OZZY OSBOURNE

  • ブラック・サバスのボーカル、オジー・オズボーンを中心とするバンド。
  • メンバー交代多数。主要メンバーはギターのランディ・ローズ、ジェイク・E・リー、ザック・ワイルド、マイク・アイネズ、ベースのボブ・デイズリー、ギーザー・バトラー、ドラムのトミー・アルドリッジ、ランディ・カスティロ。
  • 80年代はヘビーメタルのイメージを演奏ではなく行動で具体化し、映像時代に適したアーティストだった。90年代はサウンドを重厚にしてラウドロック時代に合ったバンドとなった。
  • 96年からオズフェストの主要アーティストとして出演。オズフェストでのラウドロック、ヘビーロックへの貢献は大きい。
  • 代表作は「血塗られた英雄伝説」「オズモシス」、アメリカでは「ノー・モア・ティアーズ」。代表曲は「ミスター・クロウリー」「クレイジー・トレイン」「アイ・ドント・ノウ」「月に吠える」「ママ・アイム・カミング・ホーム」「ペリー・メイソン」。

1
BLIZZARD OF OZZ

1981年。邦題「血塗られた英雄伝説」。ブラック・サバスのボーカル、オジー・オズボーンが結成したバンド。ギターはクワイエット・ライオットのランディー・ローズ、ベースはレインボーのボブ・デイズリー、ドラムはユーライア・ヒープのリー・カースレイク。4人編成。キーボードはレインボーのドン・エイリーがゲスト参加。ブラック・サバスのときにはほとんど出てこなかったポップな曲やロックンロールの曲が多く、新しいバンドを組んだ意味がある。この年からMTVが放送され、タイミングのよいデビューだった。ランディー・ローズは容貌がよかったのでアイドルのような人気を獲得する。初期の代表作。「アイ・ドント・ノウ」「クレイジー・トレイン」「グッバイ・トゥ・ロマンス」「ディー」「自殺志願」「ミスター・クロウリー(死の番人)」収録。全米21位、400万枚。

2
DIARY OF A MADMAN

1981年。ベースがクワイエット・ライオットのルディー・サーゾ、ドラムはトミー・アルドリッジ。前作に比べると曲に面白みがなく、印象的なメロディーも少ない。明るめの曲がないのも印象を薄くしている。「オーバー・ザ・マウンテン」収録。全米16位、300万枚。

 
SPEAKS OF THE DEVIL

1982年。邦題「悪魔の囁き」。ライブ盤。ランディー・ローズが死亡し、ギターはブラッド・ギルスが弾いている。全曲がブラック・サバスの曲。全米14位。

3
BARK AT THE MOON

1983年。邦題「月に吠える」。ギターがラフ・カットのジェイク・E・リー、ベースがボブ・デイズリーに交代。キーボードにドン・エイリーが加入。5人編成。再び、多彩な曲が並び、キーボードが活躍している。「暗闇の帝王」はストリングスがよい。「月に吠える」という邦題は大正時代の詩人萩原朔太郎の詩集のタイトル。全米19位、300万枚。

4
THE ULTIMATE SIN

1986年。邦題「罪と罰」。ベースとドラムが交代し、キーボードが抜け4人編成。激しさやポップさがあまりなく、「ダイアリー・オブ・ア・マッドマン」に近い作風。「フール・ライク・ユー」のイントロはサンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」を思い出す。「暗闇にドッキリ」収録。全米6位、200万枚。「暗闇にドッキリ」は68位。

 
TRIBUTE

1987年。邦題「ランディ・ローズに捧ぐ」。1982年のライブ。最後の「ディー」はスタジオ録音のアウト・テイク。残りの13曲のうち3曲はブラック・サバスの曲で、続けて3曲演奏される。全米6位、200万枚。

5
NO REST FOR THE WICKED

1988年。ギターがザック・ワイルド、ベースがボブ・デイズリーに交代。キーボードはユーライア・ヒープのジョン・シンクレアがゲスト参加。ギターの音は生々しく、ヘビーメタルらしいハードさがある。これまでで最も音が太い。飾り気のない演奏は好感が持てる。「ミラクル・マン」「タトゥード・ダンサー」収録。全米13位、200万枚。

BEST OF OZZ

1989年。ベスト盤。未発表曲なし。

 
JUST SAY OZZY

1990年。6曲入りライブ盤。ベースはブラック・サバスのギーザー・バトラー。ブラック・サバスの曲を2曲やっている。全米58位。

6
NO MORE TEARS

1991年。ベースがアリス・イン・チェインズのマイク・アイネズに交代。曲調は前作に近い。作り込まれた感じがしないので80年代のような装飾の多いサウンドではない。キーボードの使用は最小限。ザック・ワイルドのギターの才能と、オジー・オズボーンの作曲能力がよく分かる。「ディザイア」「ママ・アイム・カミング・ホーム」収録。全米7位、400万枚。「ノー・モア・ティアーズ」は71位、「ママ・アイム・カミング・ホーム」は28位。

LIVE&LOUD

1993年。ライブ盤。全米22位。

7
OZZMOSIS

1995年。ベースがギーザー・バトラー、ドラムがジャーニー、バッド・イングリッシュのディーン・カストロノヴォに交代。イエスのリック・ウェイクマンがキーボードでゲスト参加。パンテラをはじめとする低音を強調したサウンドが流行しており、このアルバムもそれに沿ったサウンドになっている。もともとザック・ワイルドのギターはヘビーメタルの中でもハードな音だったので、あまり違和感なく聞くことができる。ディーン・カストロノヴォも本来はハードな音を指向する人。オジー・オズボーンのボーカル・アルバムのような曲で、サウンドだけが流行に乗った90年代のヒット作。「ペリー・メイソン」収録。全米4位、200万枚。

 
SEE YOU ON THE OTHER SIDE

1996年。シングル盤。「ヴードゥー・ダンサー」と「リヴィング・ウィズ・ジ・エナミー」はアルバム未収録曲。「ヴードゥー・ダンサー」はトミー・ショウと共作している。

THE OZZMAN COMETH

1997年。ベスト盤。全米13位、200万枚。

8
DOWN TO EARTH

2001年。ギターがザック・ワイルド、ベースがロバート・トゥルージロ。同時代的な低音強調で、他のバンドと区別可能なのはオジー・オズボーンのボーカルだけだ。メンバー以外のアーティストが作曲した曲があり、サウンドの革新性があまりない。「ノー・モア・ティアーズ」の時点で公言したとおり引退するか、フェスティバルの主宰者だけをやっていればよかったのではないかと思わせる。90年代の感性を持ったザック・ワイルドが加入したにもかかわらず、作曲面での個性を生かし切れなかった。「ドリーマー」はヒット。全米4位、全英19位。

 
DREAMER

2002年。「ダウン・トゥ・アース」からのシングル。「ブラック・スカイズ」はアルバム未収録曲。

LIVE AT THE BUDOKAN

2002年。ライブ盤。全米70位。

THE OZZMAN COMETH

2002年。「オズマン・コメス」の収録曲の一部の演奏を差し替えているので、再発売ではない。

THE ESSENTIAL

2003年。ベスト盤。全米81位。

PRINCE OF DARKNESS

2005年。4枚組ボックスセット。

UNDER COVER

2005年。カバー曲集。

9
BLACK RAIN

2007年。オジー・オズボーンとザック・ワイルド、プロデューサーのケヴィン・チャーコが全曲を共作している。オジー・オズボーンのボーカルはいつも通りで、ザック・ワイルドのギターのメロディー、演奏、曲の目新しさなどに目がいく。「ノー・レスト・フォー・ザ・ウィキッド」以来続くギターの音の癖が今回も出ており、オジー・オズボーンがギタリストに恵まれたバンドであることを確認させる。全米3位、全英8位。

10
SCREAM

2010年。ベース以外のメンバーを全員入れ替え、ギターはガス・G、キーボードはイエスのリック・ウェイクマンの息子が加入している。作曲はオジー・オズボーンとプロデューサーのケヴィン・チャーコが全曲で共作し、キーボード奏者も11曲のうち5曲で関わっている。各楽器が明瞭になり、意表を突くような音響も少なめだ。メロディーも追いやすい。ハードさを求めるラウドロック、ヘビーメタルの聞き手よりも、圧倒的に多い一般のロックの聞き手に焦点を合わせたような曲調だ。「タイム」はフォー・トップスのデビュー曲を意識したか。全米4位、全英12位。

11
ORDINARY MAN

2020年。実質的にソロアルバムのように制作され、参加しているアーティストは豪華だ。ベースはガンズ・アンド・ローゼズのダフ・マッケイガン、ドラムはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスが演奏。エルトン・ジョン、チャーリー・プース、ポスト・マローン、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロ、ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュも参加している。オジー・オズボーンのアルバムでは珍しくゲスト参加のコーラスを多用し、演奏もボーカルもスタジオ録音として整えられている。何か新しいことをする意欲は、曲そのものよりも共演の方に向いている。アルバムタイトル曲はピアノ、ストリングス中心のバラードで、エルトン・ジョンとデュエットしている。「イッツ・ア・レイド」はポスト・マローンとデュエットしている。

12
PATIENT NUMBER 9

2022年。プロデューサーのアンドリュー・ワットが演奏と制作を全面的に担当している。13曲のうち1曲目から10曲目までは曲ごとにジェフ・ベック、エリック・クラプトン、ザック・ワイルド、トニー・アイオミ、パール・ジャムのマイク・マクレディーが参加していることが明記されている。ザック・ワイルドは明記されていない曲でも大方の曲でギターを弾いている。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オム、メタリカのロバート・トゥルージロ、ガンズ・アンド・ローゼズのダフ・マッケイガン、フー・ファイターズのテイラー・ホーキンス、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスも参加しており、オジー・オズボーンとアンドリュー・ワットが多数の著名アーティストに声をかけたとみられる。曲ごとの作曲者と演奏者の表記を照らし合わせると、作曲に名前を連ねている者は演奏もしている。ここで注目されるのは、演奏に全く関わっていないのに11曲も作曲者として名前がある女性職業作曲家のアリ・タンポジで、彼女が事実上のメイン作曲者だろう。アルバム全体として、ブラック・サバスのころのイメージを意識した曲調とメロディーになっており、オジー・オズボーンの年齢も考慮したような歌詞が多い。トニー・アイオミが参加した「ノー・エスケイプ・フロム・ナウ」はブラック・サバスを思わせる。ザック・ワイルドが弾く「イーヴル・シャッフル」もブラック・サバス風。エリック・クラプトンはソロ以外の部分でもエリック・クラプトンだと分かる個性だ。