ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズはイギリスのロックバンド。オアシス解散後、ギター兼ボーカルだったノエル・ギャラガーが結成した。
2011年。オアシスのギター兼ボーカル、ノエル・ギャラガーのソロアルバム。ノエル・ギャラガーは主にボーカル、ギター、ベースを取っている。ドラム、キーボードは固定されたミュージシャンが演奏しており、この3人が中核だと言える。これまでノエル・ギャラガーがオアシスで作曲してきた雰囲気から外れることはない。オアシス時代のメロディーのくせがそのまま出ており、ソロアルバムで何かをしようという意気込みはなかったようだ。ビーディ・アイは体、ノエル・ギャラガーは頭で感じるサウンド。オープニング曲は初期のエレクトリック・ライト・オーケストラのようなサウンド。
2015年。ギター兼ベースが加わり4人編成。前作と同様にシンガー・ソングライター風の情緒的なメロディーが多くを占める。ホーンセクションを使ったように聞こえる「ザ・メキシカン」やロックンロールの「ユー・ノウ・ウィ・キャント・ゴー・バック」を織り交ぜ、雰囲気が重すぎにならないようにしている。オアシスにおいてノエル・ギャラガーが主にメロディアスな曲を、リアム・ギャラガーがロックンロールの曲を担っていたことを考えると、メロディアスな曲よりロックンロールが多ければオアシス、少なければノエル・ギャラガーのバンドということになる。「イン・ザ・ヒート・オブ・ザ・モーメント」はオアシス風。「ロック・ザ・オール・ドアーズ」はオアシスの「モーニング・グローリー」を思わせる。
2017年。ギター兼ベースが抜け、ベースにジェリーフィッシュのジェイソン・フォークナーが加入、キーボードが交代。同時期に出たリアム・ギャラガーのソロアルバムと同じように、音作りを担うプロデュースを他人に任せている。リアム・ギャラガーと異なるのは、全曲をノエル・ギャラガーが単独で作曲していることだ。音作りを他人に任せたことで曲のバリエーションが大きく広がり、それぞれの曲が別のジャンルで存在しているかのようだ。オープニング曲の「フォート・ノックス」は持続音を複数重ねたサイケデリックな曲。「ホーリー・マウンテン」はバリトンサックス、バブルガムビート、ティンホイッスル等を使った分厚い音のグラムロックで、ローリング・ストーンズ風のメロディーがある。「キープ・オン・リーチング」はホーンセクション、ストリングス、女性コーラスを使った70年代ソウル。この3曲が連続していることで、これまでのノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズの制作過程とは異なる手法を採っていることが分かる。それは、いつまでもついて回る「元オアシス」のイメージから決別したいというメッセージだろう。曲調の異なる3曲が連続して出てきた時点で、次はどんな音楽が出てくるのかという期待を抱かせる。6曲目の「ビー・ケアフル・ホワット・ユー・ウィッシュ・フォー」以降はノエル・ギャラガーらしい曲も出てくる。陰鬱な曲が少ないのもよい。オアシス解散後のオアシスのメンバーによる最高作。日本盤の歌詞対訳は中川五郎。
2023年。アコースティックギターとストリングスを軸とした郷愁を誘う曲調。ストリングスはクラシック調というよりも映画音楽風だ。コロナ期間中に作曲、録音されているので内省的に聞こえる部分は多いが、ノエル・ギャラガーはオアシスの「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」の頃から内省的な面はあったので、ノエル・ギャラガーの個性として受け入れることができる。アルバムタイトル曲はローリング・ストーンズの「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」を思わせるフレーズを入れている。「ラヴ・イズ・ア・リッチ・マン」はグラムロックを基調としたロックンロール。