MGMT

  • アメリカ、ニューヨークのロックバンド。2000年代後半に注目されたブルックリン出身の代表的アーティスト。
  • 60、70年代のポップスを参照しながら、エレクトロニクスを交えた夢想の世界をサウンドにしている。

1
ORACULAR SPECTACULAR

2008年。MGMTはアメリカ、ニューヨーク出身の男性2人組。ほとんどの音をコンピューターで作り、ボーカルを加えている。コンピューターで制作していても、サウンドはギター、シンセサイザー、ベース、ドラムで再現できるような70年代風ポップスだ。エレクトロニクスや人工的ビート音をあえて避けたことが聞きやすさにつながっている。メロディーには希望があり、2人のファルセットがファンタジーの世界へ誘う。サイケデリックといえばそうかもしれないが、むしろ夢の中の音楽と言った方が合っている。「エレクトリック・フィール」「キッズ」収録。日本盤ボーナストラックの「メタノイア」は14分ある。

2
CONGRATULATIONS

2010年。おおむね5人によるバンドサウンドとなり、前作以上にアナログ楽器を増やしている。エレクトロニクスはほとんど出てこず、深めのエコーで淡色の空想的世界を描く。ジャケットのイメージとは異なり、アルバム全体が60年代後半の雰囲気を持っている。9曲のうち8曲は2分から4分のポップな曲。「シベリアン・ブレイクス」は12分あり、4曲をつなぎ合わせたような曲だ。オープニング曲の「イッツ・ワーキング」はアップテンポでコーラスが60年代ソフトロック並みにすばらしい。「ダン・トリーシーの賛歌」は60年代ガレージロック風。「ブライアン・イーノ」はブライアン・イーノに言及。インスト曲の「レディー・ダダの悪夢」はレディー・ガガを意識しているだろう。

3
MGMT

2013年。アルバムの前半5曲と後半5曲でかなり明確に曲の方向を変えている。前半はメロディーが明瞭で抑揚を追いやすい。後半はエレクトロニクス、ドラムマシーンによるサイケデリック・ロックで、音が解決に向かって収束しない。ドローン効果もよく使い、「エイリアン」「悲哀」「死」「孤児」といった不安を感じさせるタイトルのイメージを増幅している。ほぼ全ての音を2人で作っているとすれば、バンド編成で活動するアーティストに対してその編成の意味を問うような、バンド編成に近いサウンドだ。「ミステリー・ディジーズ」はポピュラー・オーケストラであるウェルナー・ミューラーの曲が2曲サンプリングされている。「ユア・ライフ・イズ・ア・ライ」は他の曲の半分しかないほど短いがポップな曲だ。

4
LITTLE DARK AGE

2018年。アルバムを出すたびに曲調を変え、このアルバムでは80年代前半のシンセサイザー・ポップに近くなっている。雰囲気はポップではない曲も多い。アルバムタイトルから察すれば、ポップではない曲がこのアルバムの主軸であり、時代の反映だろう。メンバー2人はそれぞれ高い声と低い声を持っているが、「ジェイムス」「ホエン・ユー・アー・スモール」は低い方がボーカルをとる。オープニング曲は勢いがよく、女性ボーカルが効果的だ。「デイズ・ザット・ゴット・アウェイ」はインスト曲。「ワン・シング・レフト・トゥ・トライ」はいい曲。