1975年。パティ・スミスはアメリカ、ニューヨークの女性ボーカル。ミュージシャンとしてデビューする前に詩人としてデビューしていた。「バードランド」や「ランド」は歌うと言うより詩を朗読しているような歌い方だ。パティ・スミスは一般的にニューヨーク・パンクの女王と言われるが、それはサウンド面ではなく存在感の鋭さにある。したがってロックとしてのパティ・スミスはそれほど攻撃的なサウンドではない。ジャケット写真はロバート・メイプルソープ。
1976年。6分以上の長い曲が3曲、5分以下が5曲だが、「ラジオ・エチオピア」と「アビシニア」は一体の曲となっている。オープニング曲の「アスク・ジ・エンジェルズ」はロックバンドとしてまとまった演奏だ。長い曲は前作と同様、詩の朗読がメーンとなっている。
1978年。一般的なロックのサウンドになり、詩の朗読と言えるのは最後の曲くらいだ。3分から4分の短い曲がほとんどで、ロックとしての編曲もきちんと行われている。ブルース・スプリングスティーンと共作している「ビコーズ・ザ・ナイト」はいい曲だ。キーボードを含む5人編成のバンドとして最もバランスが取れたサウンド。パティ・スミスのアルバムでは唯一の多色ジャケットだ。
1979年。全曲が5分台以下だが、これまで長い曲に採用されていた詩の朗読を短めの曲にも取り入れている。キーボードがサウンドの中心となっているのはニューウェーブが流行していたことと、トッド・ラングレンがプロデューサーだったことと、メンバーの作曲能力の向上の相乗効果だろう。「ロックン・ロール・スター」はザ・バーズのカバー。
1988年。前作から9年後に発売され、80年代では唯一のアルバム。全曲をパティ・スミスとその夫が作詞作曲している。オープニング曲はビートを強調したロック。後半は歌うことに主眼を置いた曲が多い。パティ・スミスが歌うことによって生まれていた曲の迫力が、このアルバムでは薄れている。
1996年。パティ・スミスがギターもしくはピアノで弾き語りながらバックバンドが演奏しているようなサウンド。これまでで最も内省的なサウンドと言えるだろう。「アバウト・ア・ボーイ」はニルヴァーナのカート・コバーンのことだという。「ウィキッド・メッセンジャー」はボブ・ディランのカバー。
1997年。前半はバンドサウンドがしっかりしており、後半はパティ・スミスの詞が中心となっている。「スペル」はアレン・ギンズバーグの詞をパティ・スミスが朗読する。目新しい試みはほとんどなくなっているが、安心できるアルバムだ。
2000年。8分と12分以外の11曲はすべて5分以下で、サビの部分も「パースエイジョン」には80年代のようなギターソロがある。「ゴーン・パイ」はザ・ポリスかラッシュかというようなサウンド。「アップライト・カム」はさらにラッシュに近い。「リビーズ・ソング」はカントリー。
2002年。ベスト盤。
2004年。「ゴーン・アゲイン」のように、シンガー・ソングライターがリラックスして歌っているようなサウンド。ボーカルはあまり熱くならない。「レディオ・バグダッド」は12分、「ガンディー」は9分。この2曲が従来のパティ・スミスだ。
2007年。カバー曲集。
2012年。