NIGHT RANGER/DAMN YANKEES

  • アメリカのハードロックバンド。キーボード奏者を含む5人編成。ベースとドラムが兼任でボーカルをとる。
  • ポップなハードロックで人気があった。ギター2人がそれぞれ高い演奏技術を持つ。
  • 代表曲は「炎の彼方」「ロック・イン・アメリカ」「シスター・クリスチャン」。
  • ダム・ヤンキースはナイト・レンジャーのジャック・ブレイズとスティクスのトミー・ショウがテッド・ニュージェントと結成したバンド。バラードの「ハイ・イナフ」「カム・アゲイン」がヒットした。

1
DAWN PATROL

1983年。邦題「緊急指令NR」。ファンク・バンドだったルビコンのメンバーのうち3人がバンドを結成した。ボーカル兼ベース、ギター2人、ドラム兼ボーカル、キーボードの5人編成。ベースとドラムが曲ごとにボーカルを取る。ブラッド・ギルスとジェフ・ワトソンのギターが華々しくプレイされるのは「炎の彼方」「エディーズ・カミン・アウト・トゥナイト」「ナイト・レンジャー」くらい。ギターがハードでなければかなりポップなロック。「シング・ミー・アウェイ」収録。全米38位。「炎の彼方」は40位、「シング・ミー・アウェイ」は54位。

2
MIDNIGHT MADNESS

1983年。アルバムのトップに勢いのある「ロック・イン・アメリカ」を置いて、バンドの代表曲となった。「シスター・クリスチャン」が全米5位の大ヒット、「ホエン・ユー・クローズ・ユア・アイズ」が14位を記録してハードロックのみならず一般のロックでもトップ・クラスの知名度を得る。このころチャートに食い込む実力があったハードロック系バンドは「1984」のヴァン・ヘイレン、「ロンリー・ハート」のイエス、「セパレート・ウェイズ」のジャーニー、「ラウンド・アンド・ラウンド」のラットくらいだった。ヴァン・ヘイレンやイエス、ジャーニーは70年代から活動するグループなので、新しく出てきたバンドとしてはかなりのヒットだったと言える。「ルーマーズ・イン・ジ・エア」「レット・ヒム・ラン」収録。全米15位。

3
7 WISHES

1985年。レコード会社が前作のヒットで予算をかけたため音がモダンになっている。「センチメンタル・ストリート」がヒット。キーボードが装飾過多になっている。「グッドバイ」「フォー・イン・ザ・モーニング」収録。全米10位。「センチメンタル・ストリート」は8位、「フォー・イン・ザ・モーニング」は19位、「グッドバイ」は17位。

4
THE BIG LIFE

1987年。ハードロックというよりは、一線のメジャーなロック。キーボードが分厚い。ハード・ロックの視点から見れば、大きくポップ化したと言えるが、それは一面的だ。逆に、こうした優れた曲を書けるということを示したジャック・ブレイズは外部ソング・ライターとして後に活躍する。ポピュラリティを獲得するにも才能が無ければできないのは周知のとおりで、このアルバムはジャック・ブレイズの独壇場となっている。「シークレット・オブ・マイ・サクセス」はマイケル・フォックスが主演した「摩天楼はバラ色に」の主題歌。全米28位。「シークレット・オブ・マイ・サクセス」は64位、「ハーツ・アウェイ」は90位。

5
MAN IN MOTION

1988年。キーボードのアラン・フィッツジェラルドが脱退。ギターの活躍度が大きくなった。「ハーフウェイ・トゥ・ザ・サン」はすばらしい。ギター中心のハード・ロックに回帰した。全米81位。「アイ・ディッド・イット・フォー・ラブ」は75位。

NIGHT RANGER'S GREATEST HITS

1989年。この年に解散。

 
LIVE IN JAPAN

1990年。初のライブ盤。観衆への呼びかけはほとんど出てこないが、「グッドバイ」の最後で「サヨナラ」と言っているところで日本公演であることを確認できる。88年のライブなのでキーボードはアラン・フィッツジェラルドではない。

6
FEEDING OFF THE MOJO

1995年。ドラム兼ボーカルのケリー・キーギーとギターのブラッド・ギルスが、ベースにゲイリー・ムーンを迎えて制作した再結成アルバム。ゲイリー・ムーンだと思われるボーカルは、シンデレラのトム・キーファーに似ている。ナイト・レンジャーでなくてもできるサウンドだが内容は水準を満たしている。ナイト・レンジャーとして出したアルバムにも関わらず、バンド側からなかったことにされている不遇のアルバム。

7
NEVERLAND

1997年。オリジナル・メンバーによる復活作。ギター中心という意味では「緊急指令NR」か「マン・イン・モーション」に近いが、そのころの派手さやメロディーの親しみやすさは控えめになった。キーボードは少ない。

NEW YORK TIME

1997年。シングル。「炎の彼方」の新バージョン収録。

ROCK IN JAPAN '97

1997年。ライブ盤。

8
SEVEN

1998年。引き続きギター中心。オープニング曲は勢いがあって初期の弾きまくりを再現している。ボーナス・トラックで過去の曲をリメイクするのは前作と同じ。シングルを含めれば3作連続だ。

9
HOLE IN THE SUN

2007年。キーボードが交代し、グレイト・ホワイトのマイケル・ローディーが加入した。キーボード以外の4人が作曲し、ボーカルも従来通りジャック・ブレイズとケリー・キーギーが分担している。キーボードのマイケル・ローディーにもボーカルの表記があるので全員がコーラスに参加していることになる。80年代に比べるとボーカルの音域が下がっている。キーボードがあまり活躍しないのでギター中心のハードロックだ。「ロックスター」はもっとシンセサイザーが前面に出てきてもよかったのではないか。「ドラマ・クイーン」「ラップ・イット・アップ」はギターがハードなロック。日本盤はボーナストラックで「炎の彼方」のアコースティックバージョンが入る。

10
SOMEWHERE IN CALIFORNIA

2011年。キーボードとギターが交代。ギターが中心のハードロックで、ナイト・レンジャーのアルバムの中では最もハードだ。「マン・イン・モーション」のバラードを除いたような作風。バラードと呼べる曲は「タイム・オブ・アワ・ライヴズ」の1曲だけ。オープニング曲の「グローイン・アップ・イン・カリフォルニア」は「ロック・イン・アメリカ」を意識した曲。ほとんどの曲がアップテンポで、サビはコーラスが多い。再結成以降では最高作。

11
HIGH ROAD

2014年。前作に続き、ギターが目立つ。1980年代からのメンバーはジャック・ブレイズ、ケリー・キーギー、ブラッド・ギルスの3人になっているので、キーボードを重視しないサウンドになっている。したがってキーボードがメーン楽器となる曲が少ないため、サウンドの幅が狭くなっている。ブラッド・ギルスのトレモロアームを駆使したギターは2、3曲なら面白みがあるものの、ほとんどの曲に入るとくどくなる。「ローリン・オン」はキーボードも活躍する。「ブラザーズ」はソウル風。

 
DAMN YANKEES/DAMN YANKEES

1990年。ナイト・レンジャーのジャック・ブレイズがスティクスのトミー・ショウ、テッド・ニュージェントらと結成したバンド。ドラム以外の3人がボーカルを取る。高品質な曲を書くメンバーが2人もいるため、ハードロック史上屈指のアメリカン・ロック作品となった。スティクス時代には低音域担当だったトミー・ショウが高音域のボーカルとなり、メロディーの華やかさを大きくのばしている。ほとんど全曲がヒットしそうなクオリティー。「ハイ・イナフ」「カム・アゲイン」のバラード2曲はすばらしい。「ハイ・イナフ」は全米3位の特大ヒットだが、日本人には「カム・アゲイン」が人気。全米13位、200万枚。「カミング・オブ・エイジ」は60位、「ハイ・イナフ」は3位、「カム・アゲイン」は50位。

 
DON'T TREAD/DAMN YANKEES

1992年。きらびやかなメロディーは変わらず。バラードはドラマティックさが後退した。テッド・ニュージェントがリード・ボーカルをとる曲がある。「ファイアフライ」「ホエア・ユー・ゴーイン・ナウ」「サイレンス・イズ・ブロークン」収録。全米22位。「ホエア・ユー・ゴーイン・ナウ」は20位、「サイレンス・イズ・ブロークン」は62位。

 
HALLUCINATION/SHAW BLADES

1995年。ダム・ヤンキースの中心メンバー2人によるグループ。ジャック・ブレイズがベース、トミー・ショウがギター、ダム・ヤンキースのマイケル・カーテローンとジャーニーのスティーブ・スミスがドラム。全体にシンプルな音づくりで、アコースティックだ。ダイナミックなロック・サウンドではない。アメリカでは70年代から、カントリー系のデュオがポップ・タッチの曲をたくさん一発ヒットさせているが、そのあたりを意識した雰囲気がある。世界的ヒットは眼中になく、アメリカ国内のみにターゲットを絞ったようなアルバム。

 
JACK BLADES/JACK BLADES

2004年。ナイトレンジャーのベース兼ボーカル、ジャック・ブレイズのソロアルバム。ソロとしてはこれが初めて。ナイト・レンジャーのメンバー全員と、ダム・ヤンキース、スティクスのトミー・ショウ、ダム・ヤンキースのマイケル・カーテローン、ラットのウォーレン・デ・マルティーニ、ジャーニーのニール・ショーンが参加している。キーボードはアラン・フィッツ・ジェラルドではなくマイケル・ローディー。曲ごとに演奏者がすべて書かれている。ショウ・ブレイズをややハードにしたようなサウンドで、90年代以降のオーソドックスなロックに近い。ソロアルバムなので、ナイト・レンジャーやダム・ヤンキースのようなサウンドを期待する方がおかしいが、面影は随所に見える。オープニング曲はダム・ヤンキースの「カミング・オブ・エイジ」の雰囲気にがある。