リンプ・ビズキットはラップメタル、ニューメタルの代表的なロックバンド。アメリカ出身。DJを含む5人編成。ボーカルのフレッド・ダーストを中心に、本格的にヒップホップを取り入れたサウンドを提示した。「シグニフィカント・アザー」はニューメタルの代表的アルバム。「リゾルツ・メイ・ヴァリー」以降はヒップホップの要素を抑え気味。
1997年。DJを含む5人編成。中心人物はボーカルのフレッド・ダースト。アメリカ・ロサンゼルス出身。プロデューサーはロス・ロビンソンなので、サウンドはラウドロックのような低音強調。ボーカルはラップ中心に歌う。ラップで歌いながら途中からKORNのように押し出すような絶叫型ボーカルに変わるところはロックらしさを醸し出している。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのようにボーカルだけがヒップ・ホップの影響を受けているのではなく、バンド全体がロックとヒップ・ホップ双方に合わせたサウンドを作っている。DJがいるのでスクラッチ音は頻繁に出てくる。「フェイス」はジョージ・マイケルのカバー。全米22位、200万枚。
1999年。スクラッチやキーボードの量が多くなり、ボーカルもほとんどの部分がラップとなった。ゲスト参加はKORN、プライマス、ステインド、ストーン・テンプル・パイロッツのメンバー。ロックというよりはヒップ・ホップの曲もあるが、大方の曲はラウドロックのギターがバックにあるので、サビには聞き慣れたラウド・ロックが来る。「ドント・ゴー・オフ・ワンダリング」はストリングスを使い、このバンドにしては珍しくドラマチックにしている。全米1位、700万枚。「ヌーキー」は80位、「n2ギャザー・ナウ」は73位、「リ・アレンジド」は88位。
2000年。ラップが出てこずコーラス中心の「ホールド・オン」やキーボードがメロディーを主導する「ゲッチャ・グルーヴ・オン」のような曲もあるが、前作よりさらにヒップ・ホップ寄りになっている。全米1位、400万枚。
2001年。シングル盤。
2001年。過去の曲のリミックス集。リミックスしているのは外部のアーティスト。リンプ・ビズキットのDJも含まれている。全米26位。
2003年。ギターのウェス・ボーランドが交代。これまでとはサウンドが変わり、メロディアスなロックだ。ラップの量も大幅に減り、ヒップ・ホップといえる曲は3分の1くらいだ。ラップを導入したラウド・ロックとしては先駆者であったが、同様のサウンドを持つバンドが多くなって個性が薄れてきたのは確かだった。今作は、そこから脱却しようという意図が読める。しかし、脱却したサウンドがロック全体からいえばオーソドックスで、結果的に没個性化してしまった感がある。全米3位。
2005年。邦題「真実への逃避…~ザ・アンクエスチョナブル・トゥルース(第一幕)」。ギターのウェス・ボーランドが復帰。「チョコレート・スターフィッシュ・アンド・ザ・ホット・ドッグ・フレイヴァード・ウォーター」以来のラップが戻っている。曲のタイトルはすべて「ザ・~」で統一されており、アルバムのタイトルにも第一幕という言葉が入っていることを考えると、あらかじめ決められた主張や思想が存在するのではないかと推測される。ラップを取り入れたロック・バンドであるため、もともと反体制性を帯びた面を持っているが、このアルバムはジャケットのデザインからしても、より政治的主張が強いのではないか。
2011年。バンドサウンドを主体とするラップが入ったヘビーロック。特にギターの活躍が大きい。ギターの切れのよさはヘビーメタルに近い。ボーカルのフレッド・ダーストはラップよりも通常のメロディーを歌うことが多い。DJ、キーボードが前面に出ることは少ない。アルバム全体として保守的になりすぎた。ニューメタル、ヘビーロックが既に新しい形態ではなくなっていることは分かっているはずなので、別の何かを打ち出すことが期待されたが、そうはなっていない。