MOGWAI

  • イギリス、グラスゴー出身のインスト・バンド。5人編成。
  • ロックではほとんど目立たなかったグラスゴーが注目されるきっかけとなった。
  • ギター2、3人が音の厚みとハーモニーで轟音を作り、静寂との対比を明瞭にする。
  • インストがほとんどであるために聞き手の想像力をかき立て、探求心の強いファンの人気を得ている。

1
MOGWAI YOUNG TEAM

1997年。ギター2人、ベース、ドラムの4人編成。イギリス出身。ボーカルはほとんどなく、明確に入っているのは「ru・スティル・イン・2・イット」だけだ。曲によって語りのような声が効果音のように使われる。歪みがかかったギターが時折大音量になりながら、比較的ゆっくりしたテンポで不穏な雰囲気を出して進む。キーボードも使われ、ピアノがよく出てくる。エンディング曲の「モグワイ・フィア・サタン」は16分。日本盤は「カム・オン・ダイ・ヤング」と同時発売。

2
COME ON DIE YOUNG

1999年。フルート兼ギター兼キーボード奏者が加入し5人編成。ギターを弾く3人は全員キーボードも弾けることになっている。オープニング曲の「パンク・ロック」はイギー・ポップのスピーチが載っている。2曲目の「コーディ」でメロディーのついたボーカルがつく。3曲目以降は「モグワイ・ヤング・チーム」の路線で、基本的にインスト・バンドであることは変わらない。スタジオでギターなどの音を加工したり、曲にノイズを加えたりする点はポストロックと呼べる。新しい時代のサイケデリック・ロックとする見方もあるが、実際のところ、ロックの典型的なジャンルにはまらないということだ。このアルバムで日本デビュー。

 
EP+6

2000年。シングル盤収録曲を集めた企画盤。

 
KICKING A DEAD PIG

2000年。リミックス盤。

3
ROCK ACTION

2001年。8曲のうち4曲には歌詞が付き、それ以外の曲でもボーカルらしき声が入っている。ボーカルは低い声でゆっくり歌う。ストリングス、キーボードが増え、相対的にギターの出番が減っている。ゆっくりしたテンポや音の数は変わらない。8曲で38分強。

4
HAPPY SONG FOR HAPPY PEOPLE

2003年。ボーカルはなくなったが、サウンドはギターが少なくなったままで、キーボードが中心になっている。シガー・ロスに似たサウンドだ。エレクトロニクスやサンプリングの中にガレージ・ロックの荒い響きを織り交ぜている。

5
MR. BEAST

2006年。キーボードはピアノだけが目立って使われるようになり、ピアノとギターのインスト・アルバムになっている。ギターに大きな歪みをかけたごう音的な響きが幾分復活しており、それを5分台の曲にうまくまとめている。長い曲がなくなった。

 
FRIEND OF THE NIGHT

2006年。シングル盤。「フレッシュ・クラウン」はアルバム未収録曲。メロディーやテンポをあまり変えずに、徐々に重層的になっていくモグワイの典型的サウンド。

 
MOGWAI YOUNG TEAM

2008年。「モグワイ・ヤング・チーム」のボーナスディスク付き再発盤。ボーナスディスクの「ヤング・フェイス・ゴーン・ローング」は未発表曲で、録音は1997年。3分弱。「カトリエン」から「モグワイ・フィア・サタン」までの5曲はライブ。「モグワイ・フィア・サタン」はライブでは10分で終わる。

6
THE HAWK IS HOWLING

2008年。曲が長くなり、メロディーが明るい曲も出てきた。「ザ・サン・スメルズ・トゥー・ラウド」はギター(と思われる)メロディーが珍しく覚えやすい。ミニマル・ミュージックが面白いと感じられる人は新しい発見が多いかもしれない。オープニング曲は「アイム・ジム・モリソン、アイム・デッド」となっているが、ジム・モリソンとどう関係があるのかすぐには分かりにくい。

 
SPECIAL MOVES/BURNING

2010年。ライブ盤。「カム・オン・ダイ・ヤング」から1曲、それ以外の5枚から2曲ずつ選曲されている。「モグワイ・フィア・サタン」「フレンド・オブ・ザ・ナイト」「アイム・ジム・モリソン、アイム・デッド」も収録されているのでベスト盤としても聞ける。「ハンテッド・バイ・ア・フリーク」では観客の歓声が大きい。「コーディ」はボーカル付き、「ハンテッド・バイ・ア・フリーク」と「2・ライツ・メイク・1・ロング」は音響処理されたボーカルが付く。開演前の歓声は入っていないが、曲間にはMCが入っており、後半にはライブ終盤の雰囲気が出ている。ひとつのライブがCDに圧縮されているようだ。

7
HARDCORE WILL NEVER DIE,BUT YOU WILL.

2011年。メロディアスなことがすぐ分かるくらいに明瞭で、デビュー当時からよく言われた轟音というイメージは薄れている。ドラマチックな曲が多いインスト・グループに近くなった。極端に長い曲もなく、4分から6分が多い。穏やかに始まって徐々に盛り上がり、陶酔感を高めていくのはこれまでと同じ。

8
RAVE TAPES

2014年。キーボード、シンセサイザー、ボーカル付きの曲が増え、ギターの音の塊は少なくなっている。ギターによる「リマーダラード」はいい曲。「リペリッシュ」は詩の朗読のようなボーカル、「ザ・ロード・イズ・アウト・オブ・コントロール」はボコーダーを通したボーカルが付く。「ディーシュ」「ブルース・アワー」「ノー・メディシン・フォー・リグレット」はキーボードが多く使われる。キーボード、シンセサイザーは音色が豊富なので表現の幅が広がると同時に、ギターだけの曲を別の魅力として浮き上がらせることも可能だ。しかし今回は「ヘクソン・ボゴン」「マスター・カード」といったギター中心の曲がそれほど存在感を発揮しない。このアルバムの評価はキーボード、シンセサイザーの使用を表現の拡大と見るかギターの縮小と見るかで決まる。