リトル・リバー・バンドはギター3人を含むロックバンド。オーストラリア出身。全盛期は70年代後半から80年代。70年代アメリカの、ウェストコースト、アダルト・オリエンテッド・ロックのようなサウンドに近く、厚いボーカルハーモニー、壮麗なギターを特徴とする。80年代後半から低迷し、オーストラリアでの活動が中心となった。代表曲は「ロンサム・ルーザー(孤独な負け犬)」「クールな変革」「追憶の甘い日々」「ナイト・アウル」「思い出の中に」。
1975年。ギター3人の6人編成。ボーカルはグレン・シャーロック。ギター3人のうち2人にもリードボーカルがつく。ボーカルができる3人が作曲もしている。全曲にピアノまたはキーボードが使われており、曲によってサックス、ストリングスも使う。デビュー盤としては贅沢なサウンドとなっている。ボーカルの3人はそれぞれ特徴があり、スリー・ドッグ・ナイトのようにポップスとソウルのボーカルを使い分ける。「自由の女神」はアメリカへの憧憬がある。オープニング曲の「遥かなる道」は9分近くある大曲ながらヒット。「アイル・オールウェイズ・コール・ユア・ネーム」「キュリオシティ」「エマ」収録。
1976年。ギターとベースが交代。ギターが3人ともリードボーカルがとれるようになり、専任ボーカルもギターを弾くため、リードボーカル兼ギターが4人となった。専任ボーカルが歌う「セーヌ・シティ」「スウィート・オールド・ファッション・マン」は、アコースティックギターの弾き語りが拡大したような曲。アルバム全体としては泥臭さがあるカントリーロックあるいはブルースロックで、ウェストコーストの雰囲気は薄くなっている。アメリカ盤は収録曲と曲順が異なる。
1977年。邦題「妖しいダイアモンド」。ギターはリードギター2人とアコースティックギターの分担になり、アコースティックギターはボーカルハーモニーの編曲をするようになった。「愛をもういちど」「ウィッチリー」「ハッピー・アニヴァーサリー」はそれが生かされている。「ザ・ドリフター」「光を求めて」はファンクのようなホーンセクションが入る。「愛をもういちど」「ハッピー・アニヴァーサリー」がアメリカでヒットし、このアルバムから全盛期に入った。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」が前年の末に発売され、77年に大ヒットしたこともこのアルバムに追い風になったとみられる。オーストラリア盤、イギリス盤とアメリカ盤、日本盤は収録曲が異なる。
1978年。邦題「夢追人」。オープニング曲のイントロにシンセサイザーが入っていることが、このアルバムのイメージを方向付けている。ホーンセクションをあまり使わず、ブルースやソウルを思わせる歌い方を減らしたことも、その方向に合っている。電気ピアノとパーカッション主体の「追憶の甘い日々」はアダルト・オリエンテッド・ロックに近く、ウェストコーストとは異なる新しいサウンドを打ち出した。8分ある「時の流れに」は、後半がベースと電気ピアノのセッションになっている。
1979年。邦題「栄光のロング・ラン」。ベースが交代。「ロンサム・ルーザー(孤独な負け犬)」「クールな変革」を含む70年代の代表作。コーラスの爽快さをどの曲でも生かしている。ギターもエレキギターとアコースティックギターで役割を分け、メロディーで切り込む時にエレキギター、リズムを刻む時にアコースティックギターになることが多い。「愛にロックン・ロール」「魔力の女」収録。
1980年。ライブ盤。2枚組。1枚目はオーケストラとの協演、2枚目はキーボード奏者が参加する。「堕天使」の前半2分半は映画音楽風のオーケストラ演奏。ギターの音色やボーカルハーモニーがアルバムとほとんど変わらない。曲の演奏中は観客が静かに聴くライブのようだ。歓声は曲が終わるころに出てくる。「ロンサム・ルーザー(孤独な負け犬)」「クールな変革」「ハッピー・アニヴァーサリー」は収録されていない。2枚目はベスト盤に入らないような曲が多い。
1981年。邦題「光ある時を」。ベースが交代。プロデューサーはビートルズを制作したジョージ・マーティン。オープニング曲の「ナイト・アウル」はベース、最後の「ガイディング・ライト」はギターがボーカルをとり、それ以外の曲をグレン・シャーロックがボーカルをとる。「心変わり」「思い出の中に」「フル・サークル」などは3人がハーモニーとしてボーカルをとっているような曲だ。「愛が欲しい」「風まかせの人生」はロックンロールの雰囲気がある。
1982年。邦題「L.R.B.グレイテスト・ヒッツ」。ボーカルが交代。12曲収録。「二人の愛は」は新曲で、ボーカルはジョン・ファーナム。6曲を追加した拡大版が2000年に発売された。
1983年。邦題「夏への扉」。ギターが交代。ジョン・ファーナムの声はウェストコーストのサウンドに合っているが、このアルバムのサウンドはウェストコーストというよりもニューウェーブが入ったロックとなっている。ボーカルハーモニーは少なくなり、バンドとしてベスト盤で区切りをつけ、新しいサウンドに向かったと言える。「ダウン・オン・ザ・ボーダー」は「L.R.B.グレイテスト・ヒッツ」に新曲として収録されていた曲と同じ。「悲しみマイ・マインド」「思い出フリーウェイ」収録。日本盤はジャケットが異なる。
1985年。邦題「非情のゲーム」。ギターとドラムが交代。デビュー時からのメンバーはギターの1人だけとなった。楽器の中心はギターからシンセサイザーに移りつつあり、アルバムの後半はポップなロックになっている。ウェストコーストの面影はない。「白亜のカテドラル」は教会オルガンを模したシンセサイザーが中心。「ピース・オブ・ザ・ドリーム」収録。
1986年。粘り気のあるギターが減り、多くの曲はリトル・リバー・バンドである必然性が薄れている。このころの白人のロックバンドはノイズや不協和音をできるだけ排除しようとする傾向があり、それは当時の英米白人の精神状況を反映している。「フェイス・イン・ザ・クラウド」収録。
1988年。未発表曲集。オーストラリアで発売。
1988年。ボーカルとドラムが交代。ともにデビュー時のメンバーが復帰し、ボーカルはグレン・シャーロック。シンセサイザーの使用が抑えられ、ギター主体のサウンドになっているものの、メロディーは軽い。「フェイス・イン・ザ・クラウド」は「ノー・レインズ」収録曲の再録音で、疑似ライブになっている。
1990年。再びシンセサイザーを使う。「ノー・レインズ」「モンスーン」の曲調で、この時代には中途半端なサウンドだ。「リッスン・トゥ・ユア・ハート」収録。
1992年。ライブ盤。
1995年。ベスト盤。2枚組。
2001年。ギター、ボーカルが抜け、ベースがボーカルを兼任。デビュー時のメンバーはいなくなった。アコースティックギターを多用する牙を抜いたロック。コーラスの整合感もそれほど気にしないようになった。「ナイト・アウル」「クールな変革」を再録音して収録している。
2002年。ライブ盤。2001年の録音。「ホエア・ウィ・スターテッド・フロム」のメンバーで演奏している。14曲のうち「ホエア・ウィ・スターテッド・フロム」収録曲を5曲、過去のヒット曲を9曲演奏。「ナイト・アウル」は「ホエア・ウィ・スターテッド・フロム」の曲調。過去のヒット曲は歓声が大きく、「ナイト・アウル」も曲の途中で歓声が上がる。
2004年。アコースティックギター、キーボードを中心とするポップス。「ホエア・ウィ・スターテッド・フロム」の路線。日本盤は出なかった。
2006年。ドラムが交代。デビュー盤から「テスト・オブ・タイム」までの曲を再録音。編曲に重点を置き、新しいイントロを加えたり、フェードアウトせずに終わったり、間奏を変えたりしている。「遥かなる道」「ハッピー・アニヴァーサリー」はかなり変化しており、「追憶の甘い日々」は後半に新しい演奏を加えている。「二人の愛は」は大きく変わっている。現在のメンバーで演奏しやすいような編曲、好みのサウンドに変えたような編曲だ。
2007年。クリスマス曲集。
2011年。クリスマス曲集。
2013年。「ホエア・ウィ・スターテッド・フロム」「テスト・オブ・タイム」に比べればロックに近づいているが、快活というほどではない。ボーカルを含め、全体的に音階が下がっているため、緊張感や爽快感はあまりない。アーティストとしての経験を重ねれば、若い時期とは異なる側面を提示することも可能だろうが、そこまでには至っていない。
2016年。過去のヒット曲を現在のメンバーが再録音している。過去のサウンドを可能な限り忠実に再現しており、そのためにコーラスの要因も参加している。それでも「クールな変革」は原曲の張りのあるボーカルハーモニーを再現することはできず、当時のメンバーだからできた曲ということを再確認させる。「ロンサム・ルーザー(孤独な負け犬)」は原曲そっくりだ。「ユー・セイヴド・ミー」「オール・ザ・ヤング・フェイセズ」は新曲。
2017年。ライブ映像7曲と音声1曲とインタビュー音声の企画盤。7曲のうち6曲はオーケストラと協演し、クラシック調の金管楽器、弦楽器が加わる。オーケストラが参加しない「クリーン・ザ・ウォーター」は新曲。音声の「プロディガル・サン」はライブ写真をコマ送りした映像が流れる。「二人の愛は」はブルース調。
2017年。「栄光のロング・ラン」から「ノー・レインズ」までのアルバムを集めたボックスセット。
2017年。2000年以降のアルバムのうち「カッツ・ライク・ア・ダイアモンド」とクリスマスアルバムを除くアルバムを収録。CD5枚とDVD1枚の6枚組。