MERCURY REV

  • ボーカル、ギター2人、ベース、ドラム、フルートの6人編成。その後ボーカル、フルートが抜け4人編成。アメリカ出身。
  • 初期の2枚は音を不明瞭にしたオルタナティブ・ロック、4枚目の「ディザーターズ・ソング」でキーボード主体のロックとなり、その後徐々にシンセサイザー主体の内省的なサウンドに進んでいく。
  • 一般的に言われるサイケデリック・ロックに近いのは初期の2枚で、3枚目以降は抑制が効いたポップなロック。

1
YERSELF IS STEAM

1992年。フルート奏者を含む6人編成で録音している。編成はそれほど重要ではない。バンドの体裁を保つ実験的なロック。ボーカルは低い声で怖い雰囲気。曲には何らかの音響効果を加えているが、バンドサウンドを破壊するような実験的効果ではない。「スウィート・オデッセイ・オブ・ア・キャンサー・セル・トゥ・ザ・センター・オブ・ユア・ハート」はホークウィンドの「シルヴァーマシーン」を弱くしたような音響効果がついている。「コニー・アイランド・サイクロン」「フリッタリング」はポップではないロック。「ヴェリー・スリーピー・リヴァー」は13分あり、後半は4秒間隔で8曲目から80曲目くらいまでを占めている。日本盤は1993年発売。

2
BOCES

1993年。邦題「ルーザー」。前作よりも聴きやすい曲が増えている。サイケデリック方向への実験は継続。ボーカルは抑揚をあまりつけないオルタナティブ・ロックの雰囲気がある。オープニング曲はキーボード、ホーンセクションを使い、音響加工も多い10分超の曲。レコードのように前半と後半で2分割され、後半の最初の曲も10分ある。歌詞のところどころに括弧が含まれている。日本盤の歌詞対訳はやや凝ったレイアウト。

3
SEE YOU ON THE OTHER SIDE

1996年。ボーカルが抜け5人編成。ボーカルはギターの1人が兼任。さらに聞きやすくなり、同時代のロックに近くなった。10分を超える曲と1分以下の曲が同時収録されていた前作までと異なり、3分弱から7分半までが9曲ある。キーボードと金管楽器はほとんどの曲に使われ、オルガン、ピアノがソウルの雰囲気を押し出している。オープニング曲のリコーダーソロは明るいメロディーだが、フェードアウトして別の曲になったかのようなつながり方をしている。「クローズ・エンカウンターズ・オブ・ザ・サード・グレード」は女性ボーカルがソウル、ゴスペル風コーラスをとる。「サドゥン・レイ・オブ・ホープ」は音を大量に詰め込んだ。

4
DESERTER'S SONGS

1998年。キーボード奏者が加入し6人編成。キーボードを弾くメンバーは3人おり、2人はメロトロンを弾く。シンセサイザーは使わず、ハープシコードや電気ピアノ、メロトロンの前身であるチェンバリンを使う。音響加工は少なくなり、弦楽器、金管楽器、古風なキーボード群がサウンドの中心となっている。「ザ・ファニー・バード」「ピック・アップ・イフ・ユア・ゼア」は以前のサイケデリックな雰囲気を思わせるが、他の曲はポップと呼べるほど聞きやすい。「オーパス40」のドラムはザ・バンドのリヴォン・ヘルム。

OPUS 40+SUPER B-SIDE TRACKS!

1999年。シングル盤にB面曲を追加した日本のみのCD。7曲収録。「ヒー・ウォズ・ア・フレンド・オブ・マイン」はボブ・ディラン、「モーション・ピクチュア」はニール・ヤング、「雨にぬれても」はBJ・トーマスのカバー。「デルタ・サン・ボトルネック・ストンプ」はケミカル・ブラザーズがリミックス。

GODDESS ON A HIWAY

1999年。シングル盤3枚を1枚にまとめた日本のみのCD。8曲収録。「キャロライン・セズ・パート2」はルー・リード、「ヴァンパイア・ブルース」はニール・ヤング、「孤独」はジョン・レノンのカバー。「カー・ウォッシュ・ヘア」「ヴェリー・スリーピー・リヴァーズ」はライブで、いずれもデビュー盤の曲なので長い。

5
ALL IS DREAM

2001年。キーボード、フルート、ドラムが抜け、ドラムが加入、4人編成。キーボードの種類が減り、ストリングスが相対的に多くなっている。全体的に曲がシンプルになり、アルバムタイトル通り幻想的な部分が増えている。「夜と霧」はナチスドイツの「夜と霧」命令との関係について、日本盤の解説で触れておくべきだった。ブックレットにはナチスドイツを思わせる十字がある。CD自体には白い鳥がある。ハーケンクロイツを描くことが難しい状況を考えれば、普通の十字ではない十字を描く意味を考えるべきだ。一人称は振り回される私、二人称、三人称は振り回す人と読める。

6
THE SECRET MIGRATION

2005年。サイケデリック・ロックのもともとのイメージから相当に離れた、キーボードの多いロック。前作の夢想的なサウンドを継承しており、不穏や陰鬱を感じさせることはない。「イン・ア・ファニー・デイ」はフィル・スペクターのような曲。「ブラック・フォレスト(ローレライ)」は前作に続き(「夜と霧」がドイツ関連とすれば)ドイツに関する曲。

THE ESSENTIAL MERCURY REV:STILLNESS BREATHES 1991-2006

2006年。邦題「ベスト(1991-2006)」。ベスト盤。2枚組。

7
SNOWFLAKE MIDNIGHT

2008年。シンセサイザー、エレクトロニクスを曲の背景音として使うようになり、音をあらかじめ定まった音階ではなく切れ目のない素材として用いている。音の高さと音色が決まっているキーボードと、音を物理的な周波数や波形で捉えるシンセサイザーの違いが曲調にも現れており、シンセサイザーが一般的になった80年代のゴシックロック、ニューウェーブを思わせる。従って明るい曲や前向きな曲は少なく、前作からは大きく内省的になっている。

8
STRANGE ATTRACTOR

2008年。ダウンロード販売のみのアルバム。