手が参加した「コングラチュレーションズ」はヒップホップの雰囲気があるが、ラップは出てこない。基本的にエレクトロニクスで音を構成し、適宜ピアノやギターを使う。アップテンポの曲を入れずに奥行きの深い落ち着いた曲を並べている。「デジャ・ヴ」はジャスティン・ビーバーと共演。「ホワイト・アイバーソン」収録。

2
BEERBONGS&BENTLEYS

2018年。オープニング曲の「パラノイド」や「リッチ&サッド」の歌詞を見ると、急に有名アーティストになったことに対する過剰な自信ではなく、戸惑いや疎外感が感じられる。「ロックスター」は陰鬱な曲調で、メロディーも下降する。この曲でいうロックスターとは、不特定多数の若年層から支持を得る人物であり、それがロックではなくヒップホップであってもR&Bであっても、象徴的な呼び方として使われている。従って、ロックスターとはポスト・マローン個人を指しているわけではないので曲が普遍化し、聞き手それぞれが身の回りの状況、あるいは自分のこととして疎外感に共感する。「パラノイド」「リッチ&サッド」「ロックスター」がそのように聞かれれば、ヒップホップでよく歌われる自慢話的な曲が、空しさを伴って聞こえる。アルバムの後半は失恋と未練の曲が増える。

3
HOLLYWOOD'S BLEEDING

2019年。一般的な歌手と変わらない明瞭な歌い方。暗めの曲から始まるが、徐々に快活になっていく。「アレジック」「ステアリング・アット・ザ・サン」はポップだ。「オン・ザ・ロード」は「ロックスター」を思わせる。「テイク・ホワット・ユー・ウォント」はオジー・オズボーンが参加。ヒップホップを通過したポスト・マローンは90年代のR&B歌手ほどアフリカ系らしさを感じさせない。ヒップホップの自由さがR&B、あるいはソウルの歌い方を拡散、解放させ、90年代から1世代下がった歌手の新しさを示した。