NOFX(ノー・エフ・エックス)はアメリカのパンク、ミクスチャーバンド。ボーカル兼ベース、ギター2人、ドラムの4人編成。作曲は主にボーカル兼ベースのファット・マイクが行う。歌詞は日記やふざけたものが多い。アルバムよりEP盤を多く出している。1997年以降は日本盤を出していないが、メロディック・パンク、ミクスチャーロックでは大物とされる。
1988年。スラッシュメタルの影響を受けたハードコアだが、演奏はアマチュアに近い。14曲のうち7曲は2分以下。「シャットアップ・オールレディ」はレッド・ツェッペリンの「ブラック・ドッグ」が使われる。「ヒア・カム・ザ・ネイバーフッド」はレゲエで始まる。「ビアー・ボング」はヘビーメタルに近い。日本盤は1995年発売。
1989年。最短でも2分前後となり、2分未満が半数だった前作から作曲、編曲、演奏能力が上がっている。曲によってはメロディアスで、ギターソロがある曲もある。アルバムタイトル曲はバッド・レリジョンのようなコーラスを使う。この曲と「ドラッグ・フリー・アメリカ」はヘビーメタルのパロディーとなっている。「ライフ・オライリー」はレゲエ、スカの曲。「ゴー・ユア・オウン・ウェイ」はフリートウッド・マックのカバー。日本盤は1995年発売。
1991年。バッド・レリジョンのブレット・ガーヴィッツがプロデューサーとなった。14曲のうち2分未満が再び7曲となり、ハードコアの感覚を戻した。サウンドはミクスチャーに近い幅広さを持つ。演奏能力がさらに向上している。「ニュー・ブーブス」は50、60年代のドゥーワップ。「ザ・マラシ・クランチ」はハードコア風ヘビーメタル。日本盤は1995年発売。
1992年。1984年から88年までの録音。デモテープとシングル盤の曲を集めた企画盤。ギター1人の3人編成。「アイアン・マン」はブラック・サバスのカバー。この曲のみ5分近くあり、これ以外の21曲は30秒から2分半程度。「ボブ・ターキー」は「リベラル・アニメーション」に収録されている曲のサウンドに近い。
1992年。マイナー・スレットのカバー以外の全曲をファット・マイクが作曲し、バンドのサウンドを確立した。「スティッキン・イン・マイ・アイ」はバッド・レリジョン風。「ボブ」はトランペットを使ったレゲエを含むハードコア。マイナー・スレットのカバーの「ストレート・エッジ」はルイ・アームストロングのようなボーカルで、サウンドも50年代ジャズ風。「ジョニー・アップルシード」はレゲエ。これ以外の曲は概ねメロディアスなハードコアで、「シーズ・ゴーン」はギターソロを含む。日本盤は1995年発売。
1994年。ハードコアの曲がやや多く、レゲエ以外の遊びはほとんどない。「ディグ」でトロンボーンを、「マイ・ハート・イズ・ヤーニング」で初めてスティールパンを使っている。最後の曲は7分以上あり、アコースティックギターによる弾き語りが2分40秒続いた後、5分30秒から会話らしきものが入っている。このアルバムで日本デビュー。
1996年。ハードコア、パンクのサウンドとしては音が厚くなり、バンドが嫌う大手レコード会社のサウンドに近くなっている。録音機材が変わったか。レゲエ風ハードコアの「フィルスィー・フィル・フィランスラピスト」で初めてキーボードを使っている。
1997年。ハードコアの曲とレゲエの曲が明確に分かれ、ハードコアの曲はこれまでで最もハードなサウンドになっている。「フォーリング・イン・ラブ」はギターのハーモニーを使う。「180デグリース」「オール・アウタ・アングスト」「イート・ザ・ミーク」「フロッシング・ア・デッド・ホース」はレゲエ、スカで、「フロッシング・ア・デッド・ホース」はインスト曲。このアルバムから日本盤が出なくなった。
2000年。レゲエ、スカの曲が出てこない。オープニング曲から6曲目まで突進するサウンド。スピーディーではない曲は「ルイーズ」「マイ・ヴァギナ」くらい。最後の「テーマ・フロム・ア・NOFX・アルバム」はアコーディオンを使うワルツ。後半はロックになる。
2003年。政治的主張を前面に出したアルバム。複数の曲でキーボードを使い、「ジ・イレーショナリティー・オブ・レーショナリティー」はパンク、ハードコアのバンドでは珍しいプログレッシブ・ロックのような間奏がある。「フランコ・アン・アメリカン」はキーボードがメロディーを主導し、エレクトロビートも入る。これまでのエピタフ・レコードではなくファット・マイクのレーベルから出ているので、サウンド上の自由も広がっている。「イディオッツ・アー・テイキング・オーヴァー」でレゲエのリズムを使う。「アナーキー・キャンプ」は久しぶりの本格的レゲエ。
2006年。再びレゲエの曲がなくなり、ロックだけで通している。曲は「パンプ・アップ・ザ・ヴァリューム」ほどハードではなく、バンド形態ではない曲もある。「クール・アンド・アンユージュアル・パニッシュメント」は曲の前後に日本語のせりふが入る。SMビデオからサンプリングしたとみられる。
2009年。日本盤が出なくなって以降では最もバランスのとれたアルバム。アナログ盤は「フリスビー」というタイトルになっており、CDとともに「音楽入り!」という売り文句がついている。「エディー、ブルース、アンド・ポール」はアイアン・メイデンに関する曲で、ジューダス・プリーストも出てくる。「ベスト・ゴッド・イン・ショウ」はレゲエ風。
2012年。「パンプ・アップ・ザ・ヴァリューム」に近い。高速で疾走する曲が多い。そうした曲は半音階を使ったメロディアスな曲になっており、各楽器が切れよく響く。ハードコアとヘビーメタルの間にあるサウンド。ボーカルメロディーは高揚感を持たせず、エンディングでボーカルが歌い終わるとすぐに曲自体が終わるところがハードコアの面影を残す。レゲエ、スカのサウンドはない。日本盤が出なくなってからは、レゲエの曲があるアルバムとないアルバムが交互に出てきている。12曲で30分弱。
2016年。女性ボーカルやキーボードを適宜使い、バッド・レリジョンに近いメロディアスなハードコアを演奏する。ボーカルはバッド・レリジョンよりもハードコアらしさを残している。最後の3曲はいずれも変化があり、将来の多様なサウンドに期待を持たせる。