アメリカのカントリーロックバンド。イーグルスとともに、70年代アメリカのカントリーロックのイメージを決定づけたバンド。4人編成。1969年のデビュー時のメンバーはバッファロー・スプリングフィールドのリッチー・フューレイ(ボーカル、ギター)とジム・メッシーナ(ギター、ボーカル)、ラスティー・ヤング(スチールギター)、ジョージ・グランサム(ドラム、ボーカル)。バッファロー・スプリングフィールドの4人のうちもう一方の2人のスティーブン・スティルスとニール・ヤングはクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングを結成し、ポコよりも先に成功している。70年代前半はカントリーロック、半ばから一般的なロックバンドに近づいていくようになり、78年の「伝説」がアダルト・オリエンテッド・ロック路線でヒット。80年代は低迷し、90年代以降は過去のバンドとしての活動となった。2021年にラスティー・ヤングが死去し活動停止。
1969年。邦題「カントリー・ロックの貴公子、ポコ誕生!」。リッチー・フューレイ、ジム・メッシーナ、ラスティー・ヤング、ジョージ・グランサムと、ベースのランディ・マイズナーで結成したが、デビュー前にランディ・マイズナーが脱退した。ランディ・マイズナーがボーカルをとっていた曲はジョージ・グランサムが歌っている。インスト曲の「グランド・ジャンクション」だけがラスティ・ヤングの作曲で、他の曲はリッチー・フューレイが作曲に関わっている。実質的に4声のボーカルハーモニーになっており、カーター・ファミリー以来のカントリーの特徴を継承している。「みんなりこう者」はホーンセクションとハモンドオルガンが使われる。「ピッキン・アップ・ザ・ピーセス」「本当なのさ」「それではさようなら」収録。
1970年。ティモシー・B・シュミットが加入し5人編成。メンバー全員にボーカルの表記が付いた。A面が5曲、B面が2曲で、B面の2曲は18分半ある。ジム・メッシーナが作曲した「考えなおして」は初期の代表曲。19分半の「みんなりこう者ーエル・トント・デ・ナディエ(みんなりこう者、パート2)」は前作の「みんなりこう者」に長いジャムセッションの間奏を挿入した拡大版のような曲。メンバー全員の作曲となっている。
1971年。邦題「ライヴ・ポコ」。ライブ盤。「悲しき叫び」「カモン」「ぼくのような男」はリッチー・フューレイ作曲の新曲。「素敵な音楽」はティモシー・B・シュミットが単独で作曲。「カインド・ウーマン」「有名になりたい」はバッファロー・スプリングフィールドの曲。ライブ盤だが演奏、コーラスともスタジオ録音と変わらないほど安定している。
1971年。邦題「フロム・ザ・インサイド」。ジム・メッシーナが抜けポール・コットンが加入。10曲のうち3曲をポール・コットンが作曲している。デビュー以来、最初の大きな変化が訪れた。全体的に曲がスピードダウンし、地に足が付いたような土着感がある。ポール・コットンの声がクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルのジョン・フォガティに近いことも、そのイメージを強くしている。リッチー・フューレイが作曲した「愛の行方」「幸せって感じるかい」「君と僕だけに」などは高音域のコーラスが大きく減っている。アルバムタイトル曲はティモシー・B・シュミットが作曲。
1972年。邦題「グッド・フィーリング」。前作よりもロック寄りになった。跳ねるようなリズムはほとんどないが、コーラスも戻っている。オープニング曲の「アンド・セトリン・ダウン」はエレキギター中心のロック。ポール・コットンの「ライド・ザ・カントリー」もエレキギターとスチールギター中心。9曲のうちリッチー・フューレイの作曲は3曲となり、ポール・コットンの3曲と並んだ。アルバムタイトル曲はデビュー当時の曲調に近い。「ゴー・アンド・セイ・グッドバイ」はバッファロー・スプリングフィールドのカバーで、スティーブン・スティルス作曲。「スイート・ラヴィン」はピアノとオルガン、コーラスによる壮大なバラード。
1973年。曲の幅が大きく広がった。アコースティックギターを使う曲が多い。これまでの曲とは異なる雰囲気を持つのがリッチー・フューレイ作曲のアルバムタイトル曲で、10分近くある。オーケストラも含み、バンジョーと同時に演奏される。テーマはグラム・パーソンズについてという。「ブルー・ウォーター」「ヒア・ウィ・ゴー・アゲイン」はアコースティックギターを中心にしながら、ラスティー・ヤングが作曲した「フールズ・ゴールド」はバンジョーとバイオリン中心の軽快なインスト曲。「ブラス・ボタンズ」はフライング・ブリトー・ブラザーズ、「マグノリア」はJ.J.ケイルのカバー。「ブラス・ボタンズ」はグラム・パーソンズの作曲。
1974年。邦題「ポコ 7」。リッチー・フューレイが抜け4人編成。ゲス・フーのバートン・カミングスがキーボードで参加している。2曲ごとに曲調が変わっていく。1、2曲目はカントリーロック、3、4曲目は重厚なロック、5曲目の「フェイス・イン・ザ・ファミリーズ」はアメリカの「名前のない馬」のような雰囲気。6曲目の「クリキッツ・ソング」はストリングスが入るが3分半のミドルテンポの曲で、「クレイジー・アイズ」のような印象はない。最後の2曲はポール・コットンのミドルテンポの曲で、「エンジェル」はニール・ヤングを思わせる。ラスティー・ヤングが作曲した「ロッキー・マウンテン・ブレイクダウン」はジム・メッシーナがマンドリンが参加し、ロギンス&メッシーナのアル・ガースのバイオリンも入るデビュー当時のカントリーロックだ。
1974年。邦題「僕等の歌を」。前作まで初期のカントリーロックの曲調を守ってきたラスティー・ヤングが9曲のうち3曲を作曲しており、いくらかカントリーロック方向に曲調を戻した。ポール・コットンの曲もバンジョーやマンドリンを使っており、コーラスも増えている。カバー曲がなく、全曲がメンバーの作曲というのも好感が持てる。
1975年。ベスト盤。「ポコ 7」までのアルバムから選曲。全曲がアルバム収録曲と同じで、新曲や未発表バージョンはない。「ポコ・ライヴ」からも選曲されている。
1975年。「僕等の歌を」の路線を継承。11曲のうちラスティー・ヤングの曲が4曲もあり、バンドの主導権がポール・コットンからラスティー・ヤングに移ったかのようだ。オープニング曲の「キープ・オン・トライン」はポール・コットンのアコースティックギターだけで演奏され、最初から最後までコーラスで歌われる。「アス」では初めてリードボーカルをとっている。「ラヴィン・アームズ」「恋をしよう」「柵に座って」はイメージ通りの曲。「恋をしよう」はザ・バンドのガース・ハドソンがピアノで参加している。「ラヴィン・アームズ」のバイオリンはロギンス&メッシーナのアル・ガース。「ダラス」はスティーリー・ダンのカバー。
1976年。邦題「シマロンの薔薇」。ロギンス&メッシーナのアル・ガースが加入したがアルバム発売前に脱退。10曲のうち7曲にバイオリンとサックスで参加している。「クレイジー・アイズ」以来続けてきたストリングス入りの長い曲が、アルバムタイトル曲で結実している。アルバムの前半はラスティー・ヤング、後半はポール・コットンの曲を中心にまとめられ、アナログ盤ではA面とB面で雰囲気を変えている。両面に1曲ずつあるティモシー・B・シュミットの曲がアクセントになっている。
1977年。アダルト・オリエンテッド・ロック化が進み、カントリーロックの要素が大きく減っている。スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンが2曲でシンセサイザーを演奏している。このアルバムを聞いたときに、カントリーロックだと思う人はいないような曲が並ぶ。これまでカントリーのイメージを維持してきたラスティー・ヤングの曲も、このアルバムでは一般的なロックになっている。それでも最後の「ザ・ダンス」のメドレーは後半にストリングスとホーンセクションが入り、アルバムに変化を与えている。
1978年。邦題「伝説」。ベースのティモシー・B・シュミットとドラムのジョージ・グランサムが抜けた。ティモシー・B・シュミットはイーグルスに加入している。ベースとドラムは加入しているが、実質的にポール・コットンとラスティー・ヤングのバンドとなっている。「インディアン・サマー」のアダルト・オリエンテッド・ロックの部分を押し出した。時流に乗った曲調だ。バンドとしての特徴はなくなったと言える。9曲のうちラスティー・ヤングが6曲、ポール・コットンが3曲を作曲。ポコのアルバムでは最大のヒットとなった。「クレイジー・ラヴ」「ハート・オブ・ザ・ナイト」収録。
1980年。キーボードが加入し5人編成。これまでで最もキーボードが活躍するアルバムだが、曲のメインはまだまだギターだ。アルバムタイトル曲がオープニング曲となっており、勢いがある。80年代に入ってギター主体のハードロックに方向転換したかのようだ。「ウィ・アー・スティル・ヤング」は60年代デビューのバンドのイメージを払拭しようとするような曲。「ミッドナイト・レイン」収録。
1981年。歌詞の内容に初めて統一性を持たせ、南北戦争をテーマとした。従って曲に明るさはあまりない。「ダウン・オン・ザ・リヴァー」は久しぶりにカントリー風だ。ポール・コットンが作曲しているのは意外だ。「ランド・オブ・グローリー」はブルース・スプリングスティーンを参考にしたような曲。女性コーラスが本格的に使われている。
1982年。邦題「カウボーイとイギリス人」。10曲のうち7曲がカバー曲。
1982年。ギター中心のアダルト・オリエンテッド・ロック。オープニング曲のストリングスが、カントリーロックとは正反対の音楽性をイメージさせ、「伝説」以降の方向転換が顕著になっている。曲の邦題も10曲のうち4曲に「恋」が入っており、想定する聞き手の年齢層を大きく若返らせたいようだ。最後の「ハイ・シエラ」はアナログシンセサイザーを使ったインスト曲のように聞こえるが、スキャットが薄く入っている。ニック・デカロがストリングス編曲で参加。
1984年。邦題「情婦」。ベースが抜け4人編成。アナログ盤は5人編成のままの写真が入っている。リッチー・フューレイ、ジョージ・グランサム、ティモシー・B・シュミットの元メンバー3人がコーラスで参加しているが、どの曲に参加しているかは分からない。キーボード、ドラムは2人ずつのゲスト参加があり、ドラムはヴィニー・カリウタがいる。80年代前半の音楽的流行を考えれば、キーボードとエレキドラムによるニューウェーブ風の曲が出てくるのは不思議ではない。「コーナー・オブ・ユア・ハート」に限らず、多くの曲でキーボードがメロディーを主導する。曲調は時流に乗っていても、ポコがやっているということ自体がマイナス要素になった。
1989年。ランディ・マイズナーを含め、デビュー時の5人で再結成。ボーカルはジョージ・グランサム以外の4人で2、3曲を分け合っている。曲はラスティー・ヤング、リッチー・フューレイ、ジム・メッシーナが共作も含めて関わっており、ティモシー・B・シュミットは関わっていない。ゲスト参加は豪華で、リチャード・マークス、リトル・フィートのビル・ペイン、シカゴのブルース・ガイチ、トトのジェフ・ポーカロら。曲調は「伝説」に近く、ギターと厚いキーボードのメロディアスなハードロックになっている。「ナッシン・トゥ・ハイド」がヒットしたが、ポコのメンバーは作曲に関わらず、リチャード・マークスとブルース・ガイチの共作。結成時のメンバーで再結成したとしても、曲がある程度カントリーロックらしさを伴わないと、聞き手が着いてこない。
1990年。ベスト盤。2枚組。ポコのベスト盤は多数出ているが、未発表曲の収録が多数含まれるのはこのベスト盤だけだ。未発表曲はラスティー・ヤングの「ラスト・コール」「スカンク・クリーク」、リッチー・フューレイの「ナッシンズ・スティル・ザ・セイム」「ビリーブ・ミー」、ポール・コットンの「ゲット・イン・ザ・ウィンド」。「マイ・カインド・オブ・ラブ」「ハード・ラック」はアルバム未収録のシングル盤のA面曲とB面曲。「ポコ・ライヴ」に収録されていた「悲しき叫び」はスタジオ録音バージョンが入っている。このベスト盤の目玉は「考えなおして」のアコースティックバージョンだろう。アルバムバージョンも入っている。
2002年。ラスティー・ヤング、ジョージ・グランサム、ポール・コットンのほか、ベースに新メンバーを入れた4人編成。新メンバーも11曲のうち3曲を作曲している。アコースティックギターを多用したゆっくりした曲が多い。新メンバーも11曲中3曲を作曲し、ボーカルもとっている。やや低めの声。
2013年。ポール・コットンが抜け、ギター兼キーボード奏者が加入。