1985年。ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタルのバンドであるエンジェルウィッチが解散した後、そのメンバーがボーカルのカル・スワンと結成したバンド。メンバーはボーカルとギターとベース兼キーボードの3人で、ドラムは正式メンバーではない。ゲスト・ミュージシャンとしてジューダス・プリーストのドラムのレス・ビンクス、サイモン・ライト、ローン・スターのギターのスティーブ・マンが参加している。曲のほとんどをボーカルのカル・スワンとキーボード奏者が書いており、適度なキーボードとコーラスの厚さで質の高いハードロックになっている。ブリティッシュ・ロック偏重の傾向がある日本では、ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタルの魅力を、哀愁を帯びたやや暗い疾走感に求めることが多い。しかし、ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタルがどのように発生したかの経緯は別にして、攻撃性のあるヘビーメタルよりも、デフ・レパードやプレイング・マンティス、ディーモン、シャイのようなハードロックの方が相対的に活発だったのではないかと思われる。ポップであることはそれ自体、哀愁を帯びていることと同価値であって、音楽的な優勝劣敗はない。このバンドが話題に上る理由の多くは、ライオンのカル・スワンが在籍していたこと、エンジェルウィッチの後継バンドであるというところである。しかし、メンバーの経歴や離合が他のバンドから孤立していたとしても、曲の良さでもっと語られてよいアルバムだ。
1986年。6曲入りミニ・アルバム。日本のみの発売。オープニング曲の「パワー・ラブ」だけが一般的に知られているライオンのメンバーで録音されている。「宿命の砦」にも収録されている。「ストレンジャー・イン・ザ・シティ」は「トラブル・イン・エンジェル・シティ」収録曲とは別のバージョンで、タイタンのメンバーがキーボードを弾いている。この曲のみロニー・モントローズがプロデュース。残りの4曲はすべて新バージョンで「トラブル・イン・エンジェル・シティ」に収録。全体としてキーボードをあまり使わず、ギターを中心としたハードロックで、カル・スワンのパワフルなボーカルを生かしている。
1987年。邦題「デンジャラス・アトラクション~宿命の砦」。タイタン路線だが、ポップさと大仰さは抑えられ、質の高いハードロックだ。コーラスが厚く、売れる要素は大いにあるが、ビジュアル優先の時代にプロモーションが弱かったのは運が悪かった。「ネバー・サレンダー」「デス・オン・レッグス」収録。
1989年。10曲のうち5曲は「パワー・ラブ」に収録されている曲の再録音。「ロック・アップ・ユア・ドーター」はスレイドのカバー。新曲は4曲。「ストレンジャー・イン・ザ・シティ」はサビのメロディーが従来よりよくなっている。タメの解放を効果的に改良している。「エンジェル・シティ」とはロサンゼルスの別名。
1986年。ライオンのドラム、マーク・エドワーズのソロ・シングル。4曲のうち3曲でビリー・ライスギャング、1曲でライオンのカル・スワンがギターを弾いている。ディオのキーボード、クロード・シュネル、ベック・ボガート&アピスのベース、ティム・ボガートが参加。エレキ・ドラムはデビッド・リー・ロスのドラム、グレッグ・ビソネット。「ダンス・ウィズ・ザ・デビル」はコージー・パウエルのインスト曲のカバー。それ以外の3曲はビリー・ライスギャングとマーク・エドワーズの作曲で、アップテンポ。1曲目のタイトルは「カミカゼ」だ。
1991年。バッド・ムーン・ライジングはライオンのボーカル、カル・スワンとギターのダグ・アルドリッチのプロジェクト。ベース、ドラム、キーボードはゲストで、マイケル・シェンカーが1曲でリード・ギターをとっている。サウンド傾向はライオンと同じ。MSGのボーカル、ロビン・マコーリーとベースのロッキー・ニュートンも参加している。「フル・ムーン・フィーバー」収録。日本のみの発売。
1991年。4曲のうち2曲は「バッド・ムーン・ライジング」から。「ワン・ナイト・イン・トーキョー」と「アルター・イーゴ」はアルバム未収録曲。
1993年。ベース、ドラムを加えてバンド形態になったが、サウンドは暗めになった。アコースティック・ギターが頻繁に出てくるのも特徴で、明らかに流行に乗っている。ハードロック時代に比べればやや地味なアルバム。
1993年。シングル盤。アルバム未収録曲2曲収録。1曲はアップテンポで、なぜアルバムに入れなかったのかと思うようなハードな曲。もう1曲はアコースティックギターによる曲でこれもよい。アルバムは暗さで統一したということか。
1995年。オープニング曲は勢いのあるハードな曲。全体的に低音が強調されており、ギターもディストーションがよくかかっている。エンディング曲もハードで、バッド・ムーン・ライジングでは最もヘビーメタル寄りのサウンドだ。カル・スワンの声域が狭いのがネックになっている。