THE MARS VOLTA

  • アット・ザ・ドライヴ・インのギター、オマー・ロドリゲス・ロペスを中心とするバンド。
  • ボーカルのセドリック・ビクスラー・ザヴァラもアット・ザ・ドライヴ・インのメンバー。
  • 高い演奏技術を必要とするため、ベース、ドラム、キーボードは頻繁に変わる。
  • 曲は複雑なリズムを持つが、メロディーは解体していない。

 
TREMULANT EP

2002年。アット・ザ・ドライヴ・インのボーカルとギターの1人が結成したバンド。3曲入りEP。3曲で19分半。アット・ザ・ドライヴインではできなかったような長さで、曲も緊張感にあふれる。実験的にやってみたという印象。メンバーの表記はない。

1
DE-LOUSED IN THE COMATORIUM

2003年。キーボード、サウンド担当を含む6人編成。ベースはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー。ほとんどがギターのオマー・ロドリゲス作曲。EPのサウンドの路線で、構成力とハードさと緊張感を高めた。主要な曲は7分から8分で、最長12分。どの分野に限らず、曲が長い場合に最も要求されるのは編曲能力、すなわち聞き手を退屈させない力である。この点では、このアルバムは名盤で、メロディーの覚えやすさとも両立している。「イライアタルカ」「ディス・アパラタス・マスト・ビー・アンアースト」はすばらしい。

2
FRANCES THE MUTE

2005年。サウンド担当が死亡し、ベースが交代、パーカッションが加入。5曲で77分。1曲は6分弱、3曲は12分から13分、残りの1曲は32分。ストリングス、オルガン、トランペット、サックス、シンセサイザーを使用し、即興演奏を含めて演奏される。70年代のプログレッシブ・ロックを現在の感覚でやっている印象。ストリングスやオルガンが出てくると、そのサウンドに近いプログレッシブ・ロックバンドを思い出すことになってしまう。通常このような場面では、影響を受けたであろうアーティストを聞き手に連想させ、それ自体が聞き手に満足を与えることがある。しかし、マーズ・ヴォルタの場合、アルバムそのものに作品の圧倒的強さがあるため、そうした思考をしてしまうことが聞き手にもアーティストにももったいなく感じられてしまう。マーズ・ヴォルタはやりたいことをやりたいようにやっているだけで、聞いてからいろいろ考えてしまうのは聞き手の勝手な行動だ。もっとオリジナルの部分を多くしてほしいと思わせるほどすばらしい内容だ。

 
SCABDATES

2005年。ライブ盤。一般的なライブ盤の体裁ではなく、ライブで録音した素材をスタジオで加工し、一種のスタジオ盤のようなサウンドになっている。ライブ演奏の途中で他のサウンドや人の会話、物音などが挿入される。オープニング曲のイントロからサウンドのコラージュを使う。「テイク・ザ・ヴェール・サービン・タクスト」は13分、「サイカトリズ」は43分ある。ギターやキーボード、ボーカルが自由に演奏できるのはドラムとベースが安定しているから。即興演奏多数。

3
AMPUTECHTURE

2006年。前作のライブ盤の手法をスタジオ盤にも取り入れた。ギター、キーボード、サックスが即興演奏のようにからみながら曲が進んでいく。8曲で76分、最長14分。ボーカルのセドリック・ビクスラーは緊張感のある高い声だが安定してメロディーを作る。サックス、パーカッション、サウンド処理を含んだフリー・ジャズ風ロック。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギター、ジョン・フルシアンテが参加している。

4
THE BEDLAM IN GOLIATH

2008年。邦題「ゴリアテの混乱」。マーズ・ヴォルタがデビューして以来、一般的な形式に最も近いアルバムとなった。ほとんどの音をバンド・サウンドで作っており、サックスやストリングスはほとんど聞かれない。曲も最長で9分で、極端に長い曲はない。どの曲も通常の形式の曲ではないので、曲の終わり方は予測が付かず、突如終わることもある。収録されている曲は、長い曲を便宜上適当なところで切っただけとも解釈できる。もしそうならば、曲の切れ目は曲の終わりと始まりを意味するものではなく、単なるインデックスである。マーズ・ヴォルタの作曲手法は変わらず、CDというパッケージの都合で切れ目が設定されたと考えると、レコード、CDといったパッケージ音楽に慣らされた我々に、音楽の本来のかたちを考えさせる。アルバムタイトル曲の間奏はキング・クリムゾンの「21世紀の精神異常者」を思わせる。曲の緊張感はいわゆるプログレッシブ・ヘビーメタルのバンドよりもはるかに高い。ゴリアテとは旧約聖書に出てくる巨人の名前。ジャケットに描かれている大きな人物がゴリアテ。

5
OCTAHEDRON

2009年。邦題「八面体」。管楽器とサウンド担当が抜け、ギター2人、キーボード、パーカッションを含む7人編成。前作から一転して楽器の数が少ない、すき間の多いサウンドだ。やや不穏で混沌とした雰囲気。ミドルテンポがほとんどだ。オープニング曲は5分経ってやっとドラムが出てくる。ハードなロックと呼べるのは「コトパクシ」「ディスペレイト・グレイヴス」。「ウィズ・トワイライト・アズ・マイ・ガイド」はアコースティック・ギターの、「コペルニクス」はギターとピアノの弾き語り。

6
NOCTOURNIQUET

2012年。5人編成で録音。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード、エレクトロニクスが使われる。ストリングス、ホーン・セクションはほとんど出てこない。ボーカルメロディーと、それに付随するメロディー楽器は一般的なロックの体裁を保つが、リズムやリズム楽器が技巧的になっている。セドリック・ビクスラー・ザヴァラがほとんどのボーカルをとっている。「エンプティ・ヴェッセルズ・メイク・ザ・ラウデスト・サウんど」「ラポーシュカ」は2010年代に録音した1970年代のプログレッシブ・ロックとも言える。