LUCA TURILLI/LUCA TURILLI'S DREAMQUEST/LUCA TURILLI'S RHAPSODY

ルカ・トゥリッリはイタリアのヘビーメタルバンド、ラプソディーのギター。2010年頃まではラプソディーと並行してソロアルバムを出していたが、2012年にはラプソディー・オブ・ファイアを分割して新たに自分のバンドを結成している。ギター、キーボード、オーケストラ編曲を1人で担当することが多い。

1
KING OF THE NORDIC TWILIGHT

1999年。ラプソディのギター、ルカ・トゥリッリのソロ・アルバム。ボーカルはディオニソスのオラフ・ヘイヤー、ベースはヘヴンズ・ゲイトのギター、サシャ・ピート、ドラムはヘヴンズ・ゲイトのベース、ロバート・ヒューネケ。ラプソディに似ているのはしょうがないが、違うところを探せば、第1バイオリンとビオラ奏者がソロをとるところだ。

 
THE ANCIENT FOREST OF ELVES

1999年。シングル盤。「ウォリアーズ・プライド」のバージョン違い収録。

2
PROPHET OF THE LAST ECLIPSE

2002年。現代的なサウンド処理と古典的な楽器や合唱をうまく配合した名盤。ボーカルはボーカルだけに徹して、コーラスは合唱団に任せている。「アイニグマ」はエニグマ、「ゼフィアー」はゼファーのことと思われる。未来版の宇宙観を描き、ジャケットもそれに沿って作られたと推測できる。ほとんどの曲が4分から5分というのも重厚すぎず軽すぎず、疲れない。

 
DEMONHEART

2002年。デビュー盤と最新盤からのバージョン違い2曲、未発表曲1曲、ハロウィンの「アイム・アライヴ」のカバー収録。

3
THE INFINITE WONDERS OF CREATION

2006年。男声ボーカル、女声ボーカルを含む5人編成。ルカ・トゥリッリはギター兼キーボード。男声ボーカルはディオニソスのオラフ・ヘイヤー、女声ボーカルは黒人ゴスペル・ジャズ歌手。ルカ・トゥリッリやラプソディのミドルテンポの曲に近いサウンド。キーボードとオーケストラを使うところが増え、これまでのアルバムよりもロックらしさが少ない。万物の生命の源である地球を主題としているため、現代的に機械処理されたサウンドが出てくる余地がない。ドラマチックさや神秘性の表現のため、音量や音の数を小さくした部分がよく出てくる。

VIRUS/LUCA TURILLI'S DREAMQUEST

2006年。シングル盤。メンバーの表記はないが、ボーカルは女声。「プロフェット・オブ・ザ・ラスト・エクリプス」のようにコンピューターを駆使したサウンドが目立つ。

LOST HORIZONS/LUCA TURILLI'S DREAMQUEST

2006年。3人編成。ルカ・トゥリッリはキーボード、他の2人はボーカルとギター。ベースとドラムはヘヴンズ・ゲイトの2人が演奏。キーボード中心のロックで、ギターは補助的な楽器になっている。ルカ・トゥリッリのサウンド面での特徴は、ヘビーメタルにオーケストラによる映画音楽を乗せることである。クラシックではなく映画音楽というのがポイントで、サウンドの大部分を管弦楽に頼る必然性はない。ルカ・トゥリッリが影響を受けたと思われるジョン・ウィリアムスは、オーケストラを率いながら、ドラムやキーボードも取り入れている。したがって、ルカ・トゥリッリが目指すサウンドは「プロフェット・オブ・ザ・ラスト・エクリプス」以降、一貫しており、広い意味ではラプソディもその範囲内に収まっている。しかし、ドラマチックさを強調するための技巧はまだ改善の余地がある。最初から最後まで重厚にする必要はないのではないか。「キョウトズ・ロマンス」は日本の京都のことだと思われる。

ASCENDING TO INFINITY/LUCA TURILLI'S RHAPSODY

2012年。ラプソディー・オブ・ファイアが分裂し、ギターのルカ・トゥリッリが新たに結成したバンド。ギター2人の5人編成。キーボードはルカ・トゥリッリが兼任している。ラプソディの初期のようなサウンドに戻った。ギターの活躍が多く、曲がロックのハードさを保っている。大仰さや大作主義をどの程度取り入れるかによって相違があったようだ。ボーカルはラプソディー・オブ・ファイアよりも高い声で朗々と歌う。「クワンタム・エックス」は2分半のイントロ。「オブ・ミカエル・ジ・アークエンジェル・アンド・ルシファーズ・フォール」は3部構成で16分ある。ボーナストラックはハロウィンの「マーチ・オブ・タイム」とラウドネスの「イン・ザ・ミラー」のカバー。

PROMETHEUS SYMPHONIA IGNIS DIVINUS/LUCA TURILLI'S RHAPSODY

2015年。邦題「プロメテウス~炎のシンフォニー」。プロメテウスは火を創造したとされるギリシャ神話の神。ボーカル、ギター2人、ベース、ドラムの5人編成。キーボードはルカ・トゥリッリが演奏し、オーケストラと合唱もルカ・トゥリッリが編曲している。映画を模したジャケットや大仰な編曲はエンニオ・モリコーネ、ジョン・ウィリアムスのロック版を感じさせる。イタリアのオーケストラのほとんどが歌劇場の座付きであり、歌劇とともにオーケストラと合唱があることを考えれば、ルカ・トゥリッリはイタリアの音楽文化を反映したアーティストだと言える。女性がリードボーカルをとる「闇夜」はその雰囲気がよく出ている。物語の進行を担う男性ボーカルが弱く、オーケストラや合唱に飲み込まれている。「オブ・ミカエル・ジ・アークエンジェル・アンド・ルシファーズ・フォール・パートII:コデックス・ネメシス」は5部構成で18分あり、前作のパート1を合わせると8部構成で34分ある。この曲も含め、大仰さを多用しすぎて印象が薄れる曲が多い。「闇夜」はショパンのノクターン第1番を使用。ボーナストラックは独自のイントロを付けたライオットの「サンダースティール」のカバーで、ボーカルはプライマル・フィアのラルフ・シーパースがとっている。

ZERO GRAVITY/TURILLI /LIONE RHAPSODY

2019年。ラプソディーのデビュー時のボーカル、ファビオ・リオーネが加入し、ドラムもラプソディーのアレックス・ホルツワースになった。したがって、メンバー全員が2000年の「ドーン・オブ・ヴィクトリー」から2010年の「ザ・フローズン・ティアーズ・オブ・エンジェルズ」までのラプソディーと全く同じとなった。キーボード、作詞作曲、編曲もルカ・トゥリッリで、ルカ・トゥリッリの個人的欲求を反映するバンドだ。ラプソディー時代の幻想文学的なイメージを継承しているが、このバンドではサイエンス・フィクションに近くなっている。オーケストラは使わず、シンセサイザーで代用する。合唱、ボーカルはまだクラシック調だ。ファビオ・リオーネをボーカルに迎えて、かつてのラプソディーのメンバーを揃えたのであれば、なぜそうする必要があったのかを音楽で分かりやすく示さないと、支持者は縮小するだけだ。「デコーディング・ザ・マルチバース」「アイ・アム」はクイーンの影響がある。