2012年。エレクトロニクスによるリズム、シンセサイザーをバックに、クラシックの影響を受けたバイオリンを演奏する。クラシック音楽の視点では、本格的な演奏家になることは難しいレベルだが、リンジー・スターリングのアーティストとしての能力は、クラシックでの演奏力ではなく、バイオリンをエレクトロ音楽と協演させたことでもなく、踊りながらバイオリンを演奏するという視覚的側面だろう。ステージ上で激しく動くバイオリン奏者は60年代からいたが、ダンスとして見せることを明確に意識したところが現代的だ。バイオリン奏者は踊らずに演奏するのが一般的だが、そのイメージを破ったところは民謡歌手の岸千恵子を思わせる。12曲のうち11曲目までインスト曲、最後の「スターズ・アライン」のみリンジー・スターリングの短いボーカルがある。リンジー・スターリングが4曲だけコメントを付けているが、「クリスタライズ」は疑似科学として有名な「水からの伝言」を感銘を受けたことを明らかにしており、音楽以外のところでの議論はありそうだ。「クリスタライズ」はバイオリン音楽の中心的地域であるドイツ、オーストリアでヒットしている。日本盤は2015年発売。
2014年。邦題「踊る!ヴァイオリン」。多くの曲でEDMの影響があり、バンド編成での演奏も可能なサウンドだ。演奏はクラシック風ではなく現代音楽に近くなっている。「シャター・ミー」はヘイルストームの女性ボーカルが参加している。「ラウンドテーブル・ライバル」がケルト風のメロディーになっっているのは、アーサー王物語の「円卓の騎士」をイメージしているからだろう。「マスター・オブ・ダイス」もバイオリンというよりはフィドルの奏法だ。日本盤は2015年発売。海外盤とはジャケットが異なる。このアルバムで日本デビュー。
2016年。