1968年。ボーカル、ギター2人、ベース、ドラムの5人で録音。13曲のうちカバー曲以外の9曲を全てロイ・ウッドが作曲している。全員がボーカルを取れるためコーラスは多彩で、曲はロイ・ウッド1人の作曲ながらポップスからロックンロールまで幅広い。ロイ・ウッドがもともと持っているロックンロール、ドゥーワップ趣味のほか、ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」や「リボルバー」の影響がみられる。「ウィークエンド」はエディ・コクラン、「ヘイ・グランマ」はモビー・グレイプ、「ジン・ウェント・ザ・ストリングス・オブ・マイ・ハート」はコースターズの「心の糸をかきならせ」のカバー。「ザ・レモン・ツリー」「ファイア・ブリゲイド」はロイ・ウッド特有のポップさ。
1968年。ライブ盤。EPとして出た。1999年のCDは9曲で発売。全曲がカバー。ザ・バーズの「ロックン・ロール・スター」、ラヴの「ステファニー・ノウズ・フー」、エディ・コクランの「サムシン・エルス」、ジェリー・リー・ルイスの「イットル・ビー・ミー」、スプーキー・トゥースの「サンシャイン・ヘルプ・ミー」を収録。CDではジャニス・ジョプリンの「心のかけら」、エレクトリック・ストリング・バンドの「トゥー・マッチ・イン・ラヴ」、ジャッキー・ウィルソンの「ハイヤー・アンド・ハイヤー」をカバーしている。エレクトリック・ストリング・バンドはザ・ムーヴのギターがムーディー・ブルース、ポール・マッカートニー&ウィングスのデニー・レインと結成していたバンド。ライブの演奏が終われば唐突に歓声が出てくる。演奏はギター2本とベース、ドラムだけによるバンドサウンド。
1970年。ギターが抜け、ベースが交代、4人編成。サイケデリックロックの影響を受け、前作から大幅に曲が長くなった。「ビューティフル・ドーター」以外の曲は5分から10分ある。A面の3曲はロイ・ウッドの作曲、B面の3曲はカバー。「ビューティフル・ドーター」はビートルズの「エリナー・リグビー」のような曲。「チェリー・ブロッサム・クリニック・リヴィジテッド」はギターソロでバッハのカンタータ「主よ、人の望みの喜びよ」とチャイコフスキーの「くるみ割り人形」の「中国の踊り」を使っているが、曲の後半にギターソロを付け加えただけのような構成。「フィールズ・オブ・ピープル」も11分弱のうち前半6分はポップスの体裁を整えているが、その後はインド音楽に影響を受けたギターソロになる。長い曲でもボーカルコーラスは健在だ。
1970年。ボーカルが交代しジェフ・リンが加入。ロイ・ウッドとジェフ・リンが多くの楽器を演奏する。ロイ・ウッドはサックス、チェロ、オーボエ、ジェフ・リンはピアノを使う。ジェフ・リンのピアノはブギウギやジャズ由来が多く、「フィール・トゥ・グッド」ではガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」の一節を入れている。ロックンロールや60年代ポップスを好む若者が、サイケデリックロックやプログレッシブロックの流行を受けて長い曲を作ったところは前作と同じ。ロイ・ウッドが多数の楽器を使い始め、ロックの範囲を広げていく端緒となるアルバム。
1971年。ベースが抜け3人編成。長くても5分半程度になったが、多くの人に受け入れられるほどのポップさを持つ曲は少ない 。「ドント・メス・ミー・アップ」はドゥーワップ、「ベン・クローリー・スティール・カンパニー」はカントリー調。全体にロイ・ウッドのベースが目立ち、「アンティル・ユア・ママズ・ゴーン」から「ザ・ミニスター」、「ワーズ・オブ・アーロン」」は曲の推進力となっている。多数の楽器を演奏するロイ・ウッドは、弦楽器ではチェロ、木管楽器ではオーボエ、ファゴット、金管楽器ではトロンボーン、テナーサックスを多用し、低音を好むようだ。