1984年。スティーブ・グリメットのボーカルがけた外れにすごい4人組。安定したボーカルがいると聞いているときの心の余裕まで違う。オーソドックスなヘビーメタル。全米73位はメタリカより上、クイーンズライチと同レベル。
1985年。アイアン・メイデンやジューダス・プリースト、クイーンズライチといった第一級のヘビーメタルバンドは、それぞれがサウンド面で強い個性を持っているが、このバンドはオーソドックスであることが個性になっている。スティーブ・グリメットは相変わらず迫力のあるボーカル。全米108位。
1987年。セールス的に大きな成功を収める可能性があった。メロディーが覚えやすく、サビは印象的で、サウンドは高品質なヘビーメタルにとどまっている。名作。全米93位。
1989年。スティーブ・グリメットが加入したスラッシュメタルバンドで、これが3枚目。スティーブ・グリメットの実力が最も生かされるのは高く伸びる声だが、「メタル・ジャスティス」のころのメタリカに近いサウンドでは、その実力を発揮できない。メタリカのサウンドは、ボーカルのジェイムス・ヘットフィールドがスティーブ・グリメットのような高い声を出せないからこそあのようなサウンドになっている。このアルバムはスティーブ・グリメットがいるということで名盤になっており、実際、内容は十分であるけれども、スティーブ・グリメットが参加したアルバムでは最も役不足なアルバムだ。
1993年。邦題「獅子の咆哮」。グリム・リーパーの「ロック・ユー・トゥ・ヘル」並みの品質をもってデビューしたキーボードを含む5人組。オンスロートとは違い、オーソドックスなヘビーメタルなので、スティーブ・グリメットはうまく歌っているが、同時に弱点もさらしている。アップテンポの曲は勢いどおりに声を張り上げていればいいが、「オール・アイ・ニード」のようなミドルテンポの曲には、もっとそれなりの歌い方があるはずだ。ここがグレン・ヒューズやロニー・ジェイムス・ディオとの差になっている。「キャント・ビリーヴ」収録。ジャケットは「パンドラの箱」。
1994年。ギターとベースが脱退し、4人編成になった。サウンドも変わり、ハードさはやや後退、コーラスはなし。小粒になったがスティーブ・グリメットのボーカルはうまくなっている。
1998年。スティーブ・グリメットとキーボード以外のメンバーが入れ替わり、ギターとベースは兼任。前作と同路線。ボーカルが奥に引っ込んでいるため平板に聞こえる。ギターはやや現代風。
2002年。スティーブ・グリメットがライオンズハートのギター、ニック・バーと結成したバンド。
2004年。ドラムがキーボードを兼任する4人編成。ごくオーソドックスなヘビーメタルで、相変わらずスティーブ・グリメットのボーカルはすばらしい。「獅子の咆哮」に比べれば張りや声量がやや衰えたような気がする。
2007年。グリム・リーパー、ライオンズハートのボーカル、スティーヴ・グリメットのバンド。ソロアルバムではない。4人編成。キーボード奏者はいないが、何曲かに明確に使われている。「ラス・オブ・ザ・リパー」はグリム・リーパーの曲なので、スティーヴ・グリメットにとっては再録音ということになる。実力のあるボーカルなので、本当は何を歌ってもうまいのだろうが、オーソドックスなヘビーメタルを歌うとなおうまく聞こえる。ライオンズハートにも近いサウンド。スティーヴ・グリメットがいなくてもヘビーメタルとしてすばらしい曲が続く。女声ボーカルやコーラスも使い、4人編成のバンドということにあまりこだわっていないようだ。アルバムの最後はハードでスピーディーな曲。そのあとのボーナストラックが不要なくらいだ。