2007年。ボーカル兼キーボード、ボーカル兼グロッケンシュピール、バイオリン兼キーボード、ギター2人、ベース、ドラムの7人編成。イギリス出身。男性4人、女性3人で、全員にボーカルの表記がある。「ユー!・ミー!・ダンシング!」は6分あり、6曲のうちこの曲のみアルバム「ホールド・オン・ナウ、ヤングスター…」に収録されているがバージョンは違う。ボーカルはアマチュア並みの歌唱力だが、それが否定的な評価にはならず、むしろ演奏の楽しさに合ったポップさを備えている。「フロントワーズ」はペイヴメントのカバー。
2008年。男女ボーカル、キーボード、バイオリン、グロッケンシュピール(鉄琴)を中心にサウンドを作り、アップテンポでアマチュア風に演奏する。いわゆるガレージ・サウンドのような角のとがった生々しい音ではなく、7人全員が楽しく演奏している雰囲気がある。ボーカルやコーラスが若干向上している。「ブロークン・ハートビーツ・サウンド・ライク・ブレイクビーツ」はイントロの素っ頓狂なカウントが面白い。同じリズムがアルバムの中で何度も出てくるが、前向きで明るいメロディーを伴っているので、ロックン・ロールの決まったパターンと同じように好意的に解釈できる。コーラスは多声にしようという意図はなく、単に勢いで合唱することがほとんどで、そこが親しみやすさにつながっている。
2008年。最近のアーティストとしてはとても早い間隔で出てきたアルバム。10曲で32分しかない。アマチュアらしさを残しているがアレンジがいい加減なわけではない。最後の曲は突然終わる。70分も同じような曲調が続けば評価は下がるかもしれないが、32分なら好意的なところで踏みとどまる。次のアルバム以降もこの路線ならやや苦しい。
2010年。これまでのような、言わばガレージポップのようなサウンドもやっているが、不協和音がかなり勝つような部分も出てくる。これが1曲目から使われるため、アルバムのイメージが変わる。インスト曲の「200-102」は残響が深い金属音。メンバーが7人いて、サウンドが若干変化していて、作曲者がバンド名義になっているということは、メンバーの誰かが個性を強く発揮したのだろう。それが多彩さにつながっている。女性コーラスがつくとその部分はポップに聞こえる。数曲でホーン・セクションを取り入れている。
2011年。ドラムが交代し、ボーカル兼キーボードが2人加入、男性5人、女性3人の8人編成。ジャケットの雰囲気がサウンドのイメージを表している。4曲目まではそれほど暗くはない。ほとんどの曲に邦題が付いており、暗い方に向かっている。8人いるメンバーが同時に、あるいは多数で音を出すことが少なく、楽器の数が少ないと陰影が大きくなる。そこに遅いテンポが加わると、前のめりの軽快感がなくなる。タイトルからすると、意図してそのようなサウンドにしているようで、過渡期にあるサウンドと言える。
2013年。ベースとバイオリンが抜け、男性5人、女性1人の6人編成。女性が減り、バイオリンが抜け、グロッケンシュピールも少なくなると、サウンドとしては一般的なバンドに近くなってくる。男女混成で、多様な楽器が含まれ、技術に構わないところがこのバンドの初期にあった魅力だったが、徐々にそれが薄れてきている。ポピュラー音楽、あるいはロック全体に横たわる音楽性から離れていることが新しさの源泉だが、ライブとアルバム制作を重ねるうちにその音楽性が身についてしまい、否応なく取り込まれている。高くなった演奏技術は、安心して聞けるということでもあるが、スリルの期待を減らす。曲調は前作よりも明るくなっており、楽しさは感じられる。「アボカド、ベイビー」のコーラスはチアガールを使っているという。
2017年。男性6人、女性1人の7人編成。アップテンポの曲が増え、ボーカルに参加するメンバーも多い。曲によって金管楽器、ストリングスを使う。グロッケンシュピールのような音もキーボードで代用している。デビュー当時の親しみやすさや勢いが戻ったようなサウンド。音の感触もガレージポップに近い。デビューから10年経って、節目としてサウンドを回帰させたのは理解できる。今後どのような方向に進んでもしばらく好意的に解釈できるだろう。