1995年。デスメタル・バンドにボーカルとギターが加入しヘビーメタル・バンドとなった。5人編成。スウェーデン出身。最大の聞き所は「レイ・オブ・アンニュイ」だろう。サビの最終部分に旋律の頂点があまり来ない(またはメロディーが下降して終わる)ところに北欧の陰鬱な印象が醸し出される。戦士ものの詩が多い。ボーカルが一本調子だが、こうしたサウンドのバンドが少なかった時代では貴重な存在。
1997年。ボーカルの力がやや向上。「チェンジ・ザ・ワールド」のような曲も書けるようになって作曲能力も上がった。キーボードの音が時折入る。「リング・オブ・スティール」のイントロはパッヘルベルのカノンか。80年代末から90年代初頭のドイツに近いサウンドだ。
1999年。キーボード奏者が正式メンバーとなり、6人編成になった。ボーカルの力が格段に向上。ほとんどの曲がサビの最後で上昇メロディーとなり、親しみやすくなった。ジャケットがアンドレアス・マーシャルなので、バンド・ロゴがブラインド・ガーディアンに似ている。
2000年。ボーカルが交代。ボーカルの声に合わせて曲のスタイルもメロディアスなヘビーメタルから純然たるヘビーメタルに変わっている。ギターがソロ中心からリフ中心になった。
2002年。ヘビーメタル然とした部分を残しつつ、ボーカルのメロディーがメロディアスになり、他のバンドとの差を広げた感がある。当代ヨーロッパのヘビーメタルの模範的サウンドと言ってよい。
2004年。前作と同じ路線。バラードはなく、すべての曲がハードなロックになっている。キーボードが正式メンバーではなくなったので、ギター2人の5人編成だが、サウンドはこれまでと変わらない。「エジプティカ」ではキーボードによるブレークが入る。メロディーの個性を損なうことなく、ほとんどの曲が覚えやすくなり、作曲能力の向上が明確に分かる。
2005年。ヨーロッパ特有のメロディーのうち、もの悲しさよりも力強さの方が勝るような曲がほとんどで、それはボーカルのジョニー・リンドクヴィストのうまさによるところが大きい。同時期にデビューしたハンマーフォールよりも声に張りや太さがあり、ラプソディーほどくどさがない。ハロウィン並みの覚えやすさをヘビーメタルらしさを維持しながら実現しているのはすばらしい。いわゆるヨーロッパ型ヘビーメタルのような大仰さを排しているのは賢明。
2007年。邦題「第八の罪」。これまでと同じサウンドで、質が高いのは間違いない。しかし、欲を言えば新基軸が欲しいところだ。「ネヴァー・アゲイン」ではエレクトロニクス・サウンドが入るが、これを他の曲でも使えば、さらに評価は高くなった。このままのサウンドを続けていても、ヘビーメタルの世界ではこれ以上評価が上がらない。ヨーロッパのヘビーメタルの趨勢から離れた方がよい。物語性を取り入れたり、編曲に凝ってプログレッシブ・ヘビーメタルにしたりしたところで、すでに誰かがやっていることをなぞるだけだ。ヨーロッパの白人が自己確認するようなサウンド(クラシック、プログレッシブ・ロック、物語性)は、90年代以降顕著になった多文化主義とは相いれない。
2017年。ギターが交代。前作から10年も空いた割には以前とあまり変わらない曲調を維持している。このアルバムが前作より2年後、3年後に出ていたとしても違和感はない。キーボードも適度に使い、明瞭なメロディーでヨーロッパ型ヘビーメタルをやっている。次作が2、3年以内に出るならば、次作が新しい方向性へのいいタイミングになるだろう。