MANESKIN

イタリア出身のロックンロールバンド。2021年のユーロビジョン・ソングコンテストで優勝し、ロックンロールバンドが優勝したことで世界的に注目された。ダミアーノ・デイヴィッド(ボーカル)、ヴィクトリア・デ・アンジェリス(ベース)、トーマス・ラッジ(ギター)、イーサン・トルキオ(ドラム)。

CHOSEN

2017年。EP盤。最初のシングル曲の「チョーズン」に自作曲1曲とカバー曲5曲を追加した。自作曲の2曲は両方とも曲の始めにあいさつのような呼びかけが入る。カバー曲のうち2曲はヒップホップで、ロックンロールのバンドでもヒップホップの文化を通過し咀嚼することが普通の時代に入ったことを認識させる。フォー・シーズンズのカバー、「ベギン」はヒットした。日本盤は2022年発売。

1
IL BALLO DELLA VITA

2018年。キーボードやストリングス、ホーンセクションを入れて整えられたポップなロックンロール。12曲のうち5曲は英語、7曲はイタリア語で歌っている。アコースティックギターを使い、イタリア語で歌う「トルナ・ア・カーザ」「ラルトラ・ディメンショーネ」などはイタリア国内の聞き手を広くつかめる。「アー・ユー・レディ?」はレゲエの影響を受けている。「フィアー・フォー・ノーバディ」はアップテンポで踊りやすい曲だ。日本盤は2022年発売。

2
TEATRO D'IRA VOL.1

2021年。ユーロビジョン・ソングコンテストで優勝する前に出たアルバム。8曲で29分の短さ。前作に比べてロック中心の曲になり、イタリアの歌謡曲を思わせる曲はない。キーボードなどを使わず、ほぼ4人で演奏を完結している。ロックンロールの勢いを重視した、バンドの本来の方向性が出ている。「リヴィディ・スイ・ゴミティ」「イン・ノーメ・デル・パードレ」はヒップホップをロックと同じように聞いてきたメンバーが、ロックンロールの上にラップ調のボーカルを乗せている。ロックにラップを取り入れるバンドはいくらでもあったが、ラップではなくラップ調で20年代の新しいロックンロール像を示した。「ジッティ・エ・ブオーニ」収録。

TEATRO D'IRA VOL.1

2022年。ボーナストラックを入れ替えた来日記念盤。ライブを4曲収録。「アイ・ワナ・ビー・ユア・スレイヴ」はスタジオ録音の1.5倍の長さ。

3
RUSH!

2023年。ユーロビジョン・ソングコンテストの優勝後、最初のアルバム。マックス・マーティンをはじめとする職業作曲家やプロデューサーが全面的に参加している。マックス・マーティン(とそのチーム)はメロディアスでポップな曲を量産し、幅広い聞き手を獲得できるヒットメーカーだ。実績も無数にある。既存の職業作曲家をマネスキンに合流させるとどうなるのかは分からない。古典的ロックンロールと現代ロックンロールとヒップホップとレゲエを同じように聞く20年代的感性を、90年代から2000年代の白人好みのメロディーに接続させることで、失われるものも大きい。このアルバムでは、ザ・ストロークス、ウィーザー、ジャック・ホワイトをひとつのバンドでやっている。平均3分の曲が17曲、日本盤ボーナストラックを入れても18曲並ぶが、前作よりメロディアスな部分があっても、それがマネスキンのメロディーなのか、マックス・マーティンらのメロディーなのか。ヒップホップとレゲエの影響も後退したが「クール・キッズ」は80年代のヒップホップ風。