2000年。エレクトロニクス(電子機器)を使ったリズム、ビートと、自然から録音した音響、通常の楽器音を組み合わせ、長めのインスト曲を構成する。通常の楽器音といっても、演奏しているというよりは鳴らしているような音を使っている。一般的なポピュラー音楽ではなく、実験性が大きい。「ザ・バラード・オブ・ブロークン・バーディー・レコーズ」のみ女性のボーカルが使われる。「スロー・バイシクル」は徐々に音が厚くなっていきながら、メロディーを繰り返すミニマル・ミュージック。
2002年。前作よりもメロディー楽器が多く使われ、音階のある音楽として聞ける部分は多くなっている。リズムは編集加工の途中なのか完成なのか判断しにくい音になっている。女性ボーカルは前作に続きささやくような声。未完成を感じさせるサウンドによって中産階級の関心を引いている。
2004年。5人程度で録音。実験音楽に近い音響音楽。エレクトロニカと呼べる部分は減り、アンサンブルによって音楽が構成される。使われる音はほとんどが減衰音。女性ボーカルも含めて、ポピュラー音楽の中ではかなり聞き手を選ぶ。同じアイスランドのビョークやシガー・ロスよりも一般性は持たない。
2007年。女性3人、男性4人の7人編成。メロディーが分かりやすくなり、一般性が大きくなった。特に前半はポップだ。各メンバーがアンサンブルによってひとつの音楽を作ろうという意思がサウンドに見いだせる。はじいたり打ったりする減衰音の楽器を多用していたが、ストリングスや管楽器の持続音が増えた。後半はエレクトロニクスや編集加工した音が多くなる。
2009年。男性5人、女性2人の7人編成。ストリングス、鍵盤打楽器を中心とし、男女ボーカルが同時に歌うか、男性ボーカルが複数で歌うことが多い。「シング・アロング」「プロフェシーズ・アンド・リヴァースト・メモリーズ」「ザ・スメル・オブ・トゥデイ・イズ・スウィート・ライク・ブレストミルク・イン・ザ・ウィンド」はリズムが明快でドラムも使う。アルバムの後半は内省的なメロディーが多い。
2013年。男性3人、女性3人をメンバーとする。エレクトロニクスを増やし、アナログ楽器は少なくなっている。楽器の種類が少なくなったので、良く言えば全体の雰囲気が統一されている。リズムは「スロウ・ダウン」は子守歌のような曲。「ホェン・ガールズ・コライド」「キャンドルスティック」「ワン・スマイル」「ザ・カラフル・スタブウーンド」「スウィート・インプレッションズ」はムームにしてはリズミカルな曲で、そうした曲がアルバムの半分を占めると受け入れられやいアルバムになったという印象ができる。エレクトロニクスの人工的な音と女性ボーカルのことさら女性的な歌い方が硬さと軟らかさ、固さと柔らかさ、冷たさと温かさといった相反するイメージを想像させ、それが1つの曲となるところに面白さがある。