PHOEBE BRIDGERS

フィービー・ブリジャーズはアメリカのシンガー・ソングライター。1994年生まれ。2020年代で最も注目されているシンガー・ソングライターの1人。

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STRANGER IN THE ALPS

2017年。シンガー・ソングライターがギターの弾き語りでアルバムを出す場合、関心が集まるのは曲よりも歌詞だ。60年代後半に若年層が自らの心情を歌うことによって、新しい被抑圧層としてのブルースができた。70年前後以降、各アーティストが時代に即したアルバムを発表してきたが、フィービー・ブリジャーズは20代前半で過去の悲しい経験を感情調整する早熟な才能を示している。「モーション・シックネス」はロック調。オープニング曲の「スモーク・シグナルズ」はモーターヘッドのレミー・キルミスターとデヴィッド・ボウイの死への言及がある。

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PUNISHER

2020年。「ストレンジャー・イン・ジ・アルプス」に関わったギター、キーボード、ドラム、ストリングス奏者が引き続き参加し、ボーイジーニアスのルーシー・ダッカス、ジュリアン・ベイカーも最後の2曲にボーカルで参加している。「ガーデン・ソング」はシンセサイザー中心。「キョート」はポップなロック。「グレイスランド・トゥー」はブルーグラス、「アイ・ノウ・ジ・エンド」は後半に大きく盛り上がる。フィービー・ブリジャーズの歌詞は、録音された当時のアメリカの状況を随所に織り込んでいる。「チャイニーズ・サテライト」「アイ・ノウ・ジ・エンド」ではアメリカ社会の分断が描かれる。「キョート」「パニッシャー」などでは、わざわざ非日常に出向くよりも日常にこもっている方がいいと歌い、外の社会が優れているわけではないことを間接的に示す。これらの曲からは、フィービー・ブリジャーズが現状を批判的に解釈し、反省的に見る教養層と同じ感性を持っていることが分かる。「チャイニーズ・サテライト」「アイ・ノウ・ジ・エンド」とも、フィービー・ブリジャーズは保守反動に批判的であり、それは「ムーン・ソング」の「ティアーズ・イン・ヘヴン」は嫌いという歌詞にも表明される。「ティアーズ・イン・ヘヴン」はエリック・クラプトンが息子に捧げた追悼の曲だが、エリック・クラプトン自身は排外主義者だからだ。この曲にはジョン・レノンも登場する。「グレイスランド・トゥー」はエルヴィス・プレスリーを直接的に扱っており、前作と同様に過去の著名なアーティストへの敬意がみられる。今後、フィービー・ブリジャーズがアルバムや曲を出すたびに注目されるのは確実。